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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 ということで,またセミナーの講師をやることになりました。

 「ソフトウェア関連技術知財の現状と基礎知識  ~ビジネスモデル特許か別の手段か、 戦略の立て方と活用実務~」

 日時:11月25日(金)12:30~16:30
 場所:品川区立総合区民会館きゅりあん(大井町駅)
 主催:㈱情報機構

 タイトルのとおりではあるのですが,今更ビジネスモデル特許の話をメインにやっても昔話で雑学レベルに留まるだけです。ですので,フィンテック関係まで話を広げ,そういうことで,全体としては,ソフトウェア関係の知財ということにしました。

 とは言え,あと2ヶ月以上もあるし,今日もこんな30℃超えの日に,暮れもそろそろ押し詰まって・・・みたいな時期の話なんかされてもピンとくるわけないですね。

 私だってそうです。主催者の情報機構のウェブサイトを見てもらうとわかるのですが,大体のお題目は作ったものの,細部はいまだ流動的です。だってプレゼン資料とかこれから作るんだもん~♡

 ご興味があれば,どうぞ。
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1 まずは朝からびっくりの方です。
 
 報道によりますと,富士フィルムがわが古巣のソニーを特許権侵害で訴えたらしいです。「富士フイルムは磁気テープの製造技術の特許を2003年に出願、08年に登録された。」とのことです。

 私は知らなかったのですが,実は今年の春先に,アメリカのITCで,同様に富士フィルムがソニーを訴えていたらしいです。

 ま,ITCは知っていますね。税関みたいなものですので,輸入差止を求めたというわけです。
 あ,差止なら税関ではなく裁判所に?という話もあるのですが,e-bay事件以降,差止を求めるならITCがデフォーというのは特許の実務者なら知っていますね。e-bay事件は,パテントトロールがアメリカ大手の通販業者であるe-bayをビジネスモデル特許で訴えた事件で,アメリカの最高裁が差止を認めなかったやつです(すごい厳しい条件を課した。)。

 で,そのITCの事件によると,特許は6つあったようです。
「U.S. Patent Nos. 6,641,891 (the ‘891 patent), 6,703,106 (the ‘106 patent), 6,703,101 (the ‘101 patent), 6,767,612 (the ‘612 patent), 8,236,434 (the ‘434 patent), and 7,355,805 (the ‘805 patent)」

 で,このうち,対応日本特許があるのが,後半の3つです。
 6,767,612
 8,236,434
 7,355,805
 ですね。

 それぞれ,対応日本特許が
 JP3818581
 JP4459248
 JP4157412
 です。

 さらに,このうち報道で示された「2003年に出願、08年に登録された。」という条件を満たすようなものがあるかというと,ありました!

 最後のJP4157412です。
 【登録日】平成20年7月18日(2008.7.18)
 【出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
 【発明の名称】磁気テープおよびその製造方法、サーボライタ、ならびにサーボバンドの識別方法および装置

 クレームはこんな感じです。
【請求項1】  
 磁気ヘッドのトラッキング制御をするためのサーボ信号が複数のサーボバンド上にそれぞれ書き込まれた磁気テープであって、

   各サーボバンド内に書き込まれた各サーボ信号に、複数のサーボバンドのうちのそのサーボ信号が位置するサーボバンドを特定するためのデータがそれぞれ埋め込まれ、
   前記各サーボ信号は、一つのパターンが非平行な縞からなり、各データは、前記縞を構成する線の位置を、サーボバンド毎にテープ長手方向にずらすことにより前記各サーボ信号中に埋め込まれていることを特徴とする磁気テープ。

 製造方法もありまして,
【請求項6】  
 請求項1に記載の磁気テープの製造方法であって、

   サーボバンドを特定するためのデータをエンコードする第一工程と、
   第一工程でエンコードしたデータを記録パルス電流に変換する第二工程と、
  前記記録パルス電流をサーボ信号書込ヘッドに供給して、磁気テープの所定のサーボバンドに所定のエンコードされたデータが埋め込まれたサーボ信号を書き込む第三工程と、を有することを特徴とする磁気テープの製造方法。

