忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,平成22年12月10日を出願日,発明の名称を「重力発電装置」とする特許出願(特願2010-276373号。パリ条約の例による優先権主張日:平成22年7月16日,優先権主張国:台湾。)をした原告に対し,特許庁は,平成24年2月16日付けで拒絶理由を通知し,原告は,同年6月14日付け手続補正書により,本願の特許請求の範囲の補正をしたものの,特許庁は,平成24年12月5日付けで拒絶査定をしたため,原告は,平成25年3月6日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付け手続補正書により本願の特許請求の範囲及び明細書の補正をしたところ(本件補正),特許庁は,これを不服2013-4417号事件として審理し,平成25年11月20日,本件補正は適法なものであるとした上で,拒絶審決(実施可能要件違反)をしたことから,これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁第4部(富田さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決のとおりで,実施可能要件違反あり!ってことです。

 いやあ,2日続けての判決の紹介です。閲覧数もダウンしそうですね。ウッシシ。
 年末年始,全く最高裁のHPを見なかったのですが,いつの間にか判決が結構出ていました。12/24にかなりの数の判決があったので,次の日から休みをとる裁判官が多かったのでしょうね。裁判官と言えば,学校の先生同様,休みが長いことで有名ですもんね。
 いやあ,やはり公務員天国~♪日本もギリシャのようになる日も近いでしょうねえ。

 さて,議題から大幅にそれる前に本題に戻りましょう。まずは,クレームです。

 「【請求項1】
 多数の重力物体,ロータを有する発電機,ベルトコンベア,多数の磁性部材,及びベルトコンベア動力供給機構を備える重力発電装置であって,
 前記重力物体は,それぞれ磁性を有し,前記重力物体が重力により重力軌道を通る際,前記ロータを回転させて電力を発生させ,
 前記ベルトコンベアは,前記重力物体を最低地点から最高地点へ搬送した後,重力物体が重力により前記重力軌道へ通し,
 前記磁性部材は,前記重力軌道に配置されてコイルに巻きつかれ,
 前記コイルが前記ベルトコンベア動力供給機構に接続し,
 前記ベルトコンベア動力供給機構は,前記ベルトコンベアへ動力を供給し,
 前記重力軌道が有する重力伝動機構により,前記重力物体を最高地点周辺で前記重力伝動機構と係合させて,重力により前記重力伝動機構が下方へ引っ張られ,前記発電機の前記ロータが前記重力伝動機構に駆動させること,
 前記重力物体が前記重力軌道を通る際,前記磁性部材の磁束量を変化させ,前記磁性部材の前記コイルに誘導電流を発生させ,前記ベルトコンベア動力供給機構に電磁誘導電流を供給すること,
 を特徴とする重力発電装置。

 発明の名称を見て,さらにクレームをちょっと見て,あ,これは!と思ったあなた大正解!
 明細書の図を示しましょう。
 イメージ ID=000002
 いやあ,これはまさに~!って感じですね。
 どんな発明かというと,ベルトコンベアで重力物体を上に運び,落とすことにより位置エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機です。発生した電気エネルギーは,一部を外部に供給し,余った電気エネルギーでさらにベルトコンベアを回し,重力物体を上に運び・・・というものですね。

 これだけだとハア?って感じですが,そこは出願人もよくわかっているらしく,ベルトコンベアを回すのに外部のエネルギーは使って良いようです。
 でも,やはり入力された電気エネルギーよりも大きな電気エネルギーが取り出せるはずもなく,結局ハア?ハア~??って所は何ら解消できませんね。
 そりゃそうですよ。これ,出願人は否定しているようですが,典型的な永久機関ですもんね。

2 問題点
 問題点は,こんなの実施できるのか?っていう所です。永久機関って自然法則を利用していないことから,拒絶理由では特許法29条1項柱書に当たるとされることが多いわけです。
 以前このブログで紹介した,平成23(行ケ)10337が,そのパターンです。

 

 他方,やんわりと拒絶っていうパターンもあります。永久機関だから特許法29条1項柱書の法上の発明要件違反に当たるとすると,もう補正などで対処する術がなくなります。にも関わらず,仮にそれが特許庁の考え違いだとすると,死刑執行後の冤罪判明みたいなもんで,こりゃ困ったなあ~まあ,世の中ミスはつきもんだ~笑って誤魔化そう~♡な感じになってしまいます。

