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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 世の中専門家ってやつは,私のような弁護士に限らず,知らないことやわからないことを恥ずかしいと思う質の人が多いようですね。
 勿論,私にも多少なりその傾向があります。

 でも,もっと恥ずかしいのは,知らないのに知ったかぶりをしたり,わからないのにわかったふりをすることだということに議論はないでしょう。

 ちょっとに,首記の論理付けと動機付けの話,つまり特許の審査基準の進歩性の所に載っている,論理付けと動機付けの違いがようわからん,特に論理付けについてはどういう意味かさっぱりわからん,ということを書きました。そして,そのことを審査基準改訂に際してのパブコメで提出したってことも。

 さて,世の中の皆さん,本当に論理付けの意味わかっているんですかね?本当に,本当に?

2 で,私の持つこのような疑問が,ああやはり正しい疑問なんだなあと思わせることがありました。

 先日,何の気なしに,日弁連のHPを見ていた所,上記の審査基準の改訂に関して意見書を提出していることがわかりました。
 今年の7/31付けで, 「特許・実用新案審査基準」改訂案に対する意見書という表題のものです。URLは,http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2015/150731.htmlになります。
 まあ,この意見書自体はいいですわな。内容の当否までには踏み込みません。

 で,これを読んでいて,あることに気づいたのです。
 
 キャプチャの画面がこうです(あとでこっそり訂正されると嫌なので。)。
 この本意見書の趣旨の「2 新規性・進歩性について」には,こう書かれています。引用します。

「改訂案が、近時の裁判例の動向を踏まえ、より客観性のあるものとされた点、及び諸外国の審査基準をも参考にして、より国際的にも通用する内容とされた点は評価する。また、新規性・進歩性の実体的判断と審査の進め方とを分けるなど、分かりやすくされた点も評価する。ただし、進歩性の審査における請求項に係る発明の課題の考慮が動機付けにおいて十分でない点は、保護されるべき発明を保護するとの観点において問題を残している。」

 上記のとおり,まあ色んな考えがありますので,これはこれとして,です。

 で,折角なので,添付のpdfの意見書全文も見てみました。そこに意見の要旨とあります。



 キャプチャ画面がこうです。
 この「意見の要旨」の「2 新規性・進歩性について」には,こう書かれています。引用します。

「改訂案が,近時の裁判例の動向を踏まえ,より客観性のあるものとされた点,及び諸外国の審査基準をも参考にして,より国際的にも通用する内容とされた点は評価する。また,新規性・進歩性の実体的判断と審査の進め方とを分けるなど,分かりやすくされた点も評価する。ただし,論理付けにおける請求項に係る発明の課題の位置付けがより明らかになるように記載すべきである。 」

 ???ム?ム?上と下と比べてわかるとおり,pdfの全文で,論理付けとなっていたものが,HP上いつのまにか,動機付けとなっております。
 勿論,細かい表現が異なっていますので,pdfの全文中の意見の要旨をそのままHPにコピペしたのがHP上の本意見書の趣旨ではないのですが,引っかかりますよね。

 なので,pdfの全文の中身を対照し,発明の課題に触れた部分を探しました。
 そうすると,「2  新規性・進歩性に関する改訂の個別の点について (1) 進歩性について(審査基準第Ⅲ部第2章第2節) ①  「進歩性の判断に係る基本的な考え方」及び「進歩性の具体的な判断」について(第Ⅲ部第2章第2節2及び3) ア  本願発明の課題との関係について 」という所がその部分のようです。ここには,以下のとおり書かれております。

 「改訂案は,諸事情を総合的に評価して,論理付けができるかどうかにより進歩性を判断するとする。しかし,請求項に係る発明の課題との関係について触れるところがほとんどない。「3.3  進歩性の判断における留意事項」としては,請求項に係る発明の課題が新規なものであり当業者が通常は着想しないようなものである場合には,進歩性が肯定される一事情になり得ると言及されてはいるものの,論理付けにおけるその位置付けは必ずしも明らかではない。請求項に係る発明の課題は,「論理付けのための主な要素」として図示(第Ⅲ部第2章第2節3「進歩性の具体的な判断」)された各要素と同等(又は同等以上)の重みをもつものであると考えられるので,その旨が明らかになるように記載すべきである。
 なお,改訂案は,「請求項に係る発明とは別の課題を有する引用発明に基づき」別の思考過程により請求項に係る発明の構成に導かれることのみで論理付けとしては足りるとしているようである。しかし,このような論理付けを肯定することは,進歩性の判断において請求項に係る発明の課題との関係を重視しないかのように誤解されるおそれもあり,妥当ではない。 」

 ここでの,発明の課題と関係あるタームは,論理付けのみです。

 他方,動機付けなるタームはどこに出ているかというと,その次の「②  主引用発明に副引用発明を適用する動機付けに係る「例」について(第Ⅲ部第2章第2節3.1.1) 」のみです。

