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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 昨日のWBS見た人いますかね。私は事務所の行き帰り,ウォークマンで見れるようにしているのですが,昨日に限って電池切れ〜♪クッソー見れねえと思いきや,テレビ東京さんの方でアーカイブしてくれており,正当にでも見れます。

 で,改めて見た所,結局,任期付き審査官の第一期生が今度の3月で10年の任期切れとなり,その後も続々と任期が切れ,審査官の数が大幅に足りなくなる〜って話でした。

 大したことない話でしたね。

 この話は,日本の特許出願数が40万件を超えて,世界一の出願数だったころに始まった話です。

 今では,ダメになった産業の代表のように呼ばれている電機業界ですが,私が知財部に異動したころ(1998年ころ)は,いまだ飛ぶ鳥を落とす勢いがありました。ですので,大手の電気会社で年間の特許出願数が数千件なんてザラで,ヘタすると1万件近く出願していた会社もあったと思います。

 私が居たソニーも御多分にもれず,そういう数千件出願会社の一つだったわけです。他方,特許庁のリソースは国Ⅰ経由で人材を取るのがデフォーですので,急には審査官を増やせません。
 ですので,大手の電気会社の部長クラスが特許庁に集められ,どうか出願数を減らして欲しいと頼まれたことさえありました。

 しかし,焼け石に水とはこのことで,別に不要な出願をしていたわけではありませんので,特許庁の頼みとは言え,特段効果はありませんでした。
 そのため,特許庁としては,制度改革に踏み切ったわけです。

 まずは,審査請求期間を7年から3年と大幅に短くし,滞留出願を減らすようにしたのです。日本の場合,審査請求をして初めて審査がなされ,審査請求をしないと取り下げ擬制となりますので,考慮期間を短くすると,少なからず審査しなくてよい出願を処理でき,審査する出願を減らせるわけです。
 次に審査請求の料金を大幅に高くしました。今,最低でも168,600円もかかります。

 ただ,これらの施策をしても,出願数はなかなか減りませんでした。ということで,もうリソースを増やすしかない,というわけで,10年の任期付き審査官を募集したのが,10年ちょい前ということになります。

 ただ,だれでもなれるというわけでなく国家公務員試験に準じた試験を受からないとダメなはずです。何と言っても,審査官を7年やると自動で弁理士にもなれますのでね。ほんで,そういうこともあり,結構わんさか応募したような記憶がありますね。

2 で,今回の話です。WBSで実に重要なことを言ってました。各国の審査官の数です。2012年で,米国が7,831人,中国が5,730人,EUが3,949人,日本が1,713人とのことでした。そうか〜,日本てそんなに少なかったんだ〜って感じがします。

 で,グラフも示していましたが,米国中国は,この所審査官の数を大幅に増やしております。他方,EUと日本はほぼ横ばいです。これは出願数に対応しているのでしょうね。

 さらに,検討しますが,今年100人辞め(任期が切れ),また100人程度任期付き審査官を取るようです。つまり,減った分を補填するだけで,別に現状維持なわけですね。人件費が特段増えるわけでもなく,予算も取りやすい話だと思います。

 そうすると,表題に2014年問題と,テレビのタイトルそのまま書きましたが,別に問題でも何でもなく,仮に問題だとしても,もう解決しているじゃんという話です。

 日本の出願はリーマン・ショックの時に1割減となって以来,大凡その水準にとどまったままです(2012年のデータで,344,598件です。)。米国や中国のように,出願が増加しているような傾向はありません,残念ながら。
 ですので,特許庁が減る予定の審査官をプラマイ0にしたということは,出願数は現状維持ということを予想しているに他なりません。100名の募集じゃなく,200名の募集だというのならば,こりゃ凄いという話ですけどね。ま,弱火な話です。

3 で,番組を見ていたら,リストラされた又はリストラされそうなエンジニアが大挙して応募に殺到しそうで,その受け皿の意味もある,みたいなことも報道してました。ま,背に腹は代えられないとはいえ,なーんと志の低い話じゃないですかねえ。

 いつまでもいつまでも勤め人で,いつまでもいつまでも誰かの庇護の下で暮らすというのは,そろそろ卒業してもいいんじゃないかなあと思うわけです。若干景気もよくなっているわけですし,腕に覚えがあるならば,起業してもいいんじゃないかなあと思う次第です。

