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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,原告であるグリー㈱,が,被告である㈱ディー・エヌ・エーらに対し,被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣りゲータウン2」(被告作品)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(原告作品)と,魚を引き寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する,などと主張して,著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消などと,不法行為に基づく損害賠償として金9億4020万円等を求めた事案です。

 何だか日が経って,出涸らし感は否めませんが,例の釣りゲームのグリー対ディー・エヌ・エーの訴訟の判決です。ようやくのアップだと思います。今日現在でもいくつか報道も残っていましたので,マスコミでのまとめから見たい人はこちらへ。

 さて,東京地裁47部(阿部さんの合議体です。)は,差止めと損害賠償金2億3460万円を認めました。ですので話題になったわけです。

 ポイントは色々あると思うのですが,ゲームの影像等(こういう字を使います。)が著作物としても,デッドコピーじゃないときに,どのくらいまで許せるか,ということに尽きるのではないでしょうか。

2 問題点
 本件では争っておりませんが,まず,この原告作品が著作物なのかという話はあります。
 ゲームソフトは従来原則として著作物だということにはなっております(パックマン事件がこの最初ですかね。)。更に,これが映画の著作物に当たるかどうかということで,大問題になったこともありますが,本件ではこれは関係ない話です。
 例の著作で,高部さんも,「ゲームソフトは,プログラムの側面でも影像の側面でも著作物性を有する」(「実務詳説 著作権訴訟」 きんざいp320)と書いてありますから,まあここはいいのでしょうね。

 つぎに本題です。まあ何の著作物かは知らないが,その著作物性はあるとして,海賊版でないデッドコピー品でない,ゲームについて,その影像が似ていた場合,どういうときに翻案権などの侵害になるのかということです(複製権は無理。あとソースコードの複製権でも無理だったのでしょうね。)。

 この問題点は今まであまり無かったと思います。勿論,ゲームソフトの著作権が問題になったことはありますし,翻案権が問題になったことはあります。でも,ゲームソフトの影像の翻案権が問題になったことって,私の知る限り,無いでしょうねえ。だってあまりに曖昧過ぎますから。
 中山先生も「原著作物に依拠し,かつ原著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる場合は,二次的著作物となり,感得できない場合は別個の著作物となると説明されているが,現実に翻案であるか否かの判断は難しく,著作物のジャンル,あるいは具体的事例によっても異なるものであろう。」と書かれております(「著作権法」 有斐閣 p128。 なお,江刺追分事件は,こちら。)。

