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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は本日の日経紙の一面に載っていた特許法改正の記事です。

 内容としては,特許村の住人には少し前から囁かれていた異議申立ての復活の話です。日経の記事は如何にも新制度,アメリカの付与後レビューに真似て作ったみたいな話ですが,本当,113条-120条の単なる復活と見ている事情通は多いのではないでしょうか。

 ま,必要ならば,過去に囚われることなく,新制度や旧制度の復活に舵を切るということ自体悪いことではありません。この状況に関わらず,いまだロースクール制度を延命させようとしたり,民法債権法を改正しようとしている低能集団に比べれば,相当ましですから。

 でも,2点思う所はあります。

2 まず一点目,それは反省です。要するに,何で,異議申立てを平成15年法改正で撤廃したか,ということです。

 責任者出てこい~!by人生幸朗,というところで,そのときの改正についての小委員会のメンバーを見てみましょう。

 まず,委員会名は,「産 業 構 造 審 議 会 知 的 財 産 政 策 部 会 紛 争 処 理 小 委 員 会」です。報告書は,今でも見れます。こちらです。

 そのメンバーは以下です(敬称略 五十音順)。
委員長 大渕 哲也 東京大学先端科学技術研究センター教授
委 員 秋元 浩 武田薬品工業株式会社取締役・知的財産部長
  〃 蘆立 順美 東北大学大学院法学研究科助教授
  〃 伊藤 眞 東京大学大学院法学政治学研究科教授
  〃 斎藤 誠 東京大学大学院法学政治学研究科助教授
  〃 作田 康夫 日本知的財産協会副理事長
  〃 佐藤 辰彦 創成国際特許事務所弁理士
  〃 竹田 稔 竹田稔法律事務所弁護士・弁理士
  〃 永岡 文庸 日本経済新聞社論説委員
  〃 中西 幹育 鈴木総業株式会社副社長
  〃 中山 信弘 東京大学大学院法学政治学研究科教授
  〃 牧野 利秋 ユアサハラ法律特許事務所弁護士・弁理士
  〃 松尾 和子 中村合同特許法律事務所弁護士・弁理士
  〃 丸島 儀一 社団法人日本経済団体連合会産業技術委員会知的財産部会部会長
  〃 諸石 光熙 住友化学工業株式会社専務取締役
  〃 山下 和明 東京高等裁判所部総括判事

 産業界,実務家,学者,有識者,のそうそうたる立派なメンバーって感じです。あ,別に皮肉じゃないっすよ。

 で,異議申立ての廃止については,「現行の異議申立制度及び無効審判制度が併存することに起因する弊害,あるいは,異議申立制度に対する新たな要請等について考慮した場合,異議申立てと無効審判の両制度を統合・一本化することが適切とした意見が多数であった。」ということです(報告書の21頁)。

 実際の議論もどうなっていたか,というのも今でも見れます。これはこちらです。で,この異議申立ての廃止に関しての議論がメインだったのが,第2回めの小委員会ですね。

 それを見ると実に注目すべき発言があります。上記のとおりの山下部長の発言です。

 「山下委員  今のご意見に絡むのですけれども、先ほど来伺っていますと1本化することに賛成だという意見が多かったのですけれども、賛成の方が、イメージとしてどういうことをもっておられるのかというのが私ちょっと疑問になったのです。
 先ほどのご意見にありましたように、今の裁判所と特許庁との職務分担が変わって、現在特許庁が行っている無効審判が基本的に裁判所の方に来てしまうとい う構造を考えない限り、1本化すれば、1本化したものは基本的には恐らく無効審判の形にならざるを得ないだろうと思うのです。
 1本化が結構だという立場に立つとすると、特許庁と裁判所の職務分担を根本的に変えるということにするか、無効審判だけが残って今の異議はなくなるか、その選択をするということになるだろうと思うのです。
 先ほどの事務局のご説明ですと、異議の方は減ったといっても4,000件、無効審判の方はふえたといっても300件ということでしたか、これがどのよう なことになるのか。非常に素朴に考えますと、無効審判は余り利用されてないけれども、異議の方は随分利用されているではないか。そういう利用がされている ものを何でなくするんじゃ、こういう見方もあるのではないかというような気がしました。
 1本化するというのはいいぞいいぞというのは、ムードとしては何となくわかるのですけれども、本当にそれがいいことなのかどうかというのも考えてみる必 要があるのではなかろうかと。こんなに利用されているものは残すべきじゃないか、という見方もあるのではなかろうかという気もするのです。
 そのあたりのことをどのようにお考えで1本化に賛成しておられるのか、私はちょっと知りたかったのです。

 山下部長は,特許業界にとってはあまり評判のいい裁判官ではありませんでした。というのは,飯村部長による進歩性の新傾向が出る前の,非常に厳しい進歩性のハードルは山下部長が敷いたのではないかと言われていた部長だからです。要するに,これで,無効になるの!っていうような判決が一杯あったからですね。

 でも,この約10年前の委員会で,本当一人だけ真っ当な人がいるなあという感じです。当時私は既に司法浪人中だったのですが,前年までソニーの知財部で,異議申立てを非常に活用していたこともあり,何故これだけ需要のあるものを廃止するのか非常に疑問でした。

 他の委員の発言を見ると,異議申立ては邪魔だという産業界の人の意見,変な審決が多いので一本化した方がいいという法曹界の人の意見,キルビー判決を受けて紛争解決手段の一本化を睨んだ上での意見(当時油が乗り切った感のある某法曹),表層でしかものを考えていないことが丸わかりの弁理士連中の意見,ということになると思います。

 でも,上記のとおり,一本化(異議申立ての廃止)は委員の多数の意見であることは確かです。これは議事録を読んでもそのとおりで,これに疑義を挟んだのは,上記の山下部長だけです。それ以外の法曹,学者,有識者,そして産業界の方々も,異議申立ての廃止に大賛成だったのです。すごく使っていたというのに~♪

 さて,問題は今回の復活の異議申立てですが,今日の日経紙によると,「異議の申し立てが難しくなったとして,産業界が制度の復活を求めていた経緯がある。」とのことです。

 は?え?産業界が?いや,そのとおりなのですが,じゃあ平成15年の改正の小委員会では何故異議申立ての廃止に大賛成したのでしょうか?馬鹿だから?勿論そうだと思いますが,あまりに軽率というか重みのない話じゃないですかね。
 10年前には廃止しろ廃止しろって言ってたのに,今度は復活しろ復活しろですか?
 