 余計なお世話ですが,審査官を卒業して,弁理士資格をもらえても,弁理士試験が簡単になったため,弁理士自体大余りの状況です。なので,年金もらえるまでの期間持てばいいや〜って所なのでしょうが,何か下向きの話ですよね~。

 それに,審査官の数は審査の質に重要な要素の一つですが,それが絶対ではありません。
 つい最近まで,米国の特許審査と言えば,ザルで有名でした。実際,この審査官はまともな教育受けてねえだろってのがネイティブじゃない私のような者にも感じられたものです。巷でも,米国特許はリチゲーション(訴訟)の単なる切符と言われてましたから,ヘボい特許でも裁判所が判断するからいいや〜だったのでしょうね。

 ところが,所謂KSR判決(2007年)とその後のガイドライン策定などによって,米国の審査でも非自明性でアウトになることが多くなっております。

 一方我が国の方ですが,精緻は精緻なのですが,これで進歩性なし!どういうことだ!という非常に厳しい審査が続いておりました。知財協が口を開けば,米国並みの特許付与を,ということでしたもんね(日本と同様厳しいと言われていたEPとは比較しませんでしたがね。)。
 ところが,こちらも,飯村さんの新傾向判決(2009年)を鏑矢に,もうちょっと分析的に進歩性を見ましょうよということが広まり,さらに知財高裁の4つの部の部長も定年退官で総入れ替えされたこともあって,進歩性は一昔前に比べてずいぶん緩くなっております。

 ですので,一昔前の,米国はザル,日本は異常,というイメージでいると大やけどします。今や米国も日本も特許査定率はそんな変わらない筈です。ヘタすると,日本の方が査定率が上だったりします(2009年で,日本が50.2%,米国が42%で米国が急激に下がってます。)。

 知財協みたいな所は,査定率が上がったバンザーイなのでしょうが,事はそう簡単ではありません。審査の質が下がって本来特許になるべきでない出願が特許になっていたとしたら?

 ですので,はじめに戻りますが,審査の質は審査官の数だけではないのです。特に,文献の調査をきちんとやれないといくら優秀な審査官をたくさん揃えてもまったくの無駄になります。
 今,特許庁では結構外注を進めているようですが,特許実務をやっている人はよくおわかりですよね。文献調査の調査って相当のノウハウが必要で,サーチャーによる当たり外れが非常に大きいってことを。
 つまり,ヘボい外注先に文献調査を頼んだ審査は,ヘボい審査という結果しかならないということです。

 私は,ここで様々な判決を紹介してきておりますが,最近非常に感じるのは,遠い引例で無理をした審決が多いなあということです。
 遠い引例が単純に遠い場合,進歩性ありとして特許査定をすればいいだけです。なのに,何故無理をしないといけないかというと,審査官・審判官にあるべき引例のイメージがあるからでしょうね。

 こういう引例があるはずだ,こんな引例がなきゃおかしい,と。そのイメージが正しい場合もあるし,正しくない場合もあるでしょう。でも,そのイメージに引きづられてしまうというのは,要するに,文献調査に対する信頼がないからです。
 あるはずなんだよ,きちんと調査してれば出てくるんだよ,出てこないのは,そんな引例がないからじゃなくて,調査がヘボだから出て来ないんだよ,と審査官・審判官は思っているのでしょうね。なので,遠い引例しかないのに,あるべき自分の審査・審判のイメージに捉えられ,無理をすることになる,ってわけです。

 それを無くすには,調査の質を上げ,審査官・審判官の信頼を増すしかありません。遠い引例しか出ないときに,調査がアホだからと思わせるのではなく,そんな引例しかこの世の中にはないのだな,と思わせる必要があるわけです。

 上記のとおり,中国は審査官を増やし,現在出願数も世界一です。そうすると,今後中国の文献をいかにきちんと調査の俎上に載せ,審査での引例として把握するかが重要です。米国の場合も同様の問題はあるのですが,日本人の多くは少なくとも英語の文献くらいは結構読めます。大した問題にはなりません。でも,中国語の文献で図がないと,把握できる人は少ないのではないでしょうか。

4 ということで,首記の問題は,本質的な問題ではありません。本当にラディカルな問題は,文献調査の質がマチマチであることと,中国語の特許文献の取り込みをどうするかということなわけですね。

 わかったかな〜,したり顔の半可通の諸君〜♪
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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