忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,弁理士である被告に対して特許出願に関する出願書類作成及び手続の代理を委任した原告が,被告が原告の求める内容を出願書類に記載しない,上記特許出願に関する拒絶理由通知に対して原告の意向に応じた補正を行わないなどして特許法,応答ないし補正義務に違反した,詐欺を行った,ねつ造ないし文書管理義務違反を行ったと各主張して,被告に対し,①不法行為に基づき損害賠償金400万円の支払(第1請求),②上記拒絶理由通知に対する反論が難しいという被告の見解についての特許庁公認の内容証明の提出(第2請求),③上記出願書類において原告の発明の内容を記載した文章ないし図面の場所の特定(第3請求)をそれぞれ求める事案です。

 要するに,弁理士と依頼者の間で揉めた事件で,要するに,オモシロ事件というわけです。

 これに対し,46部の長谷川さんの合議体は,請求をいずれも棄却しております。まあ当然ですけどね。
 そう言えば,この4月の異動で,長谷川さんは横浜地裁に異動したみたいですね。なかなかユニークな判決が多かったと思いますが,裁判官出世すごろく的にはどういう類の異動なんでしょうかねえ,ムフフフ。

 このブログではまともな事件の紹介はしないと言っておきながら,2件続けて大真面目な事件(最高裁のやつ)を紹介しましたので,おかげ様で後継ブログのネタが無くなってしまいました。
 なので,原則に戻り,オモシロ判決の紹介をする次第です。

2 問題点
 原告の提示した訴訟物はシッチャカメッチャカな上(本人訴訟),判決上もあまり整理されていないので,ちょっと不明です。
 普通は,委任契約の間での話ですので,善管注意義務違反(644条)や契約の条項違反などの債務不履行責任を問うのがデフォーです。さらに,懈怠の程度がひどい場合は,不法行為責任を問うのでしょうね。
 でもそれ以上に,特許庁公認の内容証明がどうのこうのとかいうのは,ちょっと何言ってるかわからない~♫となります。

 ただ,そういう請求を立てて,弁理士に訴訟までしたとなると,依頼者の怒りはかなりなもので,何故こうなった?ってことが重要とは思います。でも,判決はそこまでの経緯は書いていないのですね(A教授VS蛇蝎先生の事件は,結構経緯がわかりましたよ。)。

 まあ,判旨に行ってみますか。

3 判旨
「イ  上記アの事実関係によれば,①本件特許出願に係る書類及び本件拒絶理由通知に対する手続補正書ないし意見書の作成に当たり,原告が表明した意向を受けて被告が書面の案を作成して説明を行い,これを受けて原告が意向を改めるなどした結果,本件特許出願に係る書類につき平成28年2月13日頃に,上記手続補正書及び意見書の内容につき同年9月11日にそれぞれ原告と被告との間で合意した内容を原告が本件委任契約に基づき被告に対して記載を求める内容として確定させたこと,②被告が上記各合意内容どおりの内容を記載した上記各文書を特許庁に対して提出したことが明らかであるから,被告が特許庁に対して提出した上記各文書に記載のないものは,原告が被告に対して記載を求めた内容に含まれないとみるべきである。そうすると,アイデア書(甲5)の内容,モータ駆動部に関する文章及び原告の主張する前記補正内容につき上記各文書に記載されていない部分があるとしても,被告がこれを記載しなかったことが応答ないし補正義務違反等に当たるとは解されない。
ウ  原告は,被告が電話口において無言を貫くなどして何らの対応もしなかったと主張するが,前記認定事実のとおり被告は原告と文書の交換及び対面での打合せを行うなどの対応をしているのであるから,電話口において無言となることがあったとしても,これをもって不法行為に当たるとは認められない。
⑵  次に,進行方向別通行区分の発明に関する詐欺をいう点についてみるに,前記前提事実⑶イ及び証拠(甲4の2)によれば,被告は,進行方向別通行区分の切り替え式は本件請求項10に記載したものであって,特許庁から特許出願を拒絶すべきものとされている旨を文書により原告に伝えたものであるところ,本件拒絶理由は本件特許出願に係る請求項全部について出願を拒絶すべき理由があるとしている。そうすると,上記文書の記載が虚偽であるとは認められず,被告の行為が詐欺に当たると解することはできない。
⑶  さらに,ねつ造ないし文書管理義務違反をいう点についてみるに,原告がファクシミリ送信した文書につき原告が被告に対して問い合わせたことは当事者間に争いがない一方,本件の証拠上,被告がファクシミリの故障を理由に文書が存在しない旨回答したと認めることはできない。そうすると,被告にねつ造の事実ないし文書管理義務違反があるとは解されない。
⑷  したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の第1請求は理由がない。
2  争点⑵(第2請求及び第3請求の成否)について
  原告は,上記拒絶理由通知に対する反論が難しいという被告の見解についての特許庁公認の内容証明の提出(第2請求),上記出願書類において原告の発明の内容を記載した文章ないし図面の場所の特定(第3請求)を各求めるが,特許法その他の法律又は本件委任契約上,上記の内容証明の提出及び場所の特定をする請求権が生じるということはできない。
  したがって,原告の第2請求及び第3請求は理由がない。」