 ですので,はっきり永久機関だからダメ!って言うのではなく,やんわりといやあちょっと実施するのが難しいようですよ~何書いているかわからないですよ~って記載不備の方で切るのですね。

 以前このブログで紹介した,平成25(行ケ)10189が,そのパターンです。

 で,今回も,記載不備のことしか言ってませんので,このパターンなわけですね。

 

 審決の判断も見てみましょう。

「本願明細書の記載によると,本願発明は,各種産業に電力を供給する発電装置の発明であるから,発電装置の駆動によって,継続的に電力を発生させて,供給された電力量よりも電力量を増大させ,増大させた分の電力を外部に供給できなければならず,また,火力発電,水力発電,原子力発電,風力発電,太陽光発電,潮力発電,海洋温度差発電,地熱発電,バイオマス発電などを使用しないものであって,発電コストが安く,環境を全く汚染させず,様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用できるものでなければならないが,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明が,継続的に電力を発生させて,供給された電力量よりも電力量を増大させ,増大させた分の電力を外部に供給できること及び火力発電,水力発電,原子力発電,風力発電,太陽光発電,潮力発電,海洋温度差発電,地熱発電,バイオマス発電などを使用しないものであって,発電コストが安く,環境を全く汚染させず,様々な地理環境や天然資源に乏しい地域で利用できるものであることが,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法36条4項1号の規定する要件(以下「実施可能要件」という場合がある。)を満たしておらず,本願は拒絶すべきものである,というものである。」

 

 そりゃそうですよ。だって,供給された電力量よりも電力量を増大させ,増大させた分の電力を外部に供給できるわけありませんから~,残念。

 

 まあ,判旨に行きますか~。

 

3 判旨

「・・・これに対し,本願明細書には,ベルトコンベアを外部からのエネルギーの供給により動かすことを開示又は示唆する記載は全くない。

 本願明細書には,「本発明の主な目的は,重い物を高い所から落とすことにより,位置エネルギを運動エネルギに変えて発電機を駆動し,電気エネルギを発生させ,発生された誘導電流により重い物を搬送する重力発電装置を提供することにある。」(段落【0009】),「この誘導電流がベルトコンベア接線セット1026を介してベルトコンベア動力供給機構103に供給され,ベルトコンベア101に動力を供給したり,余分な電力を発電機106へ送って保存したりすることができる。」(段落【0041】),「発生した誘導電流が不足し,ベルトコンベア動力供給機構103が重力物体102をベルトコンベア101に沿って搬送することができない場合,ベルトコンベア動力供給機構103に必要な動力を発電機106により供給してもよい。」(段落【0042】)などの記載があり,これらの記載によれば,本願発明に係る「重力発電装置」において,ベルトコンベアを外部からのエネルギーの供給により動かすこと,すなわち外部のエネルギーを用いて発電することは想定されていないものと認められる。

 したがって,本願発明の「重力発電装置」は,重力物体を搬送するベルトコンベアを重力物体が最高地点から最低地点へ移動(落下)することにより得られる電力(電流)のみを用いて動かすものであって,重い物を高い所から落とすことにより得られるエネルギーのみを用いて発電する装置であると認められる。

(3)実施可能要件について

 記載のとおり,重力物体を搬送するベルトコンベアを,重力物体が最高地点から最低地点へ移動(落下)することにより得られる電力(電流)のみを用いて動かす装置であるが,重力物体を最低地点から最高地点まで搬送するベルトコンベアを,同じ重力物体が最高地点から最低地点へ移動(落下)することにより得られる電力(電流)のみで動かすことができないことは,エネルギー保存の法則から明らかであり,原告もこれを認めるところである。

 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明には,当業者が,重力物体が最高地点から最低地点へ移動(落下)することにより得られるエネルギー(重力)のみによって発電する「重力発電装置」を生産し,かつ使用することができる程度に明確かつ十分に記載されたものということはできない。」

 

4 検討

 特許庁の審決の方がまだ優しかったですね~。だって,判決は,「本願発明の「重力発電装置」は,重力物体を搬送するベルトコンベアを重力物体が最高地点から最低地点へ移動(落下)することにより得られる電力(電流)のみを用いて動かすものであって,重い物を高い所から落とすことにより得られるエネルギーのみを用いて発電する装置である」と断定しちゃってますからね。アチャー。これって第一種永久機関~♪

