忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,平成20年9月30日,発明の名称を「使用済み紙オムツの処理方法」とする発明について特許出願(特願2008-255220号。本願。)をした原告が,特許庁から平成23年12月8日付けの拒絶理由通知を受けたため,平成24年2月13日付けで本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書について手続補正(本件補正)をしたものの,同年9月28日付けの拒絶査定を受けたため,同年12月28日,拒絶査定不服審判を請求したが, 特許庁は,上記請求を不服2012-26018号事件として審理を行い,平成25年6月10日,拒絶審決(進歩性なし)を下したことから,これに不服として審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁4部(富田さんの合議体ですね。)は,審決を取り消しました。つまり,進歩性なしとは言えないってことです。

 おっと,続いて進歩性の判決の紹介ですね。やはり見るべきものがあるってことです。

 クレーム行きましょう。
 「使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって,
  石灰と次亜塩素と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し,
  前記処理槽内で撹拌可能な最低限の水を給水しながら,石灰により分解された使用済み紙オムツから,該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて,所定時間にわたり撹拌し,
  前記処理槽内の液体を処理槽の外へ排出させると共に脱水し,
  排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄することを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法。

 そして,引用例は2つあり,主引例との一致点・相違点は,以下のとおりでした。
 一致点「 「使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって,
  『高吸収性ポリマーから水分を放出させる薬剤』と次亜塩素と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し,
  前記処理槽内で,『高吸収性ポリマーから水分を放出させる薬剤』と次亜塩素により使用済み紙オムツを所定時間にわたり撹拌し,
  前記処理槽内の液体を処理槽の外へ排出させると共に脱水し,
 排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄することを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法」である点。
(相違点1)
  「高吸収性ポリマーから水分を放出させる薬剤」に関し,本願発明では「石灰」を使用するのに対し,引用例1発明では「塩化カルシウム」を使用する点。
(相違点2)
  給水に関し,本願発明では,「処理槽内で撹拌可能な最低限の水を給水しながら」,「該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行うのに対し,引用例1発明では,「高吸収性ポリマーから水分を放出させる薬剤」と次亜塩素からなる所定量の水溶液(以下「薬剤水溶液」という。)を供給(給水)して撹拌を行う点。

 相違点1についてですが,引用例2に,金属水酸化物の一つである水酸化カルシウム(消石灰)の記載が載っていたようです。ですので,ポイントは相違点2です。

2 問題点
 問題点としては,ま,進歩性なのですが,ちょっと素人さんには分かりにくい話です。
 クレームが上記のとおりだったので,こう分説してみましょうか。
 A 使用済み紙オムツを消毒し処理する使用済み紙オムツの処理方法であって,
  B  石灰と次亜塩素と使用済み紙オムツを処理槽内に投入し,
   C 前記処理槽内で撹拌可能な最低限の水を給水しながら,石灰により分解された使用済み紙オムツから,該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて,所定時間にわたり撹拌し,
  D  前記処理槽内の液体を処理槽の外へ排出させると共に脱水し,
   E 排出された廃水を回収し水質処理を施して破棄することを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法。

 そうすると引用例1(主引例)は,A+B'+C'+D+Eで表され,B-B’が相違点1,C-C'が相違点2となるわけです。そして,B-B’は引用例2に載っていましたので,主引例と副引例を合わせると,A+B+C'+D+Eとなるわけですね。

 ですので,これをよくある特許の手順例に当てはめると(平成18年の進歩性検討会の報告書などのやつです。),相違点に係る構成が証拠に示されているか?の基準で,C-C'の相違点2が残るのに,もう引用例はありませんので,No!となります。
 そうすると,本来,相違点に係る構成が設計事項等であるか,の基準に依らないといけません。つまり,証拠に示されていない差があるのに,進歩性を否定するってからには,それが微差つまり設計事項等であるかどうかが重要ということになります。

