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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 まあなかなか11月に入っても更新のペースは上がりません。良いところ週2くらいの更新が関の山でしょう。ま,そんな書くこともありませんし。

 いや,無理すれば書くことはあるのですよ。稀勢の里,お隣の国,宗主国の中間選挙・・・まあでもいいかなという感じです。そんなに知財とは関係のない話ですし。

 では今日は?ということで,結構知財どっぷりの話ですね。

2 まずは,知らんうちに何故か復活していた「産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会」の話です。
 議題は,「知財紛争処理システム」ということです。

 こう書くと,この辺の事情に詳しい人は,ああ,アレね,ということになります。
 このブログでもかなり前からしつこく追及していたものです。

 ま,詳しくはこの昔の記事から遡って頂きたいと思うのですが,知財紛争処理タスクフォース→知財紛争処理システム検討委員会→特許制度小委員会と具体的になるにつれて,超しょうもない話に落ち着いたわけです。
 そして,それが結実したのが,今年の改正法です。

 これもこちらを見てもらうといいのですが,数年来に渡り,大野総合の大野先生など,錚々たるメンバーを入れて,手を変え品を変え,話し合った結果が,ただの,インカメラ手続きの拡大,たったそれだけ!です。

 日本がどんどん落ちていく訳って,こういうことからもああそうなんだろうなあ~と思わせるに十分です。

 ただし,特許庁を始めとする多少の勢力は(まあ,経産省なんでしょうね。),いまだ諦めていないようで,再度,この話を蒸し返しつつある,ということです。

 で,そのときの議事録が漸く公開になりました。
 いろいろなところからの委員が居て,まあそうなんだろうなあと思わせる感じです。しかし,こういう段階だと皆さん明確には改革には反対しないのですよね,守旧派と見られるのが嫌だからでしょうか。

 ただし,東大TLOの山本委員は大人だなあという感じで,この方の意見が一番参考になりましたね。

○山本(貴)委員  これはかなり古くから議論されていることで、私も正直、どの委員会で話をしたかも覚えていないぐらい古い話です。そのときには中国や韓国が3倍賠償を導入してもやはり日本は検討もしないのですかという議論はさせていただいて、今日の資料にあるように中国や韓国は、まだスタートはしていないかもしれませんが、そういった議論がされているというところかと思っています。何かというと、日本が本当にイノベーション立国を目指すのであればやはり知的財産の価値は高くなっていかなければいけない。そういった意味では訴訟の、3倍賠償をやればよいというものではないと私は思ってはいますが、訴訟というものがどういった形で、もちろん当事者同士はそうですが、第三者から見られるかというのは非常に重要だと思っています。
  私はどちらかというと意見というより質問なのですが、もし現行制度でよいのであれば、まず日本で裁判をやってみよう、諸外国同士もということで裁判は増えているはずですよね、日本での。それはどうなっているのかとか、やはりそうであれば日本で特許を出す価値は高いわけで、海外企業の日本での出願は増えているはずですよね。というのはどうなっているのかということですとか、あるいは日本での裁判例が諸外国の侵害訴訟で引用されるようなことが増えているはずですが、そういったことというのはどうなのかというようなことはちょっとお聞きしたいというところがございます。
  あとは結局今までの議論は、これは訴える側なのか、原告側なのか被告側なのかどっちの立場で見るかで賛成、反対がいつも変わってきて、どうも今まで産業界は訴えられることを前提に考えられることのほうが多かったような気はしています。私が危惧しているのは、日本の産業界が海外でどんどん訴えられて3倍賠償、懲罰的でなければ3倍ではないのかもしれませんが、高い金額の支払を求められて、日本ではなかなか戦う武器がないみたいな話になるように捉えられないのかどうかという、要するに産業界の意見は少しお聞きしたく、非常に重要だと思うのですね。産業界が皆反対と言うとまた多分同じような結論になる気もしていますし、あとは法制局ですかね、反対だと今までお聞きしていたのですが、その辺りのコメントもいただきたいというのが個人的な意見でございました。
  以上です。

 大人な感じではあるのですが,要するに,どうせまた出来ねえんだろ,無理すんなよ,っつことですよね。

 私も実にそう思います。
 前回錚々たるメンバーで数年に渡って色々議論したのに,出来上がったのは,インカメラ手続きの拡大~♪だけ~♡なので,それ以上に出来るわけないと思いますよ。

 だって,企業からしてみると,特許カルテルによりナアナアで済ませるのが経済合理性からしてベストなんですから,ガチンコでやろうとするインセンティブがそもそもありません。
 その辺は,この「国際特許管理の日本的展開」という労作で西村教授が明らかにしているとおりです。しかし,この素晴らしい本,あまり評判になっていません。何故かなあ~知財協とかが圧力かけてたりして~ムヒヒヒ。

