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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は, 平成24年6月14日,発明の名称を「遊技機」とする特許出願(特願2012-135226号)をした原告に対し,平成26年5月12日付けで拒絶理由通知(本件拒絶理由通知)がされたので,同年7月15日付け手続補正書により特許請求の範囲を補正した(平成26年補正)ところ,特許庁から,平成27年4月20日付けで拒絶査定(本件拒絶査定)を受けたため,同年7月23日,これに対する不服の審判を請求するとともに,手続補正書を提出した(本件補正)ところ,特許庁は,これを不服2015-13829号事件として審理し,平成28年9月28日,本件補正を却下した上,不成立審決を下したことからこれに不服の原告が審決取消訴訟を提起したものです。

 これに対して,知財高裁第4部(高部さんの合議体)は,請求を認め,審決を取り消しました。

 昔は,よくこんな書きぶりでブログを書いていたような気がします。懐かしい~♫
 
 ここではもうマジな事件の紹介はしないと言っておりました。ですので,勿論,マジ系ではありません。何と言いましょうか,要するに大笑い系です。しかも,これって史上最高にカッコ悪い,まさにカッコ悪い判決ワースト1という事件です。

2 問題点
 問題点は,端的には,手続違背です。原告の主張を借りるなら,「 本件審決は,本件拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由をもって審判不成立の判断をしているところ,特許法159条2項により準用される同法50条本文所定の手続を履践しておらず,手続違背があるから,取り消されるべきである。 」ということです。

 まあ,これは憲法31条で規定されるデュープロセス,つまり告知と聴聞の手続ってやつですね。
 刑罰を始めとして,公権力が不利益処分をするときは,告知と聴聞の機会を与え,防御させる~ってやつです。

 弁理士だと単に条文の丸暗記なので,そこまで考えてないと思いますが,拒絶理由通知って結構深い意味があったのですよ,皆さん。

 で,こんなこと未だにやるのかなあと思いきや,このブログでも思いっきり,この論点というか場所が丸わかりの落とし穴に落ちたを挙げております。ま,バカと行政は死ななきゃ治らないとよく言いますが,そうなんですよね。

 だって,未だ,この21世紀ももう20年近く経ったというのに,虚偽自白だとか証拠の捏造とか検察とか警察の,横紙破りは後を絶ちません。不思議と言えば,不思議なのですが,それが行政のそもそもの姿・・・と言ってしまえば,そのとおりです。
 ですので,普通の国民はそういう行政を監視し続けないといけないわけですわ~。おっと,話が固くマジになってきましたね。いかん,いかん。固くていいのはチン◯だけ~でしたわ。

 で,そういうのは,検察や警察に限りません。特許庁だって,行政には変わりません,というか,典型的な行政です。
 マスコミじゃ,ホワイト職場~働きやすさナンバーワン,とかで持て囃されているようですが,調子に乗らしちゃいけませんよ,だんな。行政ってやつはちょっと目を離すとインチキしようとする,場末のテキ屋みたいなもんだと思っておかないといけません。

 まあ,とは言え,その程度なら,前に紹介した事件もあり,大したことはないわけです。ところが,今回,159条2項違反だけでなく,それ以外の,なんちゅうのかなあ,行政の本質が見れたので,ここで紹介したわけです。
 