です。
 なので,このJP4157412号がソニーを訴えたやつかなあと思います。

 とは言え,被告製品というかイ号がよくわかりませんので,これ以上は??なのですが,大手の企業同士ですから,どうなるか実に楽しみですね。

2 まあしかし,富士フィルムもソニーも,兆円レベルの売上のある超巨大企業です。

 そんな企業同士でもこれだけのガチンコをやるとは,一昔前,少なくとも私が知財部に居た頃には考えられない感じです。

 世の中の99%はプロレスだと豪語したのはこの私ですが,これくらいの企業だと100%がプロレスでしたからね。

 ナアナア,まあまあで済んでいたのが実情ですが,時代は変ったのでしょう。昔は許されていたことや大目に見てもらっていたことがそうではなくなっていますもんね(酒癖悪いセクハラおやじの私なんか,女性と飲みに行きませんから!)。

 最近はコンプライアンスだとかガバナンスだとか企業を取り巻く環境も厳しいですからね。ま,結局こういうのも透明化というか説明責任というか,そういうやつだとは思うのですね。要するに,ブラックボックスの中で適当に処理することは許されない,ってこんな所でしょう。

 個人的には私はプロレスファンですので,暗黙の了解ってやつを全否定するつもりはありません。とは言え,それで済ませることのできる部分が随分狭まってることは事実でしょうね。

 経営者には酷な時代とも言えますが,ま,高いお金貰ってるんだから,それくらいはしないとね!

3 最後は10周年のやつです。

 実は今週末の明日と明後日,59期修習生の10周年in熱海が盛大に開かれます。同期の皆さん,おめでとうございます。

 私は種々の理由があり,今回は行きませんが,存分に楽しんでください。ま,結局行かない一番の理由は恒例の高尾山登山とぶつかったかなあって所ですかね。

 しかし,思い起こすともう10年ですか~。色々思い起こすと確かに色々ありましたが,短かったですね。

 弁護士生活の初めの3年はイソ弁をしておりました。
 今では,知財のブティック系では最大手と言ってもよい有名な事務所にお世話になったのですが,当時はそうでもなく,大変なことがしょっちゅう起こってました。なので,色々勉強になりましたね。

 今となっては,もう少し営業術を学べば良かったかなあって思いますが,そういうのって属人的なものも大きいですから,意味なし~♬って感じもしますね。

 そして,後半というか7年は独立して,自分の事務所でやっております(勿論,今も)。
 これも大変なことは色々あったのですが,やはり自分で何でも決められるというのはいいですね~。本当,長く事務所を続けていきたいと思ってますが,お客さんあってのことですので,こればかりはねえって気もします。

 取り敢えず,廃業することもなく,懲戒処分を受けることもなく,平々凡々と細々と続けられたのは,幸運のなせるわざで,私自身も運が良かったなあと思っております。

 出席される皆さん,熱海のおみやげ話を楽しみにしておりますので,また飲み会の際はよろしくお願いします。

4 追伸
 毎度おなじみ流浪の弁護士,散歩のコーナーでございます。
 本日はここ京浜運河に来ております。
 
 左手奥に見えるのが,T.Y. HARBORですね。いやあ,この空の青,いまだ夏って感じがしますね。しかも遠くに入道雲です。

 実は,日曜はサーフィンの予定なのですが,この分じゃとても私には無理です。今日の朝の段階で,湘南は既に胸肩の波になっております。

 やはりおっさんサンデイサーファーなので,大きいと怖いのですね。胸がギリギリで,肩だと見学~♬のパターンになってしまいます。
 ま,何事も命あっての物種ですからね。

1 流行りの話で言えば,シン・モチって言わないといけないですかね。

 あれは,総監督の庵野さんが,帰ってきたウルトラマンのファンだからでしょうね。帰ってきたウルトラマンは,新マンって呼ばれてましたもん。

 そう言えば,BSの例の50周年の名作回のやつで,怪獣使いと少年がもうじき放送されますね(9/4)。いやあ楽しみのような怖いようなって所です。

 で,何の話でしたっけ,って所ですが,報道によると,凸版印刷が越後製菓を特許権侵害で訴えたという話です。
 第一報ではわからなかったのですが,特許番号等は続報で明らかになったようです。