 

 いやあ,面白い~,どういう意味で面白いかというと大笑いできるという意味ですね。台湾の会社の出願ですが~,当然代理人の弁理士がついています。ただ,この審決取消訴訟では代理人から外れてますね。まあ色んな経緯があったのかもしれません。

 

 ということで,新年二発目の判決もゆるキャラならぬゆる判決でした。

5 追伸
 今日は悪口じゃないまともな更新が続きます。

 来月,一弁での勉強会で判決の発表をするという話はここで書きましたが,これは毎月毎月やっているもので,実は今月は昨日でした。

 そこで,実に興味深いというか,私もまだまだ全然知らんことが多いなあということがありました。

 端的に言うと,演劇の著作物性,そして著作物性があるとすると誰が著作権者になるか(著作者でもいいのですが。)という話です。本当は,若干違うのですが,内輪の話を完全公開っちゅうのも何ですからねえ。

 演劇の著作物性って,いやあそんなの著作物なのは当たり前でしょ,みたいに思っていました。だって,著作権法10条1項に,・・・と思っていたら,明文ないのです!

 10条1項3号は,「
舞踊又は無言劇の著作物」とありますが,「演劇」ではありません。そして,この意味は,コンメンタールとか中山先生の本によると,振り付け,型のことなのですね。つまり,舞ることそのものや演技は,これらに入らないわけです。

 さらに,実演や実演家の条文のところで,演劇という言葉は若干出てきますが,演劇そのものを著作物として保護しましょうという趣旨の条文ではありません(著作隣接権関係)。

 ですので,演劇を映画と比較すると非常わかりやすいと思います。

 映画では,演出家である映画監督と脚本家が居て,それぞれ映画の著作者,脚本の著作者となりえます(著作権法16条など)。
 他方,演劇では,演出家が居て,脚本家も居ますが,脚本の著作者は当然脚本家なのですが,演出家は何の著作者?というと,明文がなく何の著作者でもない!ってことになります。

 勿論,著作権法10条1項は例示列挙なので,2条1項1号の定義に当てはまれば,著作物となりえるのでしょうが,今の通説とも言える多数説では,演劇そのものは著作物と言えるかなかなか難しいらしいのですね。

 まあ,殆どの演劇の場合,脚本がありますので,その脚本の著作権で処理すればいいのですが,脚本のない即興演劇(インプロビゼーション,アドリブ)などの場合,どうなっちゃうんでしょうね。

 あと,台本があればいいなら,プロレスは著作物として処理され,台本のない総合格闘技は著作物とはならない(まあスポーツだから当然か。)の,かなあ。

 私が著作権関係をやるときは,ITそのもの(プログラムの著作権)か,ITが絡んだもの(ネット上での海賊行為,デッドコピー等)かくらいですので,こんなこと考えもしませんでしたわ。こういうことって,本を読むだけじゃあダメですね~,実際事件として経験しないとわからないという典型のような気がします。

 ま,兎も角も非常に勉強になりましたね。

 ところで,散歩がてら,第一京浜沿いの品川神社に行ってきました。
 
 初詣ってやつです。とは言え,昨日は,目黒不動尊に初詣に,その前の日は泉岳寺に初詣に行きました。この五反田からどれも歩いて行けますね。実は,更にその前の日は,実家の近くの宇佐八幡に初詣に行ったので,何と初詣4連チャン。
 まさに,保守本流~ってところでしょうか。いやいや,一人神仏習合~これもまさに,宇佐八幡そして六郷満山~ってことですわな~本当かなあ。
 
 で,その品川神社には,品川富士があるのですが,その頂上から海側の写真です。
 遠くにちらっとレインボーブリッジが見えますねえ。

 ほんで今日は,夜に移動して~♪明日は,22年目のシーズンインということで,スノーボードに行ってきます。パウダーだったらいいけどねえ。
 
PR
1047  1046  1045  1044  1043  1042  1041  1040  1039  1038  1037 
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
3 5 7 8
9 11 12 13 15
16 17 19 22
23 28 29
30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]