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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 一部地域では若干大荒れだったようですが,東京は,雨が上がって以来,過ごしやすい天候になっております。春って感じもしますね~。花見の計画も立てないといけません。

 さて,ここで散々書いてきた職務発明の改正ですが,本日,3/13(13日の金曜だわい),閣議決定されて改正案が公表され,待望の条文が明らかになりました。

 新旧条文表もサイト上に載っているのですが,縦書なので,使いにくいですよね。ということで,私は名うての暇人ですので,新の条文の方を横書きで抜き出しておきます。
 あ,自由に使って構いませんが,抜けとか間違いとかあるかもしれません。自分できちんと原文を確かめて使ってくださいよ,責任は負えませんので。

 
新35条です。
第三十五条  使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。→改正なしです。
2  従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ、使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、又は使用者等のため仮専用実施権若しくは専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。
3 従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。
 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、若しくは使用者等のため専用実施権を設定したとき、又は契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等のため仮専用実施権を設定した場合において、第三十四条の二第二項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたときは、相当の金銭その他の経済上の利益(次項及び第七項において「相当の利益」という。)を受ける権利を有する。
 契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の利益について定める場合には、相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると認められるものであつてはならない。
6 経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、前項の規定により考慮すべき状況等に関する事項について指針を定め、これを公表するものとする。
 相当の利益についての定めがない場合又はその定めたところにより相当の利益を与えることが第五項の規定により不合理であると認められる場合には、第四項の規定により受けるべき相当の利益の内容は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。」

 一応,コンメンタール的なことも書いておきます。
 1項は改正ありません。従来とおりです。ですので,職務発明が何か?というのも従来とおりです。
 2項は,体裁を整えたのと,承継→取得に言葉が変わった部分があります。承継だと,有る物が転々に移動する意味あいですが,取得の場合,原始取得ともあるように,無い物がポッと発生するようなものを含むと思います。3項に合わせたのでしょう。
 3項は,まるっきりの新条文です。従前の3項(新4項)と違うのは,或る要件の下,特許を受ける権利の原始取得を使用者等に認めたということですね。
 4項は,旧3項です。原始取得の補償?か褒美?かのコンペンセイトするものとして,相当の利益という新しい概念が入っております。
 5項は,旧4項です。相当の利益が新しく,その対象となっただけで,本質的には変わりません。
 6項は,まるっきりの新条文です。例のガイドラインで定める~とか言われていたやつです。
 しかし,条文上よくわからないところがあります。というのは,「前項の規定により考慮すべき状況等」に関する事項をガイドライン(指針)で定めるとあるのですが,前項の規定に考慮すべき状況等の定義がないのですね。ですので,どこからどこまでをガイドラインで定める事項にするのかということがイマイチ不明確だと思います。
 7項は,旧5項です。これも対象が相当の利益になっただけで,本質的には変わりません。

 で,大手の企業はとにかくこれにより,契約、勤務規則その他の定めをして,それによって特許を受ける権利を原始取得して,あとはガイドラインに沿って,処理すればいいだけです。勿論,ガイドラインの内容によっては,昔の方がまだマシだった,やっぱ手続きが面倒で,しかも予測可能性0だ!となる可能性はありますけどね。

 他方,問題なのは,中小企業や大学です。特許を受ける権利を原始取得するための契約、勤務規則その他の定めをしなかった場合,又は契約、勤務規則その他の定めをしたのだけど,そこで,従来とおり発明者帰属とした場合の扱いです。

 つまり,昔のとおりにやりたい!となった場合です。この場合,新4項は,相当の利益の話しかしていませんので,こういう昔のとおりの扱いをしたい場合に適用できないはずです。勿論,5項以下もそうです。

 この場合,どうなるかというと,条文に規定がないことになります。
 そうすると,コスい使用者等はどうするかというと,あらかじめ特許を受ける権利の取得はしない→原始取得するのは発明者だ!→その後使用者等はその特許を受ける権利を契約、勤務規則その他の定めで承継する→そうすると,相当の利益などはないはず→勿論法改正されたので,相当の対価もないはず→使用者等は大儲け~ラッキー

 いや,勿論「取得」には「承継」も含むのだということが明らかならこういう弊害はないのかもしれませんね。でも条文上いまだわかりません。こういう脱法的スキームがあり得ます。

 私はこの点をパブコメで聞いたのです。でも質問が悪かったのか,題意を把握してもらえませんでした。

 原始取得を使用者等がしない場合の,特許を受ける権利の承継取得でも,使用者等は新35条で律せられるのか?(発明者に相当の利益の保護があるのか?)
 それとも,新35条では律せられず,使用者等と発明者間で自由に決められるのか(契約~つまりアメリカと一緒。)?(発明者に相当の利益の保護はないのか?)

