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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 判決のアップはありませんので,報道で話題になった知財のお題2つ行きましょう。
 
 あ,あれとあれですね,と思われたでしょうが,どっちからにしようかなあ。ま,一応特許専門という触れ込みなので,特許の方から行きましょう。

2 「パナソニック、再び首位に 特許国際出願数」です。
 WIPOが管轄している国際特許出願(国際特許でないところに注意!ですよ。)で,パナソニックが昨年首位に返り咲いたということです。パナソニックが一位で,2,881件,ZTEは2位で2,309件ということですね。

 で,この報道とは直接関係ありませんが,パナソニックの国内の出願がどれほどあるのか,ちょっと検索してみました。今は便利で,物好きな弁理士の人がまとめてくれております(知財ラボさんからの情報です。)。
 それによると,パナソニックは,2013年は9,276件で1位です。2位は,キャノンで7,644件だそうです。ただ,出願の件数は出願公開しないと明らかにならないでしょうから,1年半のタイムラグが生じます。ですので,2013年と言っても,2011~2012年にかけて出願されたものというのが正しいと思います。

 ま,そういう細かい話はさておき,つまりはパナソニックは,1年でいまだに1万件近い出願をして,その3割を国際特許出願しているというわけです。国際特許出願にせずに直接出願もそこそこあるでしょうから(専門家ならこの違いはわかりますよね。),恐らく,国内出願している出願の半数近く又はそれ以上に外国出願しているのではないかなあということが推測されるわけです。

 次は,じゃあそんな大量の出願をどうさばいているのか,それが気になりますね~まあなんて下世話なんでしょう。

 やはり物好きな弁理士の方がいて,事務所毎の弁理士数のランキングを作ってくれております(暇人弁理士のためのIPIブログさんからの情報です。)。
  そこで,弁理士数が一位の事務所は,何とパナソニックなのです。弁理士数135人です。
  2位がこれまた企業の日立製作所で,105人です。3位が漸く普通の事務所で,志賀国際特許事務所で,97人,4位が法律事務所としても有名な青和特許法律事務所で91人,5位が大阪で一番大きい青山特許事務所で87人ですね(2014年初のデータです。)。

 弁護士数の方は四大渉外なんて俗に言われるだけあって,普通の事務所がズラーっと一位から並んでいます。つーか,他の士業もそうだと思いますよ。
 弁理士だけ,すげー異常な世界なわけです。

 だって,弁理士の数って1万人くらいしか居ません。その2割の2,000人くらいは,企業に勤めている所謂インハウスです。2割ですよ,2割!こんなにサラリーマンの割合の多い士業ってないと思います(私も昔そうだったのですが。)。
 そして,更に,その1割以上は,パナソニックと日立製作所に勤めているってわけです。何かおかしい感じがしますよね。

 何故,パナソニックと日立製作所にこんなにたくさんの弁理士がいるか?そりゃ簡単です。所謂内製(サラリーマン弁理士に明細書を書かせていること)をやっているからですね。

 ま,日立製作所は昔から有名でした。知財部の新人は,弁理士試験の勉強の優遇期間などがあり,仕事をしなくて勉強だけしていればよい期間が,確か1年か2年位あったはずです。
 異動してきた人も,新人ほどじゃないにせよ,択一と論文の前にやはり仕事をしなくてよい期間があったと思います(弁理士試験の受験ゼミの日立製作所の方から聞いた話なので,今は違うかもしれません)。なので,日立製作所の弁理士は多いのです。

 他方,パナソニックは昔はこうじゃなかったと思います。私がもと居たソニーと同様,基本外注だったと思います。ところが,方針が変わったのでしょうね。ま,恐らく,コストを下げて出願数を稼ぐとなると,この内製の方法がいい!となったのでしょう。

 例えば,インハウスの弁理士は,サラリーマンですので,普通の従業員と給与水準は一緒です。グーグルでググると,パナソニックの場合,平均で731万円と出てきます。お,結構高いですね,税込みとはいえ。

 で,一般に,弁理士の明細書の作成能力は1週間に1本と言われております。もっと早い人遅い人もいますし,技術の難易によっても違うと思いますが,きちんとした内容のものを書くとなるとこれくらいは見た方がよいと思います。
 そうすると,年間50本の明細書が作成できるということになります。これで,731万円を割ると,14万6千円ですね。うーん,微妙な値段です。

 というのは,最近,明細書代のデフレが急速に進み,単価が14万6千円くらいで量をこなす特許事務所も多いんじゃないかと思うのです。ま,明細書書き以外にも,中間処理や権利行使系の仕事やそれこそ上記の外国出願の仕事もあるでしょうから外注とそんな変わんねえじゃんと一概に言えないでしょうが,どうなんでしょ。
 サラリーマンとして雇うと,日本では解雇規制が厳しく,外注の事務所をバンバン切るようには切れないとか,社会保障や福利厚生で意外と経費がかかるとか,デメリットも結構あると思うのですね。

 まあそれでもパナソニックは,内製重視の方に大きく舵を切ったというわけです。これも知財戦略の一環ですね。

3 「東芝の技術漏洩容疑、提携先元社員を逮捕」です。パナソニックときて,次は東芝です。東芝と提携しているサンディスクの元従業員が,ハイニックスに営業秘密を漏洩した疑いです。