  特許第3070597号ですね。

2 クレームはこんな感じです。

【請求項1】鏡餅形状の容器に餅を収容してなる鏡餅包装物の上部に橙などを真似た鏡餅飾りを止め付けるプラスチックシートを成形した保持具であって、前記鏡餅包装物の上段部と前記鏡餅飾りとに応じた形状を有する、上段部の被覆部と鏡餅飾り保持部が設けられていることを特徴とする鏡餅飾りの保持具。」

 クレームは5個あるのですが,独立項は,このクレーム1だけです。

  こういうのは図があるとわかりやすいのですが,こんな感じです。

 
 この図があると,おお,そう言えば,正月間近になると,スーパーの店頭などに,こんなパッケージの餅がたくさん売っているなあと思ったのではないでしょうか。

 実にシンプルで,簡単な発明だと言えます。だからこそ,こういうのは良い特許ですね。

 あ,何か複雑でわかりづらいのが良い特許とかそういうのだと思っているのかもしれませんが,違いますからね。そんなのは普及しませんから。
 理想は,ネジや,車輪や,テコ,そういう発明がいいですねえ。

 おっとと議題がずれそうですが,ま,今回問題となった特許はこういう感じです。あとは,越後製菓の実際の製品が問題です。
 ですが,これは品番とかわかりませんので,これ以上は無理です。

 とは言え,特許がこれだけシンプルだと,構成要件該当性はあるのが通常でしょうね。

 ですので,勝負は無効論と見るのがデフォーでしょう。今後の成り行きに注目です。

  まあしかし,サトウの切り餅との間では大勝利を得た越後製菓が今回は追われる立場です。
 私はよく思うのですが,世の中にある数多の訴訟類型の中で,原告と被告の可換性が一番高いのはこの特許権侵害訴訟ではないかと思いますね。あ,交通事故があったか~ムヒヒヒ。
 
 
1 今日も暑い東京です。33.4℃だったらしいですね。
 さて,表題でわかるのではないでしょうか。渋谷の近辺の大規模な再開発とともに,公園通りで親しまれてきた渋谷のパルコも立て替えのため,今度の日曜,8/7で閉店するというやつです。

 私にとっては渋谷というのは,大学に入学して初めて行った盛り場でもあり,その後も縁あって,ほぼ毎週のように飲んだ非常に馴染みのある場所です。

 その話は,東横線の渋谷駅が壊されるというときにちょっと書きました。

 ほんで今日は,代々木公園の方から渋谷駅の方へ,大学時代の練習の帰り道に辿って歩いてみました。
 

 スタートは代々木公園です。
 しかし,公園というのは建物があまりありませんから,基本変わりませんね。練習していた織田フィールドはよくわからなかったのですが,公園そのものは,よく練習しに来ていた30年前(私は大学3年生)とそう変わりませんね。
 ただ,代々木公園を出て驚いたのは,渋谷公会堂がない!ってことです。そういえば建て替えるの何のって言ってたなあってやつです。昔,バービーボーイズのコンサートに行ったのを思い出しました。

 続いて公園通りを下ってパルコの前の交差点です。
 

 こんな所にセブン-イレブンがあるんだ~みたいな感じでしたね。
 ほんでパルコ前です。
 
 よく見ると,Rの字が取れています。確かにビルも古いなあって感じもしますね。

 渋谷は,陸上の練習だけではなく,やはりおねえちゃん関係でもよく来ましたから,色々感慨深いですね。こう行くとこの辺の店で・・・とか,そんな思い出のある人はたくさん居るのではないでしょうか。

 なので,そういう思い出のある所が無くなってしまうというのは多少寂しい感もして,今日思い切って足を伸ばした次第です。

 そういえば,パルコって公園(英語ではpark)という意味で,そこから公園通りっていう名前になったらしいですね。私は代々木公園から取ったのかなあと思ってたのですが,実はパルコあってのものらしいです。知らんかったです。

 ほんで,そのまま公園通りを下り,渋谷駅に向かったのですが,ああ,ここは西武のシード館じゃなかったかなあという所は,無印良品になってましたねえ。やはり大きな街は移り変わりも激しいですわ。

