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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,平成24年12月4日,発明の名称を「暗記学習用教材,及びその製造方法」とする特許出願(特願2012-277387号)をした原告が,特許庁から,平成25年7月31日付けで拒絶理由を通知され,同年8月23日付け手続補正書により,本願の特許請求の範囲の補正をしたものの,特許庁は,同年10月1日付けで再度拒絶理由を通知し,同年11月26日付けで拒絶査定まで下したことから,原告は,同年12月13日,これに対する不服の審判を請求し,特許庁は,これを不服2013-25925号事件として審理したところ,拒絶審決(法上の発明違反,進歩性なし)を下されたことから,これに不服の原告は,平成26年4月18日,審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁4部(富田さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。要するに,審決とおり,法上の発明じゃないね~ってことです。

 ま,審決の理由でわかるとおり,ゆる判ですね。ただ,若干不思議なことがあったので,取り上げてみました。

 まずは,クレームです。
 「【請求項1】
 原文文字列の一部を伏字とすることにより作成された暗記学習用虫食い文字列が表示された暗記学習用教材であって,
 前記暗記学習用虫食い文字列は,
 前記原文文字列を対象として作成され,第1の伏字部分が設けられた第1の虫食い文字列と,
前記原文文字列を対象として前記第1の虫食い文字列とは別に作成され,第1の伏字部分が設けられた箇所に対応する箇所とは異なる箇所に第2の伏字部分が設けられた第2の虫食い文字列と,を含み,
 前記原文文字列は,この特許出願の出願日において施行されている日本国の著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)第13条各号のいずれかに該当する著作物の一部又は全部を含むものである,
 暗記学習用教材。

 そんなに難しいものではないです。明細書の図2を見ると一目瞭然ですかね。
 【図2】(明細書)
 
 同じ文章を2回使って,虫食い箇所を異なるようにしたって所がポイントです。

2 問題点
 ということで,問題点は法上の発明か否かって所です。

 条文は,特許法2条1項です。
 「第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

 特許法で一番重要な条文と言ってもいいのではないでしょうかね。あ,そうそう,弁理士試験の受験生なら,こんなのスラで言えないとダメですよ。私は受験からもう15年以上経ってますが,いまだに一字一句間違えることはありません。当たり前です。

 で,この条文のうち問題となるのは,もうワンパターンですよね,「自然法則を利用した」という所です。というのは,それ以外の文言って結構広い範囲を対象としているわけです。

 他方,自然法則を・・・というと,インチキコンサルの人をだまくらかす技術だとか,デリヘリ嬢の手だけでイかせる技術だとかいうのも,技術的思想に入るのですが,そういうのを排除するために,この自然法則を・・・が,必要なわけですね。

 まあ,そういう技術も,汗かいて覚えて,財産的価値はあるとは思うのですが,そんなのを保護しても産業の発達には寄与しねえじゃんということで,この自然法則を・・・が要るわけですわ。ただ,こんなこと言うと,いやデリヘリ嬢だって,物理的物体である竿を手で摺動運動させてるんだから,自然法則を利用してないわけねえじゃんとか言う人もいるかもしれませんが,そんなのはもういいのです!

 元に戻りますが,結局,例えば,ゲームのルールとか数学の解法とか,そういうやつを排除するのが実際なのですね。これは,商標法の3条と似たところがあって,要するに,独占適応性のないものを私人に独占させないということもあるのでしょう。
 だって,量子力学の波動方程式を解くのに摂動法ちゅうのがありますが,これが特許されたら,もう大変ですよね。物理学会での発表やポスターセッションなどを,いちいち見回らないといけない~ホエーです。

 大体分かってきましたかな。

3 判旨
「特許制度は,新しい技術である発明を公開した者に対し,その代償として一定の期間,一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し,他方,第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与えるものであり,特許法は,このような発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とする(特許法1条)。また,特許の対象となる「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項),一定の技術的課題の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。
 そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする発明が特許法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かによって判断すべきものである。
 そして,「発明」は,上記のとおり,「自然法則を利用した」技術的思想の創作であるから,単なる人の精神活動,抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体は,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則とはいえず,また,科学的法則を利用するものでもないから,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当しないことは明らかである。
 したがって,請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても,前記のとおり全体として考察した結果,その発明の本質が,人の精神活動,抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体に向けられている場合には,「発明」に該当するとはいえない。」

「・・・以上によれば,本願発明は,暗記学習用教材という媒体に表示される暗記学習用虫食い文字列の表示形態及び暗記学習の対象となる文字列自体を課題を解決するための技術的手段の構成とし,これにより,文字列全体の文脈に注意を向けた暗記学習を効率よく行うことができるという効果を奏するとするものであるから,本願発明の技術的意義は,暗記学習用教材という媒体に表示された暗記すべき事項の暗記学習の方法そのものにあるといえる。」