 ここがまずは最大の問題だと指摘しておきましょう。

2 次は,ポンコツの条文です。
 私は扱う機会は少ないのですが,一応企業法務系の弁護士ですので,今般の会社法改正にも興味があります。

 で,先日,法務省令改正の解説の研修があったので,行ってきました。まあ説明自体は,いかにも優秀,しかもイケメンの58期の法務省に一時入省中の弁護士がやってくれたので非常にわかりやすいものでした。
 ただ,元がアレですよ,会社法と言えば稀代の悪法ですよ。バカが作るとこうなるという典型です。
 ま,奇妙奇天烈な,ナニコレ,このコードって書いたやつしか修正できねえじゃんっていうバカソースコード書くアホSEっているでしょ,あれと同じですよ。妙ちくりんな定義規定にしているもんだから,こういう改正があると,本当暗号解読して,あっちをいじり~こっちをいじり~ってはっきり言ってグチャグチャですよ。 
 
 いやあ,これは若くて優秀な人じゃないととても直せませんね。しかし,こんな感じだとそのうちどこかで破綻するでしょうね。システム更新の度ごとに大パニックになるのですからね。

 そうそう,法律ってシステムに似てますよ。SE系の人が法曹界に入るのもわかるし,司法試験に破れてIT業界に転職するって人も結構いますからね。

 で,こういうことを考えているのは私だけでないようです。
 少々観点は異なりますが,本日の日経の大機小機にその辺のことが載っておりました。

 「金融庁と東証による会社制度一般の立案機能と法務省の立案機能との関係はどうなっているのか。会社法改正を審議した法制審議会会社法制部会には12人の研 究者委員と幹事がいるのに、統治指針の策定に関わる有識者会議には会社法研究者が1人しかいない。何か理由があるのだろうか。」

 企業側の権化のような日経にこう言われているのですよ。金融商品取引法っていうのもクソみたいな法律ですが,クソ同士仲良くもできないという有り様ですわ。

 「法務省と金融庁が共管し、有価証券報告書提出会社のための会社法として、金融商品取引法の優先適用を包括的に定めれば、ほとんどの問題は解決する。それを公開会社法構想というのではなかったか。」

 と結ばれております。まさにこのとおり!意外とよくわかってますね。
 ま,末端の立法者からすると,そんなことは百も承知~だけど,言われたことを全部盛りするとこうなっちゃうんだよ~って所でしょうかね。能力もなく回りに流されやすい人の言い訳はいつもこうです。

 だって,ユダヤ人を収容所に送れって命令されたんだもん,広島に原爆を落とせって言われたんだもん~てか。

 ま,何にせよもうちょっと頭を使った方がいいんじゃなーいってことですよ。その首の上についているのが,飾りじゃなければね。

3 最後は国語のお勉強です。

 実は,昨日数値限定発明の進歩性とサポート要件という,実に興味深い内容の研修がありました。
 珍しく出張で,途中から出席したのですが,やはり面白い話がたくさんありました。まあ,多少難しく考え過ぎのところはあるかもしれませんが,参考になりましたね。

 その他の詳しい内容は行ったものの特権ということで,このくらいにしておきます。

 で,気になったのは,講師の国語ですね。
 礫を何故か「はり」と読んだり(つぶて,ですね。音読みはレキかな。),溶融をあせってゆうようと読んだりしたのですが,がっくりくるのがありました。
 「略」です。
 これ「リャク」とも読みますが,明細書等で使う場合は,「ほぼ」ですよね。ですが,例によって,リャクと読んでしまい,私は座席でズッコケましたね。

 ○○先生,お前もか,ってわけです。以前,このブログで,お客さんの前で,やはりリャクリャクと叫び続けた代理人の話を書きました。

 その人も理系だったのですが,今回の講師も・・・あ,私の大学の後輩ですね(弁護士としては私が後輩になるのですが。)。
 うーん,昨日の講師は弁護士なのですが,やはり理系というのはこんなものかもしれません。やはり,文系の人だったら,こんな恥ずかしい間違いはしませんもん。

 私の書いた本「知財実務のセオリー」でも結構書きましたが,日本語のできない人って特許の業界は多すぎますね。技術をどれだけ知ろうが,英語がペラペラだろうが,恥ずかしいですよ。

 勿論私もです。

 利に聡い人はよくわかっているかもしれませんが,このブログ,宣伝目的で始めたくせに宣伝にならないということがわかっていて何故続けているか?ってことです。
 勿論私が単に書きたいから,っていうのもあります。それに加えてやはり,文章の練習ちゅうところも大きいのです。

 文章,書き言葉とかは誰かに読んでもらうためのものです。私の場合将来の自分宛っていう部分は大きいのですが,それだけだったら,本当非公開の日記にすればいいだけです。それをこうしてグダグダ公開しているのは,他人に読んでもらうためですよね。

 そのときわかりやすくないと,結構な長文~読んでもらえません。準備書面もそうです。正確ならいい,論理が誤っていなければいいなんて調子で書いたら裁判官に読んでもらえません。

 職権主義で,理系のプライドのある審査官・審判官なら,悪文でも理解できないのはこちらのせい~とクソみたいな明細書も読んでもらえるでしょうが,当事者主義で文系の裁判官には,ナニコレ,人に読ませる文章じゃないじゃん,何書いているかさっぱりわからん,棄却棄却~♪となりますよね。

 書き言葉は人に読んでもらってナンボの世界です。本を読まない国語嫌いだった私ですので,その辺自覚的にやらないと,リャクリャクを連発することになりかねません。

 ですので,このブログも内容の当否は兎も角も,言いたいことはよく伝わっているのではないかと思います。意外と考えて書いているのですね~。
 
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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