2 本当は,今日の本題,PBPクレームの研修(渋谷に足を伸ばしたのはその後のことでした。)のことを書こうかなあと思ったのですが,まあこれでいいですかね。

3 追伸
 そうだ,そうだ。男子のサッカー,途中から研修だったので,見れなかったのですが,後半も乱打戦でした。
 いやあ守備がもうちょっと何とかなっていれば勝つか最悪引き分けの試合でしたねえ。もったいない。

 とは言え,向こうも守備が・・・て感じですが。
 まああと2試合ありますからね。

 開会式前からちょっとオーバーヒート気味ですね。
1 表題のボツネタと言っても,法曹関係者に有名なボツネタのことではありません。

 実は,今年の3月,知財管理誌から論文の執筆を頼まれました。テーマとしては,「企業の知財担当者の役割(仮)」ということで,来年の1月号に掲載予定のため,執筆の〆は7/Eだったのです。

 まあ,突然そんな依頼が来たわけだったのですが,どうやら知財管理誌の編集担当者に拙著「知財実務のセオリー」の愛読者が居て,そこからの話だったようです。

 そこで,私も拙著に書いていない話など,あと拙著は,何だかんだ言って企業側(上司側)からの視点で書いてあるものなので,今度は徹頭徹尾,部下というか現場目線で書こうかなと思ったわけです。

2 ほんで,締め切りまでに順調に出来上がり,7/半ばに知財管理誌に提出しました。

 ところが,本日,知財管理誌の編集のトップの方が訪れ,先生の論文はちょっと・・・ということで,ボツ!になったわけです。

 まあ,岩永節大炸裂とまでは行かず,ある程度抑えたつもりではあるのですが,やっぱ保守的な所では無理だったか~って感じです。
 で,話を伺う限り,知財管理誌ではなく,知財協のトップ層からNGが出たようですね。知財協と言えば,私の天敵?でもありますので,これは致し方無い所でしょう。現場の編集を責めてもしょうが無いですからね。

 とは言え,依頼されたのに!結局タダ働きになっちまったわけですので,それなりのサンクションを課すことは必要です。ですので,今後一切知財管理誌に私の読み物等が載ることはないと思います(向こうもお断りでしょうけど。)。

 あと,そのボツになったネタは,タイトル「知財担当者のためのライフハック~知財の人生を軽やかに過ごす~」というものです。
 ここで大々的に公開させて頂きます。編集の方々も,オフレコでは大変面白かったと言ってくれましたので。

3 いやあ私って基本どこ行ってもペース変わらないですからね。

 大手の企業と仕事を一緒にするとき,私が説明し始めると,現場の部下はいやあ実にそのとおりだなあという顔をするのですが,その上の部長クラスが,必ず苦虫を噛み潰したような顔(まさにこの字のとおり)で,このお喋りクソ野郎を誰か黙らしてくれ~って目で私を睨みつけますからねえ。

 兎も角も,実際読んでもらわないと始まりません。それで各自判断して頂ければと思います。
1 概要
 本件は,特許協力条約に基づいて行った国際特許出願について,国内書面提出期間内に明細書及び請求の範囲の翻訳文(明細書等翻訳文)を提出しなかったため,特許法184条の4第3項により国際特許出願が取り下げられたものとみなされた原告(サムソン)が,特許庁長官に対し,国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出できなかったことについて「正当な理由」があるとして,同条4項により明細書等翻訳文を提出するとともに(本件翻訳文提出手続。),特許法184条の5第1項に規定する国内書面を提出したところ(本件国内書面提出手続),特許庁長官が,平成26年3月27日付けで,本件各手続についていずれも却下する処分(本件各却下処分)をしたため,本件各却下処分の各取消しを求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事47部(沖中さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。

 まあ,ときどきある特許事務所のしくじりパターンですね。とは言え,原告がでかい会社で,しくじった特許事務所もでかい所なので,面白判決を紹介するこのブログのポリシーに合致したというわけです(知財のマジメ判決系は後継ブログのみです。)。

