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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。

1 概要

 本件は,平成20616,名称を「製品保持手段を有する改善されたパケット」とする発明につき,特許出願をし(特願2010-512793号。優先権主張日:平成19618),平成24420,特許登録を受けた(特許第4976547)原告(イタリア人)に対して,被告(ロッテ)は,同年1217,請求項113に係る本件特許権につき特許無効審判請求をした(無効2012-800207)ところ,原告は,平成25422日付けで訂正請求をしたものの(本件訂正。甲12),特許庁は,平成2617,「特許第4976547号の請求項1ないし12に係る発明についての特許を無効とする。特許第4976547号の請求項13に 係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決(訂正の新規事項追加,進歩性なしなど)をしたことから,これに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 

 これに対して,知財高裁2部(清水さんの合議体ですね。)は,審決を取り消しました。要するに,新規事項追加じゃないし,それによって進歩性もクリアされる!というわけです。

 

 ま,進歩性が問題なので,取り上げた〜ていうのもありますが,今回の本質は新規事項追加の件ですので,むしろこっちが理由ですね。

 

 クレームを見てみましょう。本件訂正発明です。

 

「【請求項1

A 各々の個包装(11)中に包装されるスティック状の製品についてのパケットであって,

B 上記個包装(11)は製品周囲で折り畳んだシートからなり,

C 上記パケットは,少なくとも1つの外箱(41)を備え,この外箱(41), 製品を少なくとも部分的に収容する複数の面と,製品を取り出すための1つの開口面と,を有し,

D さらに,上記製品を該パケット内に保持するために上記個包装(11)の少なくとも一部を該パケットの少なくとも一部に接着する永久接着手段(80)を備えてなるパケットにおいて,

C1 上記スティック状の製品は,上記製品の取り出し方向に沿った幅の広い2つ の主要面と,同じく取り出し方向に沿った幅の狭い2つの側面と,2つの端縁と,を有する偏平形状をなし,複数の製品が上記側面同士が隣り合わせとなるように並べて配置されており,

E 上記永久接着手段(80),上記個包装(11)の切離し部分(170)上に与えられ,この個包装(11)の切離し部分(170),製品をパケットから引き出したときに上記切離し部分(170)に覆われていた製品の部分(9)が剥き出されるように,個包装(11)に設けられた切取線(171)を介して個包装 の残部(170b)につながっているとともに,上記個包装(11)上の上記切取 線(171)が,個包装された製品の両端縁の間に位置しており,

E1 上記永久接着手段(80),上記切離し部分(170)の中で,上記主要面の一方において上記切取線(171)と上記端縁との間に配置されており,この永久接着手段(80)によって個包装されたスティック状の製品が上記主要面の一方においてパケットに個々に固定されている一方,隣接する製品同士は互いに接着されておらず,

F 上記個包装(11)上の切取線(171)と個包装された製品の一端縁との間の上記切離し部分(170)の長さが,上記切取線(171)と個包装された製品 の他端縁との間の残部(170b)の長さよりも短いことを特徴とするパケット。」

 

 そんなに難しい予備知識の要るような発明ではないのですが,こういう機械というか構造の発明って図がないとわかりにくいですね。
 

 あんまり図を入れるとアップできなくなるので,このくらいを。

 まず,この発明って,ガムとかチョコのパッケージの発明で,むきむきせずにサクッと包装紙が取れるようにする発明なのですね。

 で,上記の図のとおり,包装紙ごとガム(9)を引っ張ると,パッケージの奥の方の位置にある切り取り線(171)で包装紙がブチッと切れて,包装紙(170b)ごとガム(9)が取り出されます。しかも丁度いい位置でブチッと切れるもんで,ガム(9)が一部露出した状態なのですね。

 なので,このままバクって食えるし,包装紙(170b)も殆ど手元に残るため,クチャクチャやった後のガムもこの包装紙(170b)に包んで捨てられるってやつです。

 

 単純だけど,いい発明ですね。大手のロッテが潰したがるのもわかります。

 

2 問題点

 ということで,問題点は新規事項追加です。

 

 ま,訂正でも補正でも新規事項追加の今の基準は同じで,例の除くクレーム事件(知財高裁特別部平成20530日判決)での規範,「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導 かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、 新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」で判断されます。

 とは言え,じゃあ何が「新たな技術的事項を導入しないものであるとき」なんだ?ってのは議論があるところだと思います。

 上の知財高裁の判決では,そのような具体例として,①「付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合」及び②「その記載から自明である事項である場合」を挙げております。

 ①はそんなのわかりますよね。当たり前です。なので,議論があるのは,当然②の方です。どういう場合に明示の記載がなくても自明と言えるかってことです。

 

 でも,こんなの一般的な基準を示すことなんてできません。そもそも技術は個別具体的なものですし,同じ波が一つとしてないのと同様,特許も同じ特許は一つとしてないのです(ダブルパテントの禁止,特許法39条)。なので,個別具体的にその事案,その事案で考えるしかありません。
 あ〜こんなの学者や文系の人にはシンドイ話なのでしょうね。だって,技術そのものに興味がないとつまらないでしょうからね。

 

 ということで,今回の個別具体的な話に入ります。

 新規事項追加が問題となったのは,上記のクレームE1の部分です。永久接着手段(80)というのは早い話糊なのですね。個別の包装紙とパッケージをくっつけるものです。そうしておかないと,包装紙を引っ張ったときに,切り取り線から切り取れませんので。

