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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。

  現行特許法は,ご存知のとおり,昭和34年に公布され(通称昭和34年法と言われています。),翌昭和35年4月1日から施行されたもので,今月初めに満50歳を迎えられました。ちなみに現行民法は1898年施行,現行刑法は1908年施行,現行憲法は1947年施行です。

 ということで,昨年の平成21年の初めくらいから,50年も経った特許法を抜本改正するため,特許庁長官の私的研究会である特許制度研究会が立ち上がったという報道などを見かけるようになりました。そして,昨年末ようやくその特許制度研究会が報告書をまとめました。

 その主なテーマですが,

1 特許の活用促進として,

Ⅰ.登録対抗制度の見直し

Ⅱ.新たな独占的ライセンス制度の在り方

Ⅲ.特許出願段階からの早期活用

Ⅳ.実施許諾用意制度(ライセンス・オブ・ライト制度)の導入

の4つ。

 

2 多様な主体による利用に適したユーザーフレンドリーな制度の実現として,

Ⅰ.特許法条約(PLT)との整合に向けた方式的要件の緩和

Ⅱ.仮出願制度の導入

Ⅲ.新規性喪失の例外規定における学術団体及び博覧会指定制度の廃止

Ⅳ.審査着手時期の多段階化

Ⅴ.公衆審査制度の拡充

Ⅵ.冒認出願に関する救済措置の整備

の6つ。

 

3 特許関係紛争の効率的・適正な解決に向けた制度整備として,

Ⅰ.侵害訴訟の判決確定後の無効審判等による再審の取扱い

Ⅱ.特許の有効性判断についての「ダブルトラック」の在り方

Ⅲ.裁判所における技術的争点に関する的確な判断を支える制度整備

Ⅳ.無効審判ルートの在り方

Ⅴ.無効審判の確定審決の第三者効

Ⅵ.審決・訂正の部分確定/訂正の許否判断の在り方

の6つ。

4 特許保護の適切なバランスの在り方として,

Ⅰ.特許の保護対象

Ⅱ.職務発明制度

Ⅲ.差止請求権の在り方

Ⅳ.裁定実施権制度の在り方

Ⅴ.特許権の効力の例外範囲(「試験又は研究」の例外範囲)の在り方

の5つ。

 

が論点として挙げられました。

 

 ざっと見ての感想ですが,抜本改正じゃなかったのでしたっけ?てなもんです。

 1については,どれも弱火ですね~。

2については,仮出願制度が若干目を引くくらいで,あとは弱火。しかも仮出願制度についても,産業界から「ニーズを全く感じない」と言われております。残りのやつは,また異議申立と審査請求期間いじるのかねえ,ふーんというくらいです。

 3については,私の仕事に関係する部分も多いのですが,今まで散々議論してきたことばかりで,メインのものはまとまらないだろうなあというのが感想です。研究会の意見もそのようです。サブのもの,例えばⅥ.などは,まとまるでしょうが,逆に,抜本改正でこんなことを?との感はぬぐえません。

 4についてもやはりまとまらないでしょうね。しかも昔からある話。

 

 と,ここまで書いての感想は,特許法の抜本改正って必要あるの?ということです。特許制度研究会の立ち上げ時には結構報道されていたと思いますが,やはり報告書の発表時にはあまり騒がれませんでしたね。

 根がまじめな弁理士会は,これに対しても馬鹿正直に意見書を出していたりします(今年の2月17日)。まあこれはこれでよいでしょう。

 

 しかしながら,よくよく振り返ってみると,特許法の抜本改正を言い出したのは,前の特許庁長官です。
 この前長官,就任の際の報道で覚えている方もいるかもしれませんが,次期次官のトップ候補と目されながら,逆転負けをくらったかわいそうな方です。
 50年で抜本改正!のアドバルーンが上がったのはそれからすぐのことです。常識的に考えると,次官争いに敗れたルサンチマンを法改正にぶつけたのでしょうね。
 ところが,そのような抜本改正という重大事を抱えていたにもかかわらず,この前長官,報告書ができあがる前の昨年7月に長官を辞めております。もちろん,特許庁長官も役人のポストですから,就任1年で辞めるのは珍しくもありません。
 ただ,自分が言い出した50年で抜本改正!を投げ出して辞めるのはいかがなものですかな。例えば,荒井元長官は,2年間務めていたと思います。

 もちろんこれにも理由があると思います。昨年の夏といえば?そうです。民主党に政権が替わりましたね。前長官は,民主党政権に替わる前に良い天下りポストを見つけたらしく,ヘッドスライディングでぎりぎりセーフってなところです。
 ルサンチマンもすっかり解消したのでしょうかね。かわいそうなのは後に残された特許制度研究会の面々です。2階に上ったと思ったらいきなり梯子を外されるというまさにそのとおりで,それじゃあ報告書も弱火になりますね。

 

 しかしまあこんなんでいいのでしょうか,我が国の特許戦略。どうくっちょっやつんじょうじゃのう,応利山にでんが行って狸でん捕って来いっちゅうんじゃ,と思っているのは私だけではないはずです。

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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