 で,問題点は,上記のとおりです。期限を徒過したのだけど,「正当な理由」があるかどうかです。

2 問題点
 まずは,条文です。特許法184条の4です。
(外国語でされた国際特許出願の翻訳文)
第百八十四条の四  外国語でされた国際特許出願(以下「外国語特許出願」という。)の出願人は、条約第二条(xi)の優先日(以下「優先日」という。)から二年六月(以下 「国内書面提出期間」という。)以内に、前条第一項に規定する国際出願日(以下「国際出願日」という。)における条約第三条(2)に規定する明細書、請求 の範囲、図面(図面の中の説明に限る。以下この条において同じ。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、国内書面提出期間の満了前二月から満了の日までの間に次条第一項に規定する書面を提出した外国語特許出願(当該書面の提出の日以前に当該翻訳文を提出したものを 除く。)にあつては、当該書面の提出の日から二月(以下「翻訳文提出特例期間」という。)以内に、当該翻訳文を提出することができる。
・・・
3  国内書面提出期間(第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間。以下この条において同じ。)内に第一項に規定する明細書の翻訳文及 び前二項に規定する請求の範囲の翻訳文(以下「明細書等翻訳文」という。)の提出がなかつたときは、その国際特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4  前項の規定により取り下げられたものとみなされた国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に当該明細書等翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、明細書等翻訳文並びに第一項に規定する図面及び要約の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

 PCT出願というのは,まあ特許実務者なら誰でも知っているでしょう。よく国際特許と間違われて使われてるやつでもあります。

 要するに各国毎の手続きは面倒くさいので,まとめて出願できるようにした,ってやつです。
 とは言え,まとめたのは出願だけなので,権利が欲しいという国については,結局,それぞれの国独自の手続きをせねばなりません。
 そりゃそうですね。夢見るクソサヨクの願望とは裏腹,世の中国境だらけですからね。

 じゃあ何がメリットかというと,出願の国数が多くなると,バラバラに出願するよりも多少安くなるというお金のメリット,あと,翻訳文の提出が,30ヶ月(2年6月)と1年半伸ばせるということですね(パリルートでバラバラに出願する場合は,優先権を1年内に主張して出願しないといけないので。)。

 で,今回問題になったのは,後者の話です。つまり,原告のサムソンは30ヶ月内に翻訳文を提出せず,取り下げ擬制となってしまったわけです。

 そうすると,4項にいう「正当な理由」があるか気になります。

 実は,この規定は結構最近に改正されたものです。平成23年改正法です。

 この時の所謂解説本には以下のように載っております。

ⅰ 救済を認める要件について
 PLT 第12条⑴43は、加盟国に対し、手続期間を徒過した場合の救済を認める要件として「Due Care(いわゆる『相当な注意』)を払っていた」又は、「Unintentional(いわゆる『故意ではない』)であった」のいずれかを選択することを認めている。「Unintentional」を採用すると救済の幅が広がり過ぎる懸念があるが、諸外国の立法例においては、「Due Care」が比較的低額な手数料と組み合わされているのに対し、「Unintentional」を比較的高額な手数料と組み合わせることで、制度の濫用を防ぎ、真に救済が必要なもののみが救済されるよう配慮しているようである。
 我が国においては、既存の救済手続がこれまで手数料を徴収していないことから、今回の救済手続についても手数料は無料とすることとし、それを前提に第三者の監視負担に配慮しつつ実効的な救済を確保できる要件として、「Due Care」を採用することとした。そして、具体的な条文の文言は、行政事件訴訟法第14条第1 項等の規定に倣い、「その責めに帰することができない理由」に比して緩やかな要件である「翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるとき」とした。」(H23改正本p181)

 つまり,正当な理由とは,「Due Care」のことであり,これは,『相当な注意』を払っていたことであると,立法者は考えていたってことです。民法的に言えば,善意・無過失パターンでしょうね。

 となると,原告,と言っても,サムソンほどの大きな会社が外国出願を現地代理人を通さずにやるわけがありませんから,サムソンの頼んだ特許事務所がきちんとやっていたかどうかってことがポイントになるわけです。