 兎も角も,デジャヴ感満載の今回の企画,既にDOA(dead on arrival)と思うのは私だけでしょうか~。

3 つぎに,刑事の事件です。と言ってもこれも知財。
「無断で育成」差し戻し 種苗の審理不十分 高裁松江支部」ということでした。
 毎日新聞で,11/10ですね。
 
 今年,弁理士会の農水知財系の委員会に所属し,6月までは熱心に活動したということをここで書きました(そして,腹立ててちゃぶ台返してバックレたということも)。
 そのため,にわかであるのですが,種苗法をかなり勉強でき,それは良かったです。

 で,今回のポイントは「弁護側は、鳥取県の業者が開発した屋上緑化などに使われる「トットリフジタ1号」はキリンソウ種として農林水産省に登録されたが、実際はタケシマキリンソウ種に属すると主張。農水省の審査は不適切で、品種登録は無効だとして無罪を求めた。」(これは共同通信社)。
 ということを高裁の裁判官が容れたということに尽きるでしょう。
 
 どういうことかというと,育成者権も特許権と同じで,審査して登録により発生するのですね(種苗法)。

第十七条 農林水産大臣は、品種登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その品種登録出願について、文書により拒絶しなければならない。
第十九条 育成者権は、品種登録により発生する。

 ま,こういう権利だと刑事になってもやばい事態ってありますよね。

 遡ること修習時代,私が元弁理士だということは知れておりましたから,飲み会等でもその辺の話題になることもありました。
 で,刑裁教官からは,岩永サン,あの明細書ってやつは本当読みにくいよね~どうしてなの?っと聞かれました。
 うん?刑裁教官から何で?と思ったのですが,刑裁教官は,特許侵害罪の審理を担当したことがあったのですね。

 で,そのとき,その該当特許権の明細書を色々解説してもらったりもしたけど,本当分かりにくくて苦労した~ということでした(聞いてますか,現役の弁理士の皆さん!)。

 ほんで,その刑裁教官の担当した事件ですが,一審の教官の所ではこりゃ有罪だということで,有罪判決を下したそうなのですが,控訴審で逆転無罪になったということでした(そんな教官も今や東京高裁の1刑の部長~。やはり裁判教官は出世するなあ~。)。
 何故か分かりますよね。無効だったからです(これがデジャブ2です。)。

 育成者権もそれと同じです。無効審判こそありませんが,必要的取り消しという制度があります。
第四十九条 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、品種登録を取り消さなければならない。
 一 その品種登録が第三条第一項、第四条第二項、第五条第三項、第九条第一項又は第十条の規定に違反してされたことが判明したとき。
・・・
4 育成者権は、第一項の規定により品種登録が取り消されたときは、消滅する。ただし、次の各号に掲げる場合は、育成者権は、当該各号に定める時にさかのぼって消滅したものとみなす。
 一 第一項第一号又は第四号に該当する場合 品種登録の時

 で,ここでいう3条1項というのが実に重要なのですが,こういう条文です。
第三条 次に掲げる要件を備えた品種の育成(人為的変異又は自然的変異に係る特性を固定し又は検定することをいう。以下同じ。)をした者又はその承継人(以下「育成者」という。)は、その品種についての登録(以下「品種登録」という。)を受けることができる。
一 品種登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた他の品種と特性の全部又は一部によって明確に区別されること。
二 同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること。
三 繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと。」

 1号は,区別性と言われています。ま,特許で言うと新規性ですね。既存の品種を保護してもしょうがないでしょ,というわけです。
 2号は,均一性と言われています。特許ではあまりないと思うのですが,こういうのは生き物,とくに植物ならではでしょうね。つまり,繁殖していったら性質がバラバラになった~こんなんじゃ産業としてやるわけにいかんじゃろってことです。
 3号は,安定性です。子世代孫世代でも性質が変更していったらやはり困りますので。

 ですので,今回は,1号の区別性ですかね。それに疑義がある~ということなんだろうと思います。

 登録が要件の知財ってこんなことがあるので,捜査当局は結構慎重にやらないといけないのですが,まあなかなか難しい所もありますね~。

 ですが,侵害罪は以下のとおりです。
第六十七条 育成者権又は専用利用権を侵害した者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 10年の懲役で罰金1000万円の併科ありということになると,窃盗(刑法235条)よりも重いです。
 だけど,事後,権利が無かったものになる~うーんって感じですね。

 捜査当局が,著作権法や不競法での摘発に血眼になるのは分かるような気がします~♡
 なかなか興味深い事例だと思います。


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