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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 概要
 本件は,第一審原告であるグリー㈱,が,第一審被告である㈱ディー・エヌ・エーらに対し,被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト 「釣りゲータウン2」(被告作品)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(原告作品)と,魚を引き 寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択 及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権 (同一性保持権)を侵害する,などと主張して,著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消などと,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審です。

 第一審では,「上記(2)ア(エ)のような具体的表現を採用したものであり,特に,水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体 を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表した点は,原告作品以前に配信された 他の釣りゲームには全くみられなかったものであり」と,被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係るグリーの著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして,グリーの勝訴でした。

 ところが,本控訴審では,知財高裁4部(高部さんの合議体です。)は,「第1審原告の請求はいずれも理由がなく,これを全部棄却すべきものである。これを一部認容した原判決は一部失当であり,第1審被告らの控訴は理由があるから,原判決中第1審被告ら敗訴部分を取り消した上,同部分に係る第1審原告の請求を棄却することとし,また,第1審原告の控訴及び当審における請求の拡張部分は理由がないから,これを棄却することとして」と,要するに,第一審原告グリーの逆転全面敗訴としたわけです。

 判決は先週でしたので,報道も先週でした。報道から見たい方は,こちらなどが残っています。出張と夏休みがありましたので,若干遅れてこの時期になってしまいました。でもポイントはわかりますね。
 一審のときにもこのブログで書きましたが,どうやらそのとおりになった模様です。

2 問題点
 問題点は,基本1つだと思います。デッドコピーじゃない,翻案の場合,具体的に翻案権侵害となるのはどういう場合?ってやつです。

 そして,その規範は,江差追分事件(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)で,「【要旨1】 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),【要旨2】既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。」です。

 ただし,具体的にどうか,というのは非常に難しいと思います。この江差追分事件でも原審の侵害認定を取り消して,非侵害としております。

 特に本件のような,ゲーム(しかも容量の小さい携帯電話用ゲーム)の画面で,表現上の本質的な特徴を直接感得できるような場合って非常に限られると思います。ですので,一審が出たとき,私は,上級審でひっくり返される可能性は大あり,と書きましたが,それは変わっておりません。
 実質的にもこの程度で著作権侵害となるなら,創作に冷や水を浴びせることにもなりますしね。
 しかも,著作権に関しては,一家言も二家言も持っている高部さんの合議体に係属したからには,うーん,結果も予想できますね。

3 判旨
「イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。
 また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表現において,相違する。
しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。
 さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。
 そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。
 以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。」

4 検討
 共通する部分はあるけれど,それは,ありふれた表現やアイデアに過ぎず,細々見ていくと違うところは多く,印象は違うよね~ってところじゃないでしょうか。

 まあ高部さんが,自身の著作(「実務詳説 著作権訴訟」の第4章は,ほぼこの論点ばかりです。恐らく,得意の論点の事件の配点があり,キャー嬉しい,これでまた論文が書ける~うって所じゃないでしょうか。)や論文で書いている,まさにそのとおりの判決ですね。
 ですので,原告の代理人としては,知財高裁4部係属?!もしかして・・と思ったと思いますね。そう思わなきゃ弁護過誤的とも言える程のものです。

 結論としても,理由としても,このとおりでよろしいのではないでしょうか。久々,特段文句のつけようのない判決でしたね。
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理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
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