 で,その中のどういう点が問題になったかというと,この糊があるのは,上部面のみとしているようだが(訂正発明),明細書にはそんな明示の記載はないぞ!むしろ他の図面からすると上部面&下部面にも糊をつけているような記載ばっかで,にもかかわらず上部面に限ったような訂正は新規事項追加だ!とされたわけですね(審決)。

 

 確かに,上記の図18を元にすると,糊は上部面しかないように見えます。ですので,そんな感じに訂正してもいいように見えます。しかし,図18は斜視図であり,下部面に存在するはずの糊の記載ができないだけ〜のようにも解釈できますよね。

 

 さあ,判決はどう判断したのでしょうね。

 

3 判旨

「本件明細書の本文の記載を見るに,本件発明の課題,課題解決から見て,永久接着手段(80)が,製品の主要面の両面にある場合に限られる旨の記載も,一方に限る旨の記載もない。

 そして,訂正発明1,シート(110)を構成要件として含まない発明であり, かつ,個包装に切離し部分がある構成であるところ,これに対応した実施例に係る 図面は,17及び18である。図18,17の実施例で,パケット(外箱) から個包装された製品が1個取り出された状態を示す斜視図であるが,製品の主要面の上面に永久接着手段(80)が図示されているものの,主要面の下面には永久接着手段(80)が図示されていない同図が透視図であることに照らすと,当該記載に触れた当業者は,主要面の下面に永久接着手段(80)が示されていない以 上は,下面には永久接着手段(80)は存しないと理解するのが自然である。

 また,接着手段は,「所定の様式で個包装またはパケットから切り離すことができる部分に配置され」る(0012)ものであり,0060】に示すように,永久接着手段と切離し部分とは密接に関連しているところ,外箱に切離し部分を有する構成に関するものであるが,0029,0031】には,「外箱の一つの面」に 切り離し部分がある構成が記載され,シートを有する構成に関するものであるが, 0033】には,「シートの後方面」に永久接着手段が与えられる構成が記載されており,「切離し部分」が両面ではなく,一側面にある構成についての記載がある。 さらに,0056】には,「これらの接着手段は,2つの主要面の少なくとも一方つまり包装製品の2つの大きな面の1,側面あるいは端面に与えることができる。」との記載があり,これは,実施例全体に係るものなのか,21の実施例に係 るものなのかは,必ずしも明らかではないが,少なくとも,本件発明において,包装製品の主要面の両面に接着手段を有する構成のみが,本件明細書に記載されているわけではないものと理解することができる。

 以上を考え合わせると,18について,主要面の下面にも永久接着手段(80) が存在するにもかかわらず,その記載を省略したものとして,主要面の両面に永久接着手段を有する構成のみが開示されているものと限定して捉えるのは相当でなく, 同図は,主要面の上面にのみ接着手段を有する構成を開示しているものと認められるから,「主要面の一方においてのみ」切取線(171)と端縁との間に配置される 構成(本件訂正事項)が本件明細書に記載されていると認められる。」

 

4 検討

 判決が重視したのは,上記の下線部です。まずは,図18は,斜視図ではあるけども,透視図でもあるってことが一点ですね。

 さらに,他の記載もよく見ると,上下両方に糊をつける構成だけしか開示してないわけではなく,片面のみに糊をつけたやつもあるよ〜って所でしょうね。

 

 まあ,一見わかりにくいかもしれませんが,ちゃんと理解すれば,実に単純だけども奥深い発明ってことがわかります。

 

 判決の判断もこれは妥当じゃないですかね。
 いやあ,でもこれ,昨日に引き続き清水さんの合議体の判決なんですよね。清水さんって特許に興味があっても商標にはあんまり興味がないのかなあ。これだけ,分析できるのにも関わらず,何で単純な却下に逃げたかなあって,これこそ昨日の蒸し返しだなあ。ああ,コリャコリャ。

5 追伸~Do the right thing
 昔昔の話なのですが,ちょうどの年代ってこともあり,結構ヒップホップが好きだったことがあるのですね~。run DMCとかパブリック・エネミーとかね。
俳優になってしまった,DJ Jazzy Jeff & the Fresh Prince(このFresh Princeがウィル・スミスのことですね。)とか,やはり俳優になってしまった,LL.cool.Jとかね。

 このブログでいつだったかな~,it takes a nation of millions to hold me back!と書いたことがありましたが,これは知っている人は知っていますよね。それをモジッたわけです。
 本家は,it takes a nation of millions to hold us backですね。俺らを黙らせるなら,百万の国でも持って来いってんだよ!ちゅう意味ですね。これはパブリック・エネミーのアルバムです。

 ということで,このパブリック・エネミーの曲の中で有名なものに,fight the powerというものがあります。で,この曲は,冒頭のDo the right thingというスパイク・リー監督の映画に使われておりました。

 この映画は,本当登場人物の誰にも感情移入できない,ある意味冷たいドキュメンタリーみたいな映画で,スパイク・リー監督も出演しているにも関わらず,何もできないまさに傍観者で終わるという,まあこれがアメリカなんだろうなあという映画です。

 で,その映画の中で非常に重要な出来事が起こり,そこからは混沌というしかないストーリーとなり,そこで確か
fight the powerもかかったのではないかと思うのですが,まあ,ということはこの映画がもう25年くらい前の映画で,でも今のアメリカってやつが何だかんだでそのころと大して変わらねえなあってことですよね。ま,何のこと言ってるかわかりますわな。

 ま,私は人権なんかどうでもいいと思ってますので,別に説教じみたことを言うつもりはありません。むしろ滅びろ,アメリカ~と思っております。やはりベルサイユ体制じゃなくサンフランシスコ体制を打倒して,再び日本が決勝戦を目指すべきなのでしょうね。

 

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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