 ということは,裁判官の胸先三寸次第ということになるのですが,そうすると,予見可能性ねえー!ってことにもなりますね。

3 判旨
「(2)原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面とを対比すると,両者は,① 水面及びその上の様子は画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向の視点で描かれている点,② 水中の画像には,中心からほぼ等間隔である三重の同心円が描かれ,同心円の中心が画面のほぼ中央に位置し,最も外側の円の大きさは,水中の画像の約半分を占める点,③ 水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に薄暗い青で,水底の左右両端付近に,上記同心円に沿うような形で岩陰が描かれ,水草,他の生物,気泡等は描かれていない点,④水中の画像には,一匹の黒色の魚影が描かれており,魚の口から画像上部に向かって黒い直線の糸(釣り糸)が伸びている点,⑤ 釣り針にかかった魚影は,頻繁に向きを変えながら水中全体を動き回り,その際,背景画像は静止しており(ただし,被告作品では,同心円の大きさや配色,中心の円の画像が変化する。),ユーザーの視点は固定されている点,⑥ 上記同心円中の一定の位置に魚影がある場合にユーザーが決定キーを押すと,魚を引き寄せやすくなっている点,などにおいて共通することが認められる。また,証拠(甲3)によれば,原告作品以前に公表された携帯電話機用釣りゲームにおいて,上記共通点をいずれも備えるゲームは存在しなかったことが認められる。
(3) 他方,原告作品と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,①被告作品では,同心円が表示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する点,②同心円の配色,③魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係,④魚影が動き回っている間,被告作品では,同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化する点,⑤同心円のどの位置に魚影がある際に決定キーを押すと魚を引き寄せやすくなっているのかという点,⑥被告作品では,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され,その後の表示も異なってくる点,などにおいて相違することが認められる。
(4) 携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面は,釣り針に掛かった魚をユーザーが釣り糸を巻くなどの操作をして引き寄せる過程を,影像的に表現した部分であり,この画面の描き方については,①水面より上や水面,水面下のうちどの部分を,どのような視点から描くか,②仮に,水面下のみを描くこととした場合,魚の姿や魚の背景をどのように描くか,③魚が釣り針に掛かった時から,魚が釣り上げられる又は魚に逃げられるまでの間,魚にどのような動きをさせ,どのような場合に魚を引き寄せやすいようにするか(ユーザーが釣り糸を巻くタイミングをどのように表現するか)などの点において,様々な選択肢が考えられる。原告作品は,この魚の引き寄せ画面について,上記(2)ア(エ)のような具体的表現を採用したものであり,特に,水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表した点は,原告作品以前に配信された他の釣りゲームには全くみられなかったものであり(甲3),この点に原告作品の製作者の個性が強く表れているものと認められる。
 他方,被告作品の魚の引き寄せ画面は,上記のとおり原告作品との相違点を有するものの,原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴といえる,「水面上を捨象して,水中のみを真横から水平方向の視点で描いている点」,「水中の中央に,三重の同心円を大きく描いている点」,「水中の魚を黒い魚影で表示し,魚影が水中全体を動き回るようにし,水中の背景は全体に薄暗い青系統の色で統一し,水底と岩陰のみを配置した点」,「魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の一定の位置に来たときに決定キーを押すと魚を引き寄せやすくするようにした点」についての同一性は,被告作品の中に維持されている。
 したがって,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面との同一性を維持しながら,同心円の配色や,魚影が同心円上のどの位置にある時に魚を引き寄せやすくするかという点等に変更を加えて,新たに被告作品の製作者の思想又は感情を創作的に表現したものであり,これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものと認められる。また,これらの事実に加えて,被告作品の製作された時期は原告作品の製作された時期の約2年後であること,被告らは被告作品を製作する際に原告作品の存在及びその内容を知っていたこと(甲1の1,2)を考慮すると,被告作品の魚の引き寄せ画面は,原告作品の魚の引き寄せ画面に依拠して作成されたものといえ,原告作品の魚の引き寄せ画面を翻案したものであると認められる。」

4 検討
 本件のような系統のゲームソフトにおいては,魚の引き寄せ画面がポイントで,原告作品には従来なかった創作性のある部分があり,これが「水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表した点」だったわけです。
 他方,被告作品も基本この部分は同じ表現だったため,翻案権侵害としたようですね。

 いやあでもこれは本当微妙です。そう言われればそうかもしれませんが,まさにこれはアイデア(同じ無体の情報と言っても,アイデアを保護するのは特許権です。)で,著作権法では保護できない,また保護しちゃいけないものなんじゃないのかなあっていう気がしてきます。

 しかも,本件は携帯電話用のゲームの話なので,具体的表現も簡単なものですし(PC用や専用機器用のゲームソフトのように,凝った意匠や細工ができず,なるべく容量を小さくするために,単純な表現にならざるを得ない。),創作性の幅はそもそも小さいと考えられます。

 そうですから,これは,上級審でひっくり返される可能性は大ありですね。

 なお,個人的には,今後非常に参考になるものでしたね。

5 蛇足
 昨日,日弁連の会長選の上位2名による決選再投票が行われたのですが,これでも決まりませんでした(最大得票数だった山岸さんが18会を制すことができなかった。)。ですので,選挙自体最初からやり直しになります。

 本日の日経紙の社会面には解説まで入った記事が出ておりました。いやあ笑いますね。自分のトップすらまともに決めることもできないくせに,人権だとか,死刑だとか,原発だとかに口を挟んでいるのですからね。
 そういうことは,幼稚な団体には荷が重いことですから,金輪際,偽善的言動を慎むべきでしょうね。


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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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