「改訂案「(2)  課題の共通性」の「例3」は例にすぎないとしても,やや無理があると思われる。すなわち,「調理鋏の握り部」の「殻割部」は,はさみの左右1対の握り部の間に挟んで殻を割ることは便宜であり,他方,「ペティーナイフの握り部」の「栓抜き部」は,ナイフの握り部をしっかり把持して栓を抜くことは便宜である。しかし,ナイフの握り部の栓抜き部を(左右の部分に分かれる)はさみに設けることは,当然に便宜であるとも思われず,多機能化という抽象的課題のみを理由として動機付けられるとは思われない。細かいが具体例を差し替えることも検討いただきたい。」

 ここの部分は,まあ大して課題と関係ないようです。

3 何が言いたいかわかりましたか?

 要するに,HP上でも,本当は論理付けと書かなきゃいけない所を動機付けと書いてしまっているわけですわ。

 いや,私はこれを間違った~間違った~と揶揄する気はありません。

 でもね,これ,日弁連の意見書ですから,専門家中の専門家が書いているわけです(HPも)。
 これを書いているのは,日弁連知的財産センター所属の弁護士だと思います。もしかすると,その弁護士のイソ弁が実は書いているのかもしれませんが・・・。

 しかし,ボス弁だろうとイソ弁だろうと,知財を多くやっている事務所の弁護士でしょうから,本当に専門家中の専門家と言って良いわけです。

 ところが,そんな専門家であっても,論理付けと動機付けは,間違えやすい概念ってことが如実に現れた!ってことが重要なのですね。
 これ,もしわざとやったとしたら,実にグッドジョブ!ですわ。

 特許庁の人がこのブログをよく見ているってことはここでも散々書きました。IPアドレスは2系統もあるようですね。
 なので,この記事もしっかり見ていると思います。

 ほんだから,特許庁に向けて言いますよ!
 やはりちょっと考えた方がいいと思いますよ。動機付けはね,広辞苑にも載っているし,このままでもいいと思います。でも,論理付けは,辞書にない言葉です。だったら,定義付けするか,他の言葉に変えるべきでしょうね。そもそも,特許法29条2項には,論理付けなんて言葉は出てきません。

 だって,審査基準て,審査官用のマニュアルなわけです。それにも関わらずこんな曖昧な言葉があるなんて,実に問題ですよ。
 例えば,電気器具のマニュアルを見て,このとき右クリックでも左クリックでもどちらでもいいとか,あるとき電源ボタンを押しても押さなくてもいいとか,どうなりますかね。あと,車を運転しているときに,右に行っても左に行ってもいいとかカーナビから言われたら,どうしますかね。

 論理付けってそんなレベルです。

 日弁連知財センターの自称専門家の皆様も,恥を忍んで,本当は論理付けってようわからんのです,って言ったらどうでしょうか?
 わからないのにわかったふりをすることの方がよっぽど恥ずかしいですよ。

4 追伸
 高校野球が終わったと思ったら,世界陸上が始まっておりました。
 で,司会の二人,織田裕二は変わらないなあ,他方中井美穂アナの方は,うーん歳相応ですね~。

 ある意味不思議です。
 というのは,私も,この夏50歳になり,すっかりおじさんなわけで,同窓会に行くとわかるのですが,男子の方が変わりっぷりが激しいですよね。
 腹が出て肥え,頭の毛も薄くなりって感じで,あんた誰かえ~てなもんです。

 他方女子の場合,そんな変わりませんよね。ま,化粧というものがあるし,女性の場合,頭の毛が薄くなりってこともあまりないわけですので。

 なので,若いころと変わらない男って,非常に不思議ですわ。

 で,思いっきり議題から逸れましたが,昨晩,ある意味クライマックスの男子100mが終わりました。
 私も中学高校大学とずっと陸上部で,ずっと100mやっていましたので,それなりに興味があるのですが,決勝が,夜の10時過ぎということで,準決勝を見てもう寝ました。
 休みの日に酒を飲むと8時まで起きているのさえ一苦労ですわ。

 で,本日録画していたものを見ると,おお大方の予想に反して,ボルトが勝ちましたね~。地力があったわけです。
 ガトリンの紆余曲折ぶりはどこかで見ればわかる話なので,ここでは書きませんが,人生色々ってやつです。

 個人的には今回200mの方が楽しみなので(日本人のタレントが豊富),短距離関連はそこでまとめて書きますかね。

 あと,20km競歩は実に残念でしたね。事前の報道で恥骨痛とあったので,心配が的中した感じになりました。歩くのでも走るのでも,練習しすぎだとなるようです。短距離の場合,総時間が少ないのであまりなりませんが,長距離の選手はよく苦しめられるやつですわ。
 練習せず完治する以外早道はありませんので,休みをとることですね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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