忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 ブログを設置して1ヶ月半で1000閲覧を越えました。
 くどい内容におつきあいいただいた方には誠にありがたい限りです。

 私の事務所のHPは,1000閲覧越えるのに,半年かかりましたから,その4倍の速度ということになります。この理由は,人は静より動を好むという当たり前の話になるとは思いますが,表題の「モノからコトへ」ということでもあります。

2 表題の「モノからコトへ」は,マーケティングの話ではありません。そんなことにあまり興味がないというのは,このブログを見てきた方にはおわかりのことだと思います(同じことなのですけどね。)。
 出典は,「はじめての現代数学」瀬山士郎著(ハヤカワ文庫)からです。
 私が,数学的なものに深く関わっていたのは,もう20年以上前の話です。企業のエンジニア時代には,それほど高度な数学は必要とされていませんでしたので,数学だけの本を読むのは久々でした(昨年読みました。)。この本は,現代数学の流れをわかりやすく解説したもので,非常に良い本だと思います。そして,その内容は,「モノからコトへ」に尽きると思います。

3 その本は,それでよいとして,何故,小括として知財の話に,「モノからコトへ」が関係あるのか,もっともな疑問です。それはこれからお話しします。

 昨年,著作権法に大きな改正がありました。そこで私も,「著作権法コンメンタール別冊平成21年改正解説」池村聡著(勁草書房)を買い,気になるところを読んだところです。それだけだったら,この本を表題として,この本の記事を書けばよいのですが,そうではないのです。

 この本を読んだ感想は,著作権法は大きな改正があっていいなあ~,おもしろそうだなあ~,というものです。他方,私が得意分野としている特許法は,H20年で仮通常実施権等,H18年でシフト補正等,H16年で職務発明規定の見直し・・・と,近時の改正はどれも弱火です。
 また,同じ知財であっても,特許と著作権とは,結構隔たりのあるもので,得意としている弁護士も違うようにも思えます。

 理系→発明者あがり→特許
 文系→創作者あがり→著作権
 さらには,
 むさいおたく→女性にもてない→特許
 お洒落格好いい→女性にもてる→著作権
というようなイメージは,偏見に充ち満ちていますが,否定できないと思います。

 しかし,このような現象は,表面に顕出してきた氷山の一角のようなものですので,特許と著作権の本性に何らかの違いがあるからこそです。何故それが問題なのか,どうして問題たりえるのかが大事だということですね。

4 では,その本性としての違いは何か。端的に言えば,IT(近時ICTとも言うらしいですね。)を保護の対象としてうまく取り込んでいるか否かの違いだと考えております。

 著作権法は,その保護の対象となる著作物について,プログラムの著作物を含んでおります。すったもんだはあったようですが,もはや随分前の話です。したがい,ITを保護の対象とすることに熟れてきていると言えます。
 他方,特許法は,どうでしょうか。現状,物の発明の「物」にプログラムも含むとされていますから,特段不備はないように見えますね。しかし,私は,これこそが,なんかー特許法ってーいまいちじゃねえの,元気がないね~というところの元凶だと思っています。

 最近のいわゆるIT企業の商売としては,クラウド化等ありますが,その本質は,既にプログラム(ソフトウェアと言い換えてもよいです。)ではないと思います。それは,何か?
 サービス(役務)ですよ。
 典型的な例を挙げると,貧弱なCPUと貧弱なメモリしかない安物の端末+ネット経由等のブロードバンドの通信(LANでも携帯回線でも)+データサーバー+コンテンツのサーバー+その他のサーバーを提供する(サーバーはレンタルもあり)というようなものでしょう。

 従前は,ハードの提供がメインだったため,このようなものを「システム」と呼んでいたと思いますが,もはやこうなると,ハードでもソフトでもシステムでもなく,「サービス」と呼ぶのが適当です。

 では,このようなサービスを特許法で保護できるでしょうか?
 特許法の保護対象は,無体物である発明ですが,発明が化体するのは具体的な「物」か「方法」のどちらかです。したがい,特許法の全ての規定が,具体的な「物」か「方法」を前提としています。
 それは何故か,「クレーム」方式だからです。

 クレーム方式の場合,構成要件に分節でき,権利化前は,特許出願に係る発明として,権利化後は,技術的範囲として,具体的な「物」か「方法」と比べることが簡単にできます。
 ところが,サービスは,「物」でも「方法」でもありません。いやいや機能的にクレームできるよとおっしゃるかもしれません。
 しかし,上記のサービスを具体的に特定するには,狭きに失し,かといって抽象的でよいとすると広すぎてつかいものにならない(無効事由も生じる),となるのではないでしょうか。
 これだけITが普及しているのにもかかわらず,ITサービスに関する特許侵害訴訟は全く聞かれません。「クレーム」方式が破綻している何よりの証拠ではないかと思います。

 特許法は,現状,ITを保護の対象とすることに失敗しているのです。もはや,誰からも諦められているから,弱火の改正しかできない,具体的な「物」か「方法」の侵害訴訟での低とまり,全体としての元気の無さ,につながっているのです。

 したがい,特許法の体制(具体的表現より広い,技術的思想を保護する)にITサービスを取り込むには,特許法をクレーム方式との二重構造とするか,種苗法のように別立てするか,どちらかだと思います。もちろん,特許法を諦めたままにするというのも一つの方策ですが,著作権法での保護は,結局デッドコピーからの保護がメインですので,広い範囲を物権的に保護できる特許法を捨てるには惜しいところです。

5 それ自体無体で無形のサービスを特許法上どう保護するかというのは,難しいところです(後述の商標法の2条3項3号以下をはるかに越える工夫が必要でしょう。)。現状私にもこれぞ,という案はありません。

 ビジネスモデル特許は,まさにそれが問題となったものと言えますが,保護の必要性が低すぎて,今では一発屋の扱いです。そのときにきちんと議論していれば良かったのかもしれませんが,まだまだ遅くはないと思います。今では当たり前になった,商標法のサービスマークも,平成3年改正により導入されたに過ぎませんし(驚くべきことにまだ20年経っていないのです。)。
 問題点の提起のみでしたが,サービスを特許法の枠組みでどう保護するか,特許法の命脈はこれによって決まると言っても過言ではなく,これを強調して今回は終わりたいと思います。

 さてさて,最後になりましたが,以上のとおり,具体的な「物」か「方法」→「サービス」に移行するのが,知財でもトレンドであり,表題の「モノからコトへ」はこのような意味だったのでした。
PR
45  44  43  42  41  40  39  38  37  36  35 
カレンダー
07 2017/08 09
S M T W T F S
3 4 5
11
13 15 19
20 23 24 25 26
27 28 29 30 31
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]