 言い換えると,組み合わせ等の容易性を判断するための動機づけ云々という話じゃないわけです。証拠に示されていない差が設計事項等でないならば,もう動機づけ云々なんか抜きに進歩性はあるのです!そもそも特許庁の手順(審査基準)はそうなっていますので。

 ということで,裁判所はどう判断したのでしょうか。

3 判旨
「 ・・・このように引用例1発明は,使用済み紙オムツを投入した回転ドラム内に,塩化カルシウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含む所定量の水溶液(薬剤水溶液)をあらかじめ供給し,その所定量の薬剤水溶液の中で紙オムツの撹拌を行う構成のものであり,本件審決が相違点2として認定するように,「処理槽内で撹拌可能な最低限の水を給水しながら」,「該使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う本願発明の構成を備えていない。
 イ  そこで,相違点2の容易想到性について検討するに,引用例1(甲1)の実施例8には,濃度が1重量%となる塩化カルシウム及び濃度が1%となる次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液50リットルを回転ドラムの外胴内に供給し,室温において撹拌することが記載されているが(段落【0074】),引用例1には,この薬剤水溶液50リットルの量並びに同薬剤水溶液に含まれる塩化カルシウム及び次亜塩素酸ナトリウムの濃度が,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を考慮して定められたものであることについての記載や示唆はない。
  次に,引用例1の記載事項を全体としてみても,「紙おむつを膨潤抑制剤水溶液に浸漬すると,…尿などの水分を吸収して膨潤していた高吸水性ポリマーは収縮して水分を染み出して小さな粒状あるいは粉末状になり」(段落【0050】)との記載はあるものの,使用済み紙オムツに含有する尿などの水分の具体的な量や,膨潤抑制剤水溶液に浸漬することにより吸水性ポリマーから染み出す水分の具体的な量について言及した記載はないし,また,撹拌中に使用済み紙オムツの吸水性ポリマーから放出される水分の量を利用することにより,撹拌に用いる薬剤水溶液の量あるいは薬剤水溶液に含有する水の量を必要最低限の量とすることができることについての記載や示唆もない。
  そうすると,引用例1に接した当業者において,引用例1発明における回転ドラム内に所定量の薬剤水溶液をあらかじめ供給し,その所定量の薬剤水溶液の中で紙オムツの撹拌を行う構成に代えて,薬剤(膨潤抑制剤及び消毒剤)の供給と水の給水(供給)とを別々に行うこととした上で,回転ドラム内で「撹拌可能な最低限の水を給水しながら」,「使用済み紙オムツに吸収されていた水分を用いて」撹拌を行う構成(相違点2に係る本願発明の構成)を採用することについての動機付けがあるものとは認められない
  したがって,引用例1に接した当業者が,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは適宜なし得るものではなく,上記構成を容易に想到することができたものとは認められない。 」

4 検討
 つまり,C-C'の相違点2については,主引例に記載も示唆もないことから,主引例に相違点2を採用する動機付けはない!ってことですね。

 ま,特許庁の手順例とは違うとは思いますよ。でも審決取消訴訟とはいえ,一応弁論主義なので,原告がそう主張していたので,裁判所もそれに乗っかって判断したようです。それに,設計事項等の判断よりも,動機づけの判断の方が本来ハードルが高いと思いますので,その高いハードルを越えたのであれば,当然設計事項等ではないとも言えますので,別にこれはこれでいいのではないでしょうかね。

 さて,年度末ということもあって,何でか非常にたくさん判決のアップがあります。なかなか全部は見切れないし,紹介しきれない所でもありますので,しばらく判決の紹介を続けさせて頂きます。興味の無い方は飛ばしてもよいと思います。

5 その他
 日経の速報があり,例のアップルとサムソンの意見募集,58件もあったのですね。しかも諸外国からもあったらしいです。皆さん,暇ですね~♫で,弁論は終結し,判決は5月16日です。ちゅうことで,判決には,「合議体裁判官の給料はこれを58分し,その1を意見募集に応じた者それぞれに分配するものとする。 」という職権判断も加えて欲しいもんですな。