 不正競争防止法の条文はこうですね。
第二十一条  次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律 (平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項 に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。)により、営業秘密を取得した者
二  詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者
三  営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
イ 営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体をいう。以下この号において同じ。)又は営業秘密が化体された物件を横領すること。
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
四  営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者
五  営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同 じ。)又は従業者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、 又は開示した者(前号に掲げる者を除く。)
六  営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その在職中に、そ の営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を 退いた後に使用し、又は開示した者(第四号に掲げる者を除く。)
七  不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、第二号又は前三号の罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 営業秘密関係の罰則は,罰則規定の最初に出てきます。報道によると,東芝の従業員等だったことはないようで,しかも研究データにアクセスする権限はあったようなので,この1項3号か4号に該当しそうな感じがします。

 しかも,この事件,これで終わらず,東芝はハイニックスを民事で提訴したようですね(うーん幻の大合議以来)。
 民事の場合は,この条文です。
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
四  窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)
五  その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
六  その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為
七  営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為
八  その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反して その営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により 知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為
九  その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

 上記のとおり,今回の被疑者はアクセス権限があったようで,しかも,この被疑者ではなく,その営業秘密を使ったとされるハイニックスを訴えておりますので,不正競争行為は,2条1項8号か9号ですね。はじめから知っていたのなら8号ですが,8号がだめでも警告書を一本打っておけば9号で行けますので,こちらの方かもしれませんね。

4 このお題2つを並べたのは,偶然ではあるのですが,ある共通点はありますよね。一方は特許,一方は営業秘密ですが,これは無体の情報,特に技術的情報に関するものです。

 特許とノウハウ(営業秘密)の切り分けってわかりますかね。ここで何度も書きましたが,その基準はたったひとつです。リバースエンジニアリングでわかるかどうかです。リバースエンジニアリングでわかるなら特許出願すべきだし,そうじゃなければノウハウで秘匿です。

 ということは,技術的情報って元は一つのものです。つまり是非に及ばず,技術的な情報の価値はますます上昇し,それをどう守っていくかが重要になっていってるわけですね。そうすると,そういう値の張る情報を創作した人々には高待遇があってもいいんじゃねえかなあと思うわけです。

 ここまで来たら何が言いたいかわかりますかね。人は理屈で生きてるわけじゃないですよ。
 あの糞会社のクソ野郎どもめ,と思えば,色んなやり方で復讐を遂げる方法はあるわけです。でも,それが適法,許されたやり方,おおっぴらにできる事,だったらその方がいいと思いませんか~犯罪よりも。そそ,職務発明の件ですね。

 職務発明での対価請求もできなくなったら,さあ,鬱憤のたまり金に困った元従業員は何をやるでしょうね~♫実に楽しみですよね。罰則や罰金を重くする~?は?抑止力があるとはとても思えませんね。発想を根本から変えないと,こういう問題はどんどん起きると思いますね~。

5 追伸
 私がマスコミをバカにしているのは,ここでよく書くとおりですが,何故バカにしているかというと,クソサヨクが多いからってえのもありますが,それよりも自分の頭で考えていない馬鹿さ加減が頭にくるからです。

 例えば,この報道,いったい何が言いたいかわかりますか?
 参考のため,全文を書きます。

 雪原因の事故、半数がノーマルタイヤ…2月都内

2月に関東甲信を中心に2度にわたって降った記録的な大雪の際、東京都内で雪が原因で起きた車の人身事故のうち、タイヤの種類が判明したほぼ半数が、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンを装着していなかったことが、警視庁のまとめでわかった。

 同庁は、積雪があった2月8日~10日と、同14日~16日に都内で発生した人身事故計237件を分析。雪が原因の事故は47件を数え、車に巻き込まれた歩行者を含め、52人が負傷した。

 タイヤの種類がわかった26件のうち、8件でスタッドレスタイヤ、3件でチェーンを装着していたものの、15件はノーマルタイヤのままだった。

 
わかるよ,そんなもん。
 ノーマルタイヤで雪道を走っちゃ事故になるよ!ってことだろ~と思ったあなたは,ちょっとまずいですねえ,すぐに何でも飛びついて火傷しそうな感じです。

 だって,見出しだけを見たって,半数がノーマルタイヤってことだから半数はスタッドレスとかチェーンをしてても事故になったんだなあってえのが読み取れます,普通に注意してたら。

 案の定,中身を見ると,タイヤの種類がわかった事故26件のうち,ノーマルタイヤは15件で,57.7%,チェーン又はスタッドレスは11件で42.3%の占有率ということがわかります。母数が26件しかありませんので,差の4件もほぼバラツキの範囲でしょうね。

 とすると,この中身からも読み取れるのは,ノーマルタイヤだろうと,チェーン又はスタッドレスだろうと,ほぼ同割合で事故に巻き込まれる!ということです。

 とすると,この見出しは何なのでしょうね。「雪原因の事故,半数がチェーン又はスタッドレスを装着してても・・・」としても良いはずです。

 ところが,見出しは上記のとおり。
 つまりは,大本営が大本営の意図を持って発表しているのに~そのとおりに何ら疑いも持たず~仕事は楽な方がいいや~間違っても俺のせいじゃねえや~これでよし~としたのでしょうね。

 何だよこれっ!て思いませんかね。きちんとしたデータから出るのは,雪のときは,チェーンとかスタッドレスとかしても事故になるから出ない方がいい,ってことくらいです。

 今回のは典型例だと思いますし,いつもここまでひどくないとは思いますが,ま,マスコミはこの程度,そして,それを支える国民もこの程度,僕ちゃんと同じ~ってわけでちゅね~。
 

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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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