3 判旨
「2 特許法184条の4第4項所定の「正当な理由」の有無について
上記1の業務管理態勢及び受信メールの処理手順の定めを前提に,原告が本件国内書面提出期間内に翻訳文提出手続を行わなかったことにつき「正当な理由」があるか検討する。
(1) 原告は,本件期間徒過の直接の原因につき,本件特許事務所において受信班の受信第1担当者が,本件メールを,日付フォルダ直下の「新件午後」フォルダへ移動すべきところ,誤って日付フォルダ直下の「印刷済み」フォルダに移動したためであるとしつつ,同ミスを回避することはできなかった旨主張し,本件特許事務所の従業員が作成した陳述書にも同様の記載がある。
 そこで検討するに,上記1(2)で認定した受信処理の手順の定めによれば,ALPの共有端末から本件特許事務所内のネットワーク上への受信メールの移動は,受信班のスタッフが手作業で行うのであるから,移動先のフォルダを誤るミスが生じ得ることは容易に予想される。それにもかかわらず,本件特許事務所においては,受信第1担当者が,ALPの共有端末から本件特許事務所内のネットワーク上の日付フォルダ直下の「新件午後」フォルダ直下に全ての受信メールを移動したことについて,何らこれを確認する態勢を採っていなかったのであって(上記1(2)イ),その結果,本件期間徒過に至ったものである。
 また,上記1(2)の手順の定めによれば,まず,受信第1担当者が受信メールの件数をカウントし,受信第2担当者においてそれが正しいことを確認した上で(上記1(2)ア),その後,印刷担当者が「新件午後」フォルダ直下にある受信メールを印刷し,これを「新件午後」フォルダ直下の「印刷済み」フォルダに移動した後,受信第1担当者が受信メールの印刷物の件数及び内容と受信メールの件数及び内容とを確認する作業を行うのであるから(上記1(2)ウ,エ),受信第1担当者が定められた手順どおりに受信メールの印刷物の件数と受信メールの件数とを対照していれば,本件メールが印刷されておらず,その受信処理においてミスがあったことは容易に判明したはずである。このように,本件期間徒過の原因についての原告の主張を前提とすると,本件特許事務所は,受信第1担当者による受信メールの移動ミスに気付くことができたはずの機会があったにもかかわらず,これを看過したこととなるのであって,本件特許事務所において上記1(2)の手順の定めが遵守されていたのかについても疑問がある。
 以上によれば,本件期間徒過について「正当な理由」があったとはいえない。
(2) これに対し,原告は,①本件特許事務所が,人員配置や作業マニュアルの策定を含め受信メールの処理が確実に行われるような業務管理態勢を敷いていた,②メールサーバーの障害により受信第1担当者の精神的負担が増しており,受信処理のミスの発生を回避できなかったなどと主張する。
 しかしながら,上記①について,上記(1)で説示したところによれば,本件特許事務所の業務管理態勢が適切であったとは認められない。
 また,上記②については,本件メールの送受信はいずれもメールサーバーの障害が回復した後に行われているのであって,メールサーバーの障害と本件期間徒過との間の因果関係を認めるに足る証拠はない(かえって,本件回復理由書及び本件弁明書にはメールサーバーの障害についての記載が一切ないことに鑑みると,かかる主張は,本件期間徒過を正当化するための後付けの主張にすぎないとも考えられる。)。なお,仮にメールサーバーの障害と本件期間徒過との間に何らかの関係があったとしても,上記(1)で説示したとおり,本件特許事務所において,第1受信担当者が受信メールをALPの共有端末から「新件午後」フォルダに移動させる段階でこれを再確認する態勢を講じ,あるいは,定められたとおりの作業手順で確認を行っていれば,本件期間徒過は回避できたはずであるから,やはり本件期間徒過につき「正当な理由」があるとは認めることができない。
 したがって,原告の主張は,いずれも採用することができない。
 なお,原告は,「正当な理由」について,①期間徒過が生じる前に状況に応じたしかるべき措置を講じていたこと,②同措置の下で,予見・回避し得なかった期間徒過が生じたことと解釈すべきであると主張するが,以上の説示に照らせば,「しかるべき措置を講じていた」とも「予見・回避し得なかった期間徒過が生じた」ともいえないことは明らかである。
(3) したがって,国内書面提出期間内に本件翻訳文提出手続を行うことができなかったことについて「正当な理由」(特許法184条の4第4項)があったとは認められず,その結果,本件国内書面提出に係る手続については出願の取下擬制(特許法184条の4第3項)により客体が存在しないこととなるから,本件各却下処分はいずれも適法である。」