 本当,何でも付和雷同すりゃあいいってもんじゃないですよ。今回の意見募集に賛成か反対かでよって立つ所がわかるってもんです。
 今一度説明しておきましょうかな。そもそも,民主主義(国民主権)と自由(基本的人権の尊重)というのは,要するにダブルバインド,あちらを立てればこちらが立たず,こちらを立てればあちらが立たずってもんです。

 例えば,そんなに人々の意見が必要ならヤフーニュースの意識調査でやればいいわけです。ヤフーオークションで税の延滞で差押えられた物を公売してるんだから,今回の意見募集も,ヤフーニュースの意見調査で十分ですよ。
 ○ アップルに賛成
 ○ サムソンに賛成
てやればいいんじゃない~。でも,結果は多分予想できますよ。アップルに賛成が99%以上でしょう。何故かって?そりゃ,アメリカの会社のアップルと,韓国の会社のサムソンのどっちの肩を持つかって,火を見るより明らかってのはこの事ですよ。ちなみに,上記の意識調査に自由欄でも設けてご覧なさいな,もう裁判所に提出するのが憚れるようなサムソンに対する罵詈雑言でうめつくされるでしょう。多数の意見とかそんなもんですよ。
 ついでに,刑事事件もヤフーニュースの意識調査で判決するといいかもしれませんね。裁判員裁判以上の画期的裁判です。
 **事件の容疑者**についてどう思う?
 ○ 死刑がいいと思う
 ○ 無罪がいいと思う。

 いやあ画期的ですね。これで判決まで行くってなったら。

 ついでにヒッキー北風みたいに,死刑,無罪,死刑,無罪~無罪じゃないけどお~無罪じゃないけどお~生理的に無期!~♫ってやってもいいと思いますよ。

 ふん,アメリカが裁判のときにアミカスブリーフってやつで意見を聞くことがあるからって,日本もやろうなんていう浅薄な考えの奴らが多すぎますね。生理的に無期!と変わんねえのに。本当,これっきりにして欲しいもんです。
 
 ちなみに,アメリカが,何故,陪審員とかアミカスブリーフとかこういう民主的手続きを入れているか,そこも考えた方がいいです。アメリカは判例法の国です。ですので,裁判官だけに任せると,民主主義の契機が全くないことになります。だから,陪審員とかアミカスブリーフで民主主義の契機を入れるようにしているわけです。他方,日本は制定法の国ですので,法規範(国会で制定した法)に既に民主主義の契機が含まれているのです。だからそれ以上無理に民主主義の契機を入れる必要は全くないのです。

 いやあ,アメリカかぶれのバカどもはこういう基本的なこともわからねえんだろうなあ,何せ,アメリカ人のビッグコック(巨大チ○ポ)が実に気持ちよかったとお見受けされますからね~♫

 あ,柄にもなく人権とか民主主義とか下らねえ話をしてブログの品が下がっちゃったぜ,どうしてくれよう。

6 追伸
 ということでお口直しは,恒例の桜です。
目黒川沿いを五反田から目黒方面へ歩いて行きました。東京の桜は昨日満開ということで,目黒川沿いも金曜とは全く異なり,こちらも満開です。
いつもこの目黒川沿いは人がいないのですが,本日は花見客がたくさん出ております。わしの散歩コースが~てな感じです。
いつもの写真はこの枝かと思います。ここも満開。
目黒の雅叙園(アマゾンの本社)裏ですね。
そこで,しばらく歩き,中目黒方向を写したものです。

 逆方向の五反田側はこんな感じです。いやあ実に美しい桜ですね。さらに歩き,五反田に戻り,いつものイマジカ前はこんな感じです。
こちらも満開です。
いやあいつまで持つかなあ。今週の金曜が雨らしいので,そこまでかもしれません。実にいい季節であります。

PR
864  863  862  861  860  859  858  857  856  855  854 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]