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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,被告人が,ファイル共有ソフトであるWinnyを開発し,その改良を繰り返しながら順次ウェブサイト上で公開し,インターネットを通じて不特定多数の者に提供していたところ,正犯者2名が,これを利用して著作物であるゲームソフト等の情報をインターネット利用者に対し自動公衆送信し得る状態にして,著作権者の有する著作物の公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害する著作権法違反の犯行を行ったことから,正犯者らの各犯行に先立つ被告人によるWinnyの最新版の公開,提供行為が正犯者らの著作権法違反罪の幇助犯に当たるとして起訴された事案です。

 有名な事件ですよね。でも漸く最高裁かという気がします。

 ちなみに一審は,京都地裁平成18年12月13日判決で,罰金150万円の有罪でした。
 この判決で,主観的態様については,
被告人が前記「Winny2WebSite」上で,違法なファイルのやりとりをしないような注意書きを付記していたこと及び無視フィルタ機構があることを考慮しても,被告人は,Winnyが一般の人に広がることを重視し,ファイル共有ソフトが,インターネット上において,著作権を侵害する態様で広く利用されている現状をインターネットや雑誌等を介して十分認識しながらこれを認容し,そうした利用が広がることで既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルが生まれることも期待しつつ,ファイル共有ソフトであるWinnyを開発,公開しており,これを公然と行えることでもないとの意識も有していたと認められる。
 そして,Winny2がP2P型大規模BBSの実現を目的としたものであり,Winny1との互換性がないものであるとしても,Winny2にほぼ同等のファイル共有機能が備えられていることや,上記の「Winnyの将来展望について」が平成15年10月10日付けのものであることなどからすれば,本件で問題とされている同年9月ころにおいても,同様の認識をしてこれを認容し,Winny2の開発,公開を行っていたと認められる。
 ただし,Winnyによって著作権侵害がインターネット上にまん延すること自体を積極的に企図したとまでは認められない。
というように,故意ありとしています。
 
 そして,二審が,大阪高裁平成21年10月8日判決で,ここで,無罪になりました。ただ,裁判所のHPにも私のデータベースにも,この判決がないのですね。ですので,正確なところがわかりません。

 論点は,ただ一つ,幇助の故意の有無ですね。

2 問題点
 今回,著作権法が問題となってはおりますが,刑事事件ですので,その辺の説明から行きましょうか。

 幇助犯というのは,刑法62条1項で,「正犯を幇助した者は、従犯とする。」とあるものです。シンプルでいいですね~。
 バカどもに改正させると,こういうのも,A4換算で2枚くらいの長さの条文になるのでしょうかね。ああバカにはなりたくないもんだ,ホホホ。

 そして,この幇助というのは,実行行為以外で正犯の実行行為を容易ならしめることを意味すると言われております。ただ,そうすると,風が吹けば桶屋が儲かるではないですが,それこそ,無限定に広がりやすくなります。
 他方,あまりに,実行行為を厳しくみると,それって,もはや正犯じゃねえの,というやつまで従犯になってしまいます(従犯になると,刑法63条で,減軽されてしまいます。例えば,普通の懲役だと半分になってしまうのですね(刑法68条3号)。)。
 ですので,典型的な幇助と言えるような見張り役も,殺人,強盗,窃盗だと,共同正犯になるのが普通で,幇助になるのは,賭博の見張り役くらいなものです。

 このような感じですから,外からわからない,主観的態様(故意)については更にわかりにくいところがあります。
 例えば,有名な事件で,ホテトルの冊子を印刷した印刷業者が,売春周旋の幇助にあたるか問われた事例がありました(東京高裁平成2年12月10日判決)。これは結果として,故意も認めて,幇助とされました。何だか今回の事例とそこそこ似ていますね。
 このような非類型的なものでも,実行行為を容易ならしめ,そのことを認識・認容していれば,幇助とされることもあるわけです。

 さて,本件では,一審が,著作権侵害の可能性・蓋然性の認識・認容で足りるとしたのに対し,二審は,それだけでは不足で,それに加えて,「ソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」でないと幇助不成立としました(ただ,客観的態様が主観的態様に入り込んでしまっている感がありますね。)。

 ということで,最高裁はどう判断したのでしょうね。

3 判旨
「原判決は,インターネット上における不特定多数者に対する価値中立ソフトの提供という本件行為の特殊性に着目し,「ソフトを違法行為の用途のみに又はこれを主要な用途として使用させるようにインターネット上で勧めてソフトを提供する場合」に限って幇助犯が成立すると解するが,当該ソフトの性質(違法行為に使用される可能性の高さ)や客観的利用状況のいかんを問わず,提供者において外部的に違法使用を勧めて提供するという場合のみに限定することに十分な根拠があるとは認め難く,刑法62条の解釈を誤ったものであるといわざるを得ない。
(2) もっとも,Winnyは,1,2審判決が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソフトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソフトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソフトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合や,当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。」

4 検討
 結局のところ,最高裁は,二審は主観と客観が混合し,味噌もクソも一緖なので,これはダメ,しかし,一審のような故意だと,ちょっと広すぎるということで,故意の中身の,認識・認容の対象をかなり限定した,というところではないでしょうか。
 ただ,事実認定を見るとわかるのですが,結構ギリギリって感じですね。また,大谷裁判官の反対意見があるのですが,説得力バリバリあります。多数意見は結論前提のもので,反対意見は論理貫くもの,という感想です。

 ところで,また蛇足なのですが,私の修習時代の刑裁教官は,特許侵害罪を扱ったことがあるらしく,明細書ってわかりにくい,ほんで弁理士も呼んだとか,当時の話をしてくれました。その中で一番気になったのは,有罪にしたら,被告人が控訴して,その間に特許が無効になって,チャンチャンになったというクダリでした。
 
 私は,今でこそ現大阪市長である橋下さんを応援しておりますが,その昔は,何だコイツと,今でもアンチ橋下の多くが持つのと同じような感情を持っておりました。しかし,あるときをキッカケにそれは変わりました。

 当時,出演していたサンデー・ジャポンの中ですが,CDか何かの海賊版の話になり,一緖に出ていたタレント高田万由子から,旦那(葉加瀬太郎)のCDもウンたらカンたらという発言があるやいなや,橋下ちゃんが,そんなもん,CDを出すからそうなるんで,ライブだけやってりゃいいんだという趣旨の発言がありました(まあ結構昔なので,うろ覚え)。
 高田万由子は,これに,何を言っているの,あなた,みたいな反論をしていたと思いますが,いやいや感心しましたね。

 橋下ちゃんは,著作権を専門にはやっていなかったとは思うのですが,実によくわかっていますよ。下手に知識があると著作権法30条2項の話などやりかねませんが,結局,アメリカでコピーライトと言うように,全く同じモノ(内容)にもかかわらず(特にデジタル時代),良いコピーと悪いコピーがある,というのが本質ですよ。
 良いコピーを拡大再生産したいというのは,私のような金権弁護士にはよくわかりますが,基本単なる金儲けの発想ですわな。

 文化のためだとか何チャラとか,下らない御為ごかしなんかせず,生演奏ばっかだとダルいし,楽して金儲けしたいっすよ~,はあーっって言えばいいと思いますけどね。そうしたら,権利者側を少しは応援する気にもなるってことです(別に,本件の判決日の翌日に発表があった,自炊代行業者を訴えるという話への当てこすりではありませんからね,念のため。ここはマジ。)。

 蛇足っぽいエピソード2つは,今回の判決を含め,私の考える知財というものの本質について,ですね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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