4 検討
 裁判所における「正当な理由」の解釈はありません。多少残念です。
 最後の方に判示したのは,原告が,「「正当な理由」の文言を導入する契機となった特許法条約12条1項の“Due Care”の国際的な解釈によれば,「正当な理由」は,①期間徒過が生じる前に,状況に応じたしかるべき措置を講じていたこと,及び②同措置の下で,予見・回避し得なかった期間徒過が生じたことで足りると解される。」と主張したから,その応答をしたまでということのようです。

 まあ原告というか,特許事務所は色々言っておりますが,これは仕方がないでしょう。
 ちなみにどこの特許事務所かということなのですが,判旨には思い切り書いておりますので,見ればわかります。私は裁判所にならって,本件特許事務所と言っておきます。

 この本件特許事務所ですが,私がよく見る暇人弁理士さんのブログによると,現在日本一の特許事務所になったようですね。ついに弁理士数が100人を超えたようです。
 私の記憶が確かなら,もう少し前には,パナソニックと日立のインハウスがワンツーだったと思いますが,弁理士法改正の影響か(利益相反が緩やかになった),通常の事務所がトップ3まで来ております。

 あと,判旨によるとこの本件特許事務所は,「約650人のスタッフが在籍し」ているらしいです。

 この中に弁理士数は含みますから,つまりは500人以上は,弁理士じゃない人達ということになります。

 ところで,弁理士業界って非常に特殊で,特に身内の非弁に甘い業界なのですが,事務所に20人くらいスタッフがいるのに,弁理士は所長一人だけ~♬という,弁護士からすると椅子から転げ落ちるような体制の事務所もかつては数多くありました。

 というのは,弁理士法が平成20年(結構最近ですよね。)に改正されるまで,事務所内での非弁(無資格者,特許技術者なんて名前で呼ばれてるようですよ~♬)への名義貸しが,何と法律により規制されていなかったのです(現行弁理士法31条の3)。

 酷い話ですよね。内部での規則レベルでの規制はあったのですが,法律レベルでは無かったのです。
 特許庁は特にオカンムリで,例えば審査の面談のときに無資格者がやってきたら,会わない!ということも多くありました。とは言え,文系の,全く明細書も書いておらず,技術もさっぱりわからないという所長が来てもどうしようもない話ではあったのですがね。

 H13年に試験制度が改正され,弁理士試験の難易度を急降下させたのは,こういうことが理由の一つです。
 上記のとおり,文系の営業担当の所長弁理士が一人居て,難関理系大を出た無資格の明細書作成係(元メーカーエンジニアとか)をこき使うというような図式での様々な矛盾が露呈してきたわけです。

 ま,私は別にこんな話で何かを糾弾するつもりはありません,いつもながら~。
 でもお客側の知財協に加盟しているような一流大企業もこういうことは見て見ぬふりですよ(私の元いた会社も含めてね。)。
 だって,企業からすると,安く買い叩ければそれでいいのですから。明細書を弁理士に書いてもらい金が高くなるんだったら,無資格者に書いてもらって安い方がいいですよね。だって,弁理士と無資格者に明細書の質の違いはないのですもの。

 私が元いた会社も,弁理士と無資格者を差別することなく,平等にランキング付して,報酬に差をつけておりました。勿論,私はそのころ,インハウスの弁理士でしたから,こんなのやってらんねーなあとずっと思っていたことは内緒です。

 おっと,話が随分逸れてしまいました。別に本件特許事務所に何らかの問題があると言っているわけではありませんからね。念のため。弁理士業界ってこういう所だということです。

 ちなみに,本件特許事務所に何らかの問題が全くないわけではありません。こうして,正当な理由が認められなかったのですからね。
 だって,弁護士の業界で言えば,西村あさひ事務所が,大型の訴訟案件について,控訴期間を徒過させて負け判決を確定させた!というようなもんですからね。そりゃ責任は大きいですよ。こういうのって業界全体の信用に関わるのですよねえ~。
 兎も角も心してやってもらわないと。

1 先程まで散歩に行っていたのですが,その途中,スマホをいじっていると首記の話が飛び込んできました。いやあ,びっくり(これは日経の記事です。)。

 一審の判決が出たのは,去年の10/29です。
  平成27(ワ)1025号(平成27年10月29日判決)ですね。このブログは残念ながら休止中だったので,コメント等ないのですが,後継ブログではきちんとフォローしておりました。

