忍者ブログ
知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護士の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 いわゆるまねきTV事件で,最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は、双方から意見を聞く弁論を12月14日に開くことを決めた,そうです。

 サービス業者さんは,「この種のサービスとしては唯一、合法と判断が下されているサービスです。」と銘打っていたのにかかわらず,違法?となるのかもしれません。

 ただ,いわゆるロクラク事件については,知財高裁で,逆転勝訴(非侵害)の判決が出ておりますから,まねきTV事件で侵害となったとしても,全敗ということにはいまだならないとは思います。しかし,この類のサービスは,根絶やしになりそうですね。

 上記のとおり,いろいろ同種の事件がありました。大凡の時系列でまとめてみたいと思います。

 あ,そうそう,論点は,「私的複製」(著作権法30条1項)として,複製権(同法21条)等の侵害とならないか,結局主体は誰なのか?主体と評価できなければどうするか?という話です。

2 選撮見録事件
「よりどりみどり」と読むそうです。
(1)サービスの概要
 マンションなどの集合住宅向けに,管理人室などにハードディスク内蔵でサーバー機能のあるテレビ番組録画機を置きます。そして,その録画機が,テレビ番組を1週間程度の単位で録画します。そして,個々の居住者からのリクエストに応じて,その録画内容を配信するというシステムです。
 ちなみに,訴えられたのは,マンションの管理人ではなく,この録画機の販売業者ですね。

(2)判決など
ア 大阪地裁H17.10.24,H17(ワ)488号 侵害
侵害行為の差止め