 なので,このブログにしょっちゅう見に来ている特許庁の人もよく刮目して見てちょうだいな。

3 判旨
「 ウ  本件審決における相違点の認定・判断
(ア)  本件審決は,本件補正発明についての独立特許要件の検討に当たって,本件補正発明と引用発明との相違点として,相違点1(前記第2の3(3)ウ(ア)),相違点2(同(イ))を認定しているところ,「本件補正発明は,第1予告演出を実行した後に第2予告演出を実行するパターンで予告演出を実行する場合,1の識別情報の可変表示中の複数のタイミングにおいて第2予告演出を開始可能であって,第2予告演出を開始するタイミングに応じて有利度合いが異なるように,予告演出を実行する」との相違点2は,本件補正後の請求項1に係る発明の構成によるものではなく,本件補正後の請求項2に係る発明の構成のみによるものである。
 そして,相違点2の判断では,引用例2記載の技術事項の「第1演出を行う第1タイミングから第2演出を行う第2タイミングまでの期間(演出間隔)」は,演出内容に応じた複数の長さが存在するから,本件補正発明における「可変表示中」の変動開始からの期間の長さの異なる「複数のタイミング」に対応し,引用例2に記載された技術事項の「期間(演出間隔)の長さに応じて,期待度を異ならせ」ることは,本件補正発明における「第2予告演出を開始するタイミングに応じて有利度合いが異なる」ことに対応する,としており,本件補正後の請求項2に係る発明の構成のみによる相違点について判断しているものと認められる。
(イ)  さらに,本件審決は,本願発明は本件補正発明と同一のものであると認定した上で,引用発明,引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断しており,本願発明との関係でも,平成26年補正後の請求項2に係る発明の構成のみによる相違点について認定・判断しているものと認められる。
エ  以上のとおり,本件審決が,独立特許要件の検討に当たって認定・判断した相違点2は,本件補正後の請求項2に係る発明の構成のみによる相違点であり,本願発明について認定・判断した相違点2も,平成26年補正後の請求項2に係る発明のみによるもので,本件補正後の請求項1の発明,平成26年補正後の請求項1の発明と対応するものではない。
 しかしながら,本件審決では,「本件補正発明」を「平成27年7月23日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明」,「本願発明」を「平成26年7月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明」と定義した上で,各請求項1の記載を摘記しているのであって,本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正発明,平成26年補正後の請求項1に係る発明を本願発明と認定していることが明らかである。
 そうすると,本件審決は,本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正発明,平成26年補正後の請求項1に係る発明を本願発明と,それぞれ認定した上で,認定した発明と対応しない相違点2を認定しているのであり,相違点2の認定を誤ったことになるが,かかる誤った相違点2の認定ないし判断を根拠に,本件補正発明及び本願発明についての「請求項1」の記載を「請求項2」の誤記と解することはできない。
 被告は,本件における審査の経緯も,上記「請求項1」の記載が「請求項2」の誤記であるとの理解を促すものであると主張し,前記(2)イのとおり,本件拒絶査定においては,平成26年補正後の請求項2に係る発明は,本件拒絶理由通知書で提示した引用例1及び引用例2から当業者が容易に発明をすることができたものである旨が記載されている一方で,平成26年補正後の請求項1に係る発明については拒絶の理由を発見しないと記載されていることが認められるが,かかる審査の経緯を参酌しても,上記判断が左右されるものではない。
 よって,被告の主張は採用できない。
(4)  小括
 以上によれば,本件審決には,特許法159条2項,50条本文の規定に反する違法があり,原告主張の取消事由1は,理由がある。 」

4 検討
 本件を時系列で示すとこうなります。

 【拒絶理由通知】
 請求項1 サポート要件違反
 請求項2 進歩性なし
 請求項3 進歩性なし

 【H26年補正書】
 サポート要件違反等がクリアになるように補正

 【拒絶査定】
 請求項1 拒絶理由なし
 請求項2 進歩性なし
 請求項3 進歩性なし

 【本件補正】(審判請求)
 「パターンで」→「パターンにて」

 【拒絶審決】
 請求項1 進歩性なし
 請求項2 進歩性なし
 請求項3 進歩性なし

 なので,拒絶査定で拒絶理由の無かった請求項1を,進歩性なしで拒絶審決するのなら,何か特別の理由のないかぎり,当然拒絶理由通知が必要です。これは明白。

 でも特許庁はやらなかったのです。

 で,何故やらなかったかというと,こんな言い訳をしました。
「  本件審決は,本件補正発明が,「平成27年7月23日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1」であるものとした上,当該請求項1の記載をそのまま摘記し,また,本願発明が,「平成26年7月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1」であるものとした上,請求項1の記載をそのまま摘記しているが,これらは,いずれも誤記であって,正しくは,それぞれ「請求項2」である。 そして,当該誤記は,明白なものであって,本件審決のその余の記載や特許庁における審査の経緯といった事情を踏まえれば,上記の各「請求項1」が誤記であることが,十分理解可能であり,それらを「請求項2」で読み替えて,本件審決の趣旨を正しく把握することができる。」
とのことです。

 つまり,ごめん,ごめん,請求項1じゃなく請求項2の間違いよ,そんなのわかるでしょ,ね,ってわけです(判旨にも誤記がどうのこうのあるのは,こういうことが理由です。)。

 凄えや,某文科省や某防衛省でも繰り返される,何かあったらまずは単純な誤記だという,小学生並の言い訳~。カッコ悪りい~。

 ちなみに,この審決書いた合議体は以下のとおりです。
審判長  特許庁審判官     本郷 徹           
特許庁審判官     長崎 洋一           
特許庁審判官     齋藤 智也
 そして,クソのような言い訳をした本件の指定代理人は,以下のとおりです。
同 指 定 代 理 人      長      崎      洋      一
                      平      城      俊      雅
                      富      澤      哲      生
                      真      鍋      伸      行

 権力というのはほっとくと腐ると思っておかないといけないものです。格好悪いだけじゃ済まされないわけです。
 それは行政でも司法でも変わりません。上記7人の公務員の皆さんに個人的な恨みはありませんが,こういう風に監視して,隙を見せないようにしておくことが必要です。

 まあしかし,未だにこういうことをしてこういう言い訳するんだなあって感じです。怒るというより呆れ,そして実に残念ですわ。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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