 まあ産業界って言えば聞こえはいいですが,ただのサラリーマンの知財部のヘボ部長クラスがチョコチョコ出てきて,自分ではない会社の意見を言うだけの,ガキの使いそのものですから,あまり責めても可哀想ではあるのですが,まあちょっと酷すぎやしませんか,ってやつです。

 知財協をはじめ,特許業界ではこういうレベルの低い奴等が結構な力を持ってたりしますからね~,面倒臭えわけです。

 ま,でも,反省したのならば,まだまし!というのは最初に書いたとおりです。

3 それがこうなら,これはこう

 で,二点目です。
 低レベルの産業界に振り回されると碌なことがない,というのは今見たとおりです。
 
 とすると,翻っての今議論の真っ最中の職務発明に関連ですが,これも,異議申立ての二の舞になるんじゃないですかね。
 
 私がかつてない勢いでdisった,例の委員会のメンバーが,こんなことを言っております。

澤井 「対価」といった瞬間に、すごくいびつな状況が起こります。対価は、昭和34年法のときに特許法の条文に設けられました。その前提は、特許を受ける権利 が発明者に帰属して発明者がその権利を企業に譲渡する点にあります。発明者(従業者)と企業(使用者)の間にこのような関係があるため、「対価」という言 葉が出てきます。それが両者を非常に紛らわしい関係にしています。発明者は企業の中で業務に従事しています。なぜその中から生まれた職務発明が従業者(発 明者)に帰属するのかという点に疑問を投げかけなければならないと考えています。そこを変えなければ本質的な問題は解決しません。

 例えば、生産ラインで車を作っている労働者が完成した車の所有権を主張できるでしょうか。完成した車は労働者のものではありません。労働者は労働 を提供し、給与を得ています。労働の中で生産された車は当然企業の所有になります。労働の中で生まれたものが、車なのか職務発明なのかの違いだけです。確 かに発明をする行為は創造的な営みです。しかし、職務発明を生み出せる環境を作っているのは企業です。その上で従業者には報酬を払っています。それにもか かわらず、職務発明が従業者(発明者)に帰属し、企業が譲渡を受けなければならない理由が理解できません

 そりゃてめえの低能ぶりからすると,理由が理解できねえのは当然だろうなあ,じゃあ何かい,車を売った消費者に,その車で使用している知財権も全部売っぱらうってことになるんですかなあ。
 「例えば,車を売った売り手が,売った車の特許権を主張できるでしょうか。売った車の特許権も本来売り手のものではありません。取引の中で,対象とされた車は当然買い手の所有になります。取引の中で売買の対象とされたものが,車なのか特許権なのかの違いだけです。確かに特許権を一旦生み出したのは企業です。その上で,買い手は企業に車の対価を支払っています。それにも関わらず,特許権が企業に帰属したままで,買い手が企業から消尽やら黙示のライセンスを受けなければならない理由が理解できません。」by俺。

 ま,わざと曲解し,誤解して書いたのですが,所詮この程度の認識っちゅうところです。

 いや,勿論,政府の委員会のメンバーがこんなところで与太話をやっていいのか!という問題はありますよ。その点,内容証明等で,特許庁ないし経産省に問いただしてもいいでしょう。

 でも,問題はそんな所じゃありません。この程度の認識にも関わらず,「職務発明を法人帰属にしなければ本質的な問題は解決しません」という主張です。

 上記の2で書いたとおりのことが,また起きやしませんか,ってことですよ。

 今から10年後の2023年ころ,日経紙に,「職務発明が法人帰属になったことでイノベーションが阻害されたとして,産業界が職務発明の個人帰属制度の復活を求めていた経緯がある。」なーんてなるんじゃねえだろうな,ってことですよ。

 馬鹿は死ななきゃ治らねえ,そして,馬鹿が馬鹿たる所以は自分が馬鹿だって気が付かないことだと思います。

 いやあ特許法は確かに産業の発達に寄与することを法目的としていますが(1条),産業界の発達に寄与することが目的じゃないですからね,その辺,ヨロピコ。

 ただ,こう書くと,例のヤフーニュースのこともあり,一見発明者寄りのように思えます。

 しかし,元々私は特許法35条改正派だったのです。元々,上記のとおり,でかい会社のでかい知財部出身ですし,弁護士になってからも相当対価の請求訴訟ってやったこともありません。だって,そもそも労働問題ですし,何よりも私は金権弁護士ですので,金のない方には付かないのです。企業寄りで仕事をやるのがベストに決まっています。

 でもねえ,私は一応法律家なもんで,今のような結論ありきの,大インチキの,台本とおりの,っちゅうのがどうにも許せないんですね。ですので,本当は貧乏臭い発明者のことなんてどうでもいいのですが,法律家の矜持を守るため,一人戦うわけですね~,いやあちょっと格好良いですね~♪

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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