「上記(3)で認定した本願発明の技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義を総合して検討すれば,本願発明は,暗記学習用教材という媒体に表示される暗記学習用虫食い文字列の表示形態及び暗記学習の対象となる文字列自体を課題を解決するための技術的手段の構成とし,これにより,文字列全体の文脈に注意を向けた暗記学習を効率よく行うことができるという効果を奏するとするものである。そうすると,本願発明の技術的意義は,暗記学習用教材という媒体に表示された暗記すべき事項の暗記学習の方法そのものにあるといえるから,本願発明の本質は,専ら人の精神活動そのものに向けられたものであると認められる。
 したがって,本願発明は,その本質が専ら人の精神活動そのものに向けられているものであり,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則,あるいは,これを利用するものではないから,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しない。
 以上によれば,本願発明は,特許法2条1項に規定する「発明」に該当しないものである。」

4 検討
 やはり,あまりにプリミティブ過ぎて,こりゃゲームのルールと同じだよね~人為的な取り決めが本質だよね~ってされたわけです。

 まあこれは上記のクレームと図2などからすると致し方ないかなあって感じがしますね。

 で,不思議に思った点は,この出願をIPDLで探すことができないってことです。特願2012-277387号も,不服2013-25925号事件も,です。実に不思議ですよね。

 これは平成24年12月4日の出願ですので,去年の夏には公開されているはずです。まず,それが検索できないのです。
 勿論,放棄や取下げすると,公開されませんが,この審決取消訴訟が提起されたのが,平成26年4月18日で,判決が今年の1月22日なので,放棄や取下げするにしてはおかしなタイミングです。裁判が係属しているのに,放棄や取下げはしないでしょうからね。

 で,不服審判の審決も検索できないってえのは更に謎??です。とにかくIPDLの経過情報検索やら,発明の名称からのテキスト検索などをかけても一切合切見当たりません。どんな細工をしたら,こんなことができるのが,一遍この謎の出願人Xさんに聞いてみたいものです。
 図2などからすると業界関係者だと思いますので,裏ワザを知っているのでしょうからね。

5 追伸
 深淵をのぞく時,深淵もまたこちらをのぞいているのだっていうのは,ニーチェですかね。「善悪の彼岸」の一節らしいです。

 私は,理学部で物理の世界に居たのですが,物理好きな人に多い哲学も好き~っていうよくあるパターンですよね。本当,みすず書房とか岩波書店とかが喜びそうな~。
 というわけで色んな哲学者の色んな本を読んだのですが(原書を読む力はありませんので,もっぱら翻訳のものですが。),まあ,日本語で書いているからって一般人が契約書を読んでもさっぱりわからんのと同様,哲学書も正直さっぱりわかりませんでした。

 ヘーゲル,カント(カントは所謂批判シリーズは全部読みました。),ショーペンハウアー,ニーチェ,サルトル,ハイデガー,もう有名ところの有名な著書は大体読んだと思いますよ。でもさっぱり~さっぱり~♪でしたね。

 ただ,今でも思うのですが,唯一いや唯二,結構分かった本がありました。それがニーチェの「道徳の系譜」と「悲劇の誕生」でした。やはり,色んな評者の話によると,この2つは非常に読みやすいらしいですね。ニーチェもそれ以外結構読んだのですが~ね~ツァラトゥストラなんて五回位読みましたが,ああ・・・~でしたね。

 ま,その内容は兎も角,この「道徳の系譜」とよく一緒くたにされるもので,「善悪の彼岸」ていうのがあります。「道徳の系譜」と同時期に書かれたものらしいですが,「善悪の彼岸」はこれまた難しくてさっぱりわかりませんでした。

 で,この「善悪の彼岸」には,「深淵をのぞく時,深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という一節があります。ま,ミイラ取りがミイラって話ですかね,要するに。

 で,何が言いたいかというと,被疑者が名古屋大学の理学部の学生の件です。長い前置きでしょ。

 私も理学部出身,しかも同じ国立大学ということもあり,偏差値とか同じ近辺ですから,30歳くらい歳は違うものの,似たような者なわけです。
 でも,私は,彼女ほど好奇心が無かったのかもしれませんね。男って結構小心で意気地なしが多いのですよね。男前っぷりがいい男なんて殆ど居ないっていうのが典型です。

 ただ,それによって助かったこともあるのではないかと思うのですね。小心で気弱なんて,繊細で慎重かつクール~♪みたいに言い換えできるでしょ。何ごとも相対的なものですので。

 そして,普通は,そこまで深淵をのぞこうとはしないのに,どうしてまた??っていう所が気になります。自然科学を志ざせば,その深淵に興味がいって,他の深淵にはそんなに・・・とも思うのですが,ようわかりません。実に不思議でちょっと理解に苦しむ感じです。

 人質事件もありますが,その何倍も理解に苦しむ非常に気持ちの悪い事件だっていう気がします。

6 更に追伸
 昨日は,1/28でこの近くにある目黒不動尊の初不動でした。
 
 普段全く出店や屋台などないのに,この日は結構なにぎわいでした。東急バスも,「縁日」と大きく表示し,この近くの路線ものは一部コースが変更になる程です。

 と言っても,散歩で偶然出会わせただけで,狙ったわけではないです。知ってりゃ,昼ごはんを若干抑え気味にしたんだけどなあ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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