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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 首記は昨日私が司会をやった弁理士会の研修です。
 当然講義も聞きましたし,私の備忘(まさにノート!)ということで,特記すべき事項をまとめたいと思います。

 ところで,今回の講義は,非常にわかりやすかったです。
 先月行ったPLOだかなんだかの講演は眠れない夜にはぴったりの内容でしたが,今回のは全く違います。ようやく,米国特許法の改正のポイントがわかったという気がします。あとで,詳しく述べますが,やっぱ同じ基盤に立っている方の説明じゃないとわからないですね~。

 あと,講義の内容というものの,最終的な責任は私にありますので,講師の先生に,こんなおかしなこと言ったのか,というようなことはなし,でお願いしますよ。

2 特記事項
(1)何と言っても新規性(102条)
①まずは,これですね。今回の改正の目玉も結局この条文に尽きるでしょう。昔は,102はaからgまであったのですが,今回の改正で(aからd)漸く整理されて非常にわかりやすくなりました(日本の新規性の29条1項もわかりやすいですけどね。これが,会社法や金取法のような能無し立法者(クルクルパー)に立法をやらせると,29条だけで,100項くらいの条文を作るのかもしれませんね。オホホホ。)

 さて,中でもびっくりしたのが,発明者が公然公開(publicly disclosed)したものの,強さです。殆ど,出願に近い地位が与えられるということです(102(b)(1)(B),102(b)(2)(B))。
 米国には仮出願という制度があり,研究者のように,学会発表したいという要望と早く出願せねばという要請のバランスを取る制度があります(かなり適当な様式でも,出願と同様の地位が与えられるということです。)。
 ところが,今回の改正で,先の公然公開に出願と同じ地位が与えられるということですから,学会で論文発表すれば,仮出願など不要だ!ということになります(日本にも仮出願を,とかいう半可通の経済学者が,日経の経済教室にしょうもない論文を載せておりましたが,さあどうするのかな。)。その後,おっとり刀で,1年以内にきちんと準備した通常の出願をすればよいのです。

 さらに,この条文と,改正された有効出願日(100条)の話を合わせると,さらに次のことになるそうです。
 日本の30条が適用できないような場合,例えば発表後半年過ぎても(日本の30条だと発表から6ヶ月以内に出願することが必要),まず発表後1年内に日本に出願して,その優先権を主張して米国に出願しても(日本の出願から1年以内ということ。つまり,発表からは2年以内です!),米国では,特許性okという驚くべきことになります。

 勿論,このgrace periodって,最近メインの中国やヨーロッパにはありませんし,日本でも勿論上記のとおりですから,安易に期待するのは,当然御法度ですけど,何かミスしたときの救済には十分使えますね。
 いやはやすごい話です(これをすごいと思えない,そこのアナタ,特許の実務家じゃないね。)。
 
 ですので,講師の先生は,もはや先発表主義だとおっしゃっておりました。まさに, I think so!

② ただ,この話はちょっと注意が必要です。要は,いつから適用になるのかということです。
 この条文の施行は来年(2013)の3/16からです。ということですので,日本の発表で日本の出願を元にした場合,優先日が来年の3/16以降でないと,使えないということになります(米国での現実の出願日が3/16以降という意味ではありません。勿論,優先権主張しなければ,米国の現実の出願日からになりますが,それじゃあねえ)。

(2)進歩性は変わらず。
 進歩性については,引用例の範囲が変わったのみで,基本のところは全く変わらないようです。こりゃ当然ですね。

(3) 第三者の情報提供
①日本でも同様の制度がありますが,日本の場合は無料です。
 ところが金がすべての米国では,基本有料です。ただし,3文献以下のもので,最初なら,無料となります。なんだか最初の奴を無料にするなんて,リニエンシーといい,一貫しているなあとは思いますね。
②それと関連しますが,特許後の補正は、従前より,補正前クレームを無効化させてしまいます(日本じゃ考えられませんね。日本だと遡及しますので(日本128条),訂正しても技術的範囲に含まれている限り,損害賠償しないといけません。)。つまり,特許後補正をした場合,損害の賠償をしなくてもよいのです。
 ですので,補正させるなら、遅ければ遅いほどよいわけですね。そうすると,早めに,情報提供するのがいいのかなあ,難しいなあ,ということになるわけです。

(4)記載要件
 ここで,気になった話は,ベストモード要件は,主観基準,ということですね(改正は,無効の抗弁から外れたということ。)。日本の記載要件で主観基準のものなどないと思います。これで,要件として成り立っているのは,ディスカバリーがあるからですな。

(5)先使用
 先使用の要件は、時期も立証の程度も厳しいです。特に,出願日の1年以上前(特許出願の際,じゃないのです!)での商業的使用が必要です。

 ちなみに,大学特許には先使用権が主張できないとのことでした。よくわかりませんが,大学は,地位が高い,ということでした。ほんまかいな。

(6)不服申立
 レビュー関係の料金は、軒並み高くなるということでした。特許庁料金のみで、1000万円近くなることもあるそうです。これはますます金がすべてだなあ。

(7)特許表示
 日本だと特許表示なんて,どうでもいい話ですが,米国では,特許表示は損害賠償の要件なので,しないといけません。
 でも,半導体の製造方法や構造特許のような場合,どうするんでしょうね。半導体って,小さいけど,使われる特許が何百ってこともザラですから。そうすると,パッケージに極小さな字で特許表示するんですかねえ。
 ということで,そういうような場合のため,改正で,インターネット上での特許表示もokになったとのことでした。

(8)判例紹介
 ファラナ対ケント州立大学の事件です。
 発明物そのものの現に発明のあった場所などに物理的にいなくても発明者になることもある,というものです。説明されたらそういう場合もあるかなあ(新規な化学品の,上位概念的な製法特許の発明者がいて,問題となった発明はその製法を使った新規な化学品という場合。)とも思いますが,日本のスタンダードからすると苦しい気がします。まあ困った場合に使えるかもしれませんね。

3 ざっと以上でした。結構役に立ちそうでしょ。さらに聞きたくなった弁理士の方は,e-learnigで見れますので。

 まあこうやって,米国の特許法の解説を聞いていると,ソニーの知財部での駆け出しのころを思い出しますね。

 弁理士って他の士業と異なり,渉外事件に携わる確率が非常に高いです。むしろ,渉外事件を全くやらない弁理士の方が少ないと思います(企業勤めのインハウスだと尚更でしょう。)。
 私がソニーの知財部に居た頃は,国内事件と同数の外国出願事件と中間処理の事件を抱えておりました。他方,今は,弁護士としての仕事が主で,米国の特許が問題となるようなお客さんも事件もほぼ無いと言ってよい状況ですが,私は一応弁理士ですので,米国の制度くらい常識として知っていないと恥ずかしいですから,頑張って理解に努めました。

 ところで講師の方は,今度新しい本を出版されるそうです。
 読んでいない本を紹介するのは滅多にありませんが,紹介しておきます。というのは,講師の方は,日本の特許庁で審査官・審判官をされて,何故か44歳で退官し,そこで,米国に渡り,patent attorneyとなられた方です(勿論,理系)。昨日は懇親会もやりましたので,色々お話を聞きましたが,44歳で新天地に挑戦したその心意気に敬意を表してです。
 これは,まさに猪木イズムですなあ。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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