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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
  本件は,全日本女子プロレス興業株式会社(全女)に対して前払金返還請求権を有する債権者である原告が,全女との間の放送契約に基づき,全女が主催した女子プロレス興行を中継するテレビ番組を制作し,これを地上波で放送した被告株式会社フジテレビジョン(被告フジテレビ)及び上記番組を収録した映像素材(録画物)を編集して通信衛星デジタル放送(CS放送)をした被告株式会社スカパー・ブロードキャスティング(被告スカパー)に対し,①全女は被告フジテレビとの間の放送契約において上記女子プロレス興行を地上波で放送することを許諾したが,CS放送することについては許諾していない,②女子プロレス興行は女子レスラーによる実演(著作権法2条1項3号)に当たり,全女は実演家である女子レスラーから実演家の放送権(著作権法92条1項)及び報酬請求権の包括的譲渡を受けていたところ,被告スカパーによる上記番組のCS放送は,実演を地上波で放送することの許諾を得た被告フジテレビから録画物の提供を受けてする放送(著作権法94条1項2号)に当たるから,当該実演がCS放送されたことに基づいて実演家の被告フジテレビに対する著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求権が発生し,これが全女に帰属するなどと主張し,民法423条1項の債権者代位権に基づき,全女に代位して,被告らに対し,女子レスラーの実演がCS放送されたことに基づく著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求(被告スカパーに対しては被告フジテレビの報酬支払債務の併存的債務引受に基づく。)又は全女が有する女子プロレス興行の興行権の内容を構成する「放送許諾権」侵害の共同不法行為による損害賠償(被告フジテレビにおいては放送契約の債務不履行に基づく損害賠償を含む。)として160万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案の控訴審です。

  中身も珍しいですが,法的構成も珍しい,債権者代位権です。
  原告→全女(無資力)→スカパーないしフジテレビ,という構成のようです。

  一審では,原告の請求が棄却され,この2審でも同様です。
  要するに,全女→スカパー(なお,2審ではフジテレビに対する請求はありません。)に対する債権が立たないということですね。

2 問題点
  債権者代位権はよいとして,実質的な中身である全女→スカパーの債権がどうか?ということになると思います。
  端的に言えば,フジテレビで放送した全女のプロレスの過去の素材をスカパーのサムライTVで放送したのが,無許諾なものか否かということになります。

3 判旨
「控訴人は,Bの証言は,同証人が全女の幹部社員であり,現在も業務上の関係を有する被控訴人を擁護することに徹しており,信用性に欠けるなどとと主張する。
しかし,前記のとおり,サムライTV(平成20年10月1日以降は,サムライTVを吸収合併した被控訴人)は,本件各映像素材を含む前記映像素材を利用したプロレス番組を平成15年4月から現在に至るまで,番組名を変えながらも断続的に放送しているところ,これらの放送に関して,全女からサムライTV又は被控訴人に対して何らかの異議が述べられるなどしたという経過は証拠上うかがわれない。特に,全女がその興行活動を停止する平成17年4月17日以前に,全女の意向を無視して上記映像素材を利用した女子プロレス番組が放送されていたとすれば,全女とサムライTVとの間で,当該放送の是非に関する何らかのやり取りがされてしかるべきところ,そのようなことがあった形跡は証拠上何らうかがわれない。このことは,そもそも全女からサムライTVへのあらかじめの放送許諾があったことをうかがわせるものであり,本件合意成立に関する証人Bの供述を客観的に裏付ける事情ということができる。Bの証言は信用できないとの控訴人の上記主張は採用することができない。」

「控訴人は,新日及び全日の再放送権料が有料であるにもかかわらず,全女のみ無償というのは不合理であるとも主張する。
しかし,過去のプロレス興行に関し,各興行団体とどのような内容の契約を締結するか(有償無償の別,有償の場合の具体的な金額,放送態様,契約期間等)は,それぞれの映像素材の価値,各興行団体を取り巻く環境,他の映像素材との抱き合わせあるいは取引の継続性など取引状況等の個別具体的な事情により異なると解される。そして,原判決25頁で評価したような平成14年当時に全女が置かれていた状況からすれば,全女が過去のプロレス興行に関する映像素材を無償で利用することを許諾することが不自然でないことは前記のとおりである。」

4 検討
  一審同様2審もスカパーと全女の間の過去映像に対する合意はあったとしたのですね。

  さてさて,ここ以降,興味のない人には,全く??ですので,今日の記事はここまでで結構です。

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  判旨を読んでいて,切なくなる話でした。

  というのは,私は格闘技好きなのですが,そもそもプロレス好きから移行してきたものです。当然,全女も見てました。
 一番よく見ていたのは,クラッシュギャルズではなく,アジャとブルの金網デスマッチのとんでもない抗争や北斗(今のバラエティでの料理上手のイメージとは違います。私のベスト女子レスラーはこの北斗ですね。)と神取の一線を越えた抗争の頃ですね(93年くらいでしょうか。)。まあこのときの刺激が強すぎたせいか,これ以降女子プロ全体がダメになってしまったのは,残念でした。
  ともかく,新日よりも全日よりも古い最古のプロレス団体である全女も急速に勢いをなくし,あっさり潰れてしまいました。一族経営で,相当にタフなはずだったのですが,色々あったのでしょう。

  男子のプロレスも今や昔ほどの勢いはありません。女子プロレスが最後に盛り上がっていたころの,93年は,ガチンコ元年と言われております。UFC,K-1,パンクラスが始まったのが,93年なのです。
 それまで,つまんないと思われていたガチンコ(そりゃそうです。おもしろけりゃ,柔道のテレビ中継がもっとあってもよいはずですからね。)で,ルールや興行形態次第で,結構客が呼べるということがわかり,それじゃあということで,私のような左派プロレスファンはガチンコの方へ流れてしまったからです。
 その後prideやhero'sなどの大イベントがガチンコの興行でやれるようになり,益々プロレスは下火になっていったわけです。

テレビ局はいいですよね。全女の人気が落ちれば全女を切り(これが全女のつぶれた一番の原因でしょう。),prideも何かよくわからない理由で切ればよいのですから(これもprideがつぶれた一番の原因でしょう。)。

  ただやっている方はたまったものではないですね。
  そうそう,私が昔いたソニーもスカパーに出資しておりましたので,スカパーのチューナーセットが社内価格で安く売っておりました。
 上にも出てきたサムライTVを見るためにそれを買い,スカパーとの契約もしていたのですが,prideのいざこざがあったときに全部解約しました。

  昨今プロレス関係者の訃報がよくありますが,昔の名優ではなく,現役選手のものも結構ありますので,これまた切ない感があります。昔は客が入ってましたから,営業活動などに割く時間が少なくでき,練習に時間を費やすことができたのでしょうが,今は違うようですね。そのようなネガティブスパイラルに入りますと,なかなか抜け出せないものです。

  世に流行廃りはありますので,プロレスも最終段階に来たということなのでしょうね。
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