4 検討
 判旨だけ見ると,概ね弁理士は依頼者との合意とおりやっていて,特段責任は無いように見受けられます。つまりは依頼者の思い込み,って結論です。でもそれは判示だけですから,何やら深い理由があったのかもしれません。

 ちなみに,判決では出願番号の開示もありますし,それからJplatpatで揉めた依頼者(個人)と弁理士も特定できます。そうすると,うーん,これ特許が取れてるなあ,特許が取れてるのに,これだけ揉めてるって・・・?

 さて,このブログは弁理士の人もたくさん見ていると思いますので(ログは取っていますよ。DNSが自前の事務所は・・・結構ありますね。),ほら見たことか,個人の発明なんて扱うからこうなるんだよ,という感想が多いのではないでしょうかね。

 まあ今は出願件数が少なくなっているとは言え,弁理士の方が弁護士よりも客筋が良いのがデフォーです。私も弁理士の先生に仕事を紹介するときに悩みますもんね。自分でもやらないことはないのですが,win-winの関係ってやつ?,で,出願は弁理士に頼むことが多いですよ。ですが,こういうのを依頼すると有り難迷惑かなあと思うことはしばしばです。

 いや,だって,こっちは,コンスタントに依頼してくれて,金払いの良い大手のお客さんをいつもいつも相手にしているのに,何故そんな数年に1件しか出願しないような,しかも金払いの悪そうな所の仕事をしないといけないのだ?ってことがアリアリですもんね。さすがに,勘の悪い私でもわかりますよ。

 今は,多少良くなっているとは言え,そういう態度はどうかなあって所ですね。
 だって,東芝が今傾いて,絶賛倒産寸前でおりますが,東芝をメインクライアントとする某S1事務所と某S2事務所の窮状が漏れ伝わってきますもんね。なので,中小ベンチャーを馬鹿にしていると,そのうち痛いしっぺ返しが業界全体に来ると思いますけどね。

 例えば,日本,US,EP,中国の全ての明細書と主な技術文献を学習データとしたAIにより,主クレームと実験データ等を入力すれば,各国語による明細書がたちどころにできる!なんてものは,ここ数年のうちに開発されると思いますよ(不完全なものなら,既にあります。)。
 そしたら,出願費用削減こそが至上命題の大手企業の知財部なんて,そういうソフトに殺到するんじゃないですかね。

 勿論,そういうソフトウエアを開発するのは中小ベンチャに決まっていますので,そういうソフトの特許を出願するような事務所が生き残っていくってことになりますな。

 祇園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり,沙羅双樹の花の色,盛者必衰の理をあらわす。驕れる者久しからず,ただ春の夜の夢のごとし。

5 追伸
 まあ平家物語の出だしくらい諳んじてるんじゃあ,という教養を見せつけた所で,本題に入りましょう。今日の桜です。

 今日は,目黒川を河口まで下ります。
 
 まずは,いつものとおりの山本橋が出発です。いやあこれは満開ですね。
 
 次は大崎ブライトコアと大崎ニューシティを結ぶ橋(名前はないかな)からです。これは陸側です。
 
 これが海側です。まああんまり桜が目立たず,イマイチですね。さらに下ります。
 
 これは山手通りにかかる居木橋からです(陸側)。さらに下ります。
 
 河口に来ました。昭和橋から海側です。ほぼ運河って所ですね。東品川海上公園に入ります。
 
 おお遊覧船はあの水門を通って来ているのか~ということがわかりますね。で,Uターン,戻ります。
  
 荏原神社の前にかかっている荏川橋の近くです。桜のトンネルって感じですね。さらに戻ります。
 
 第一三共の近く,御嶽橋を背景に,新幹線と桜の組み合わせです。さらに戻ります。
 
 山手通りの居木橋まで戻ってきました。
 
 森永橋近くの枝です。さらに戻ります。
 
 小関橋から海側です。GCOの裏側ですね。今日は遊覧船もチャーター船もたくさん往来してました。

 さて,明日はどういうルートで散歩しますかなあ。

6 更に追伸 17/10/19
 控訴審の判決が出ております(知財高裁平成29(ネ)10047号,平成29年9月27日 判決)。
 一審判決ではグジャグジャ感が伝わってきましたが,こういう場合の二審は楽ですね~。

 しかし,特許が取れているにもかかわらず,この揉めっぷり。個人発明家はエキセントリックな人多いようで,弁理士のリスクもこれからもっと高まりそうですね。
PR
1352  1351  1350  1349  1348  1347  1346  1345  1344  1343  1342 
カレンダー
11 2017/12 01
S M T W T F S
2
3 5 6 9
10 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーのエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。次は何かな。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]