 復習しますかね。

2 原告はサントリーで,被告がアサヒです。そして,所謂イ号は,被告のドライゼロでした。

 特許は,
【特許番号】特許第5382754号(P5382754)
【登録日】平成25年10月11日(2013.10.11)
【発明の名称】pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料
というものです。

 クレームは,
A-① エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるノンアルコールのビールテイスト飲料であって,
A-② pHが3.0以上4.5以下であり,
A-③ 糖質の含量が0.5g/100ml以下である,
B 前記飲料。

 というものです。エキスとpHと糖質がパラメータの数値限定発明ですが,それ以外の限定はありませんので,実は広い発明と思われます。

 で,一審でサントリーが何故負けたかというと,無効の抗弁で負けたのですね。
 理由は進歩性です。しかも公然実施した発明を引例としたものです。
 若干恥ずかしい話かもしれません。何故?って,それは自分のところの製品が無効資料の一つだったからですね。

3 無効資料の1は,原告サントリーの製品のオールフリーで,無効資料2は,被告アサヒの製品のダブルゼロでした。

 ほんで,一致点・相違点なのです。
 まず,オールフリーとの一致点・相違点です。
 「本件発明と公然実施発明1は,エキス分の総量につき,本件発明が0.5重量%以上2.0重量%以下であるのに対し,公然実施発明1が0.39重量%である点で相違し,その余の点で一致する。」   

 次に,ダブルゼロとの一致点・相違点です。
本件発明と公然実施発明2は,糖質の含量につき,本件発明が0.5g/100ml以下であるのに対し,公然実施発明2が0.9g/100mlである点で相違し,その余の点で一致する。」 

 つまり,オールフリーとの違いは,エキス分の総量の数値限定の違いのみで,ダブルゼロとの違いも,糖質の含量の数値限定の違いのみだったというわけです。

 こうなると結構苦しいかもしれませんね。

 ということで,一審は原告の敗訴。
 ただ,今年の4月に無効審判が請求され(無効資料が何かはわからず),それによると,原告側の代理人が代わっていますね。AIKの片山先生Gpになっております。他方,被告側は一審そのままの大野総合です(当たり前ですね。)。

 なので,二審で何かあるかなあと思ったのですが,上記の日経の記事によると,原告は訴訟を,被告は無効審判を取り下げ,被告のドライゼロも売り続けていいような和解になったようですね。

 ほんで,一審判決を見るとわかるのですが,この事件はお金の請求はしておりません。ということは,売り続けてよいということは,明らかに,被告アサヒの勝ち筋和解です。
 代理人を変えて負け筋和解でもよいとした原告サントリーの真意はわかりませんが,判決よりはまし~ってことですかねえ。でもなおさら~じゃあ何故代理人を変える必要があった?ってことも言えます。

 実は後継ブログには少し書いたのですが,サントリーがうまい訂正をできれば,無効を回避できるかなあという気がしました。
 上記のとおり,本件特許は,材料の限定はありません。だからこそ広くて無効にされやすいのですが,例えば,麦芽エキスなどに限定する,他の材料も限定する,このような訂正を行えば,無効は回避できたかもしれません。

 とは言え私は無責任な通りすがりですので,そんなうまい材料限定ができなかったり,仮にできても構成要件該当性が外れてしまうってことがあったのかもしれませんね。
 なかなか実際の当事者じゃないとその辺の機微はわかりませんからね。

 しかしながら,金の請求をしていない本件で,イ号の継続販売を認める和解は,通常は被告側の大勝利ですわな。

4 さて,散歩の話に戻りますが,散歩中,五反田駅は,都知事候補の小池さんが来るとか来ないとかでごった返しておりました。

 ところが,散歩から帰るともう小池さんは帰った後で,何か昔よく見たおっさんが,インタビューを受けているのが見えました。

 おお,あれは,横浜地検刑事部の若狭部長~。
 そう言えば,そのときの次席検事は,マムシの善三で,この前の変な記者会見で顰蹙を買ってましたなあ。あれも,都知事絡みでしたニャ~。

 若狭部長にも,佐々木次席にも怒鳴られたことは幸いにしてありませんでしたが,検察修習にはあまり良い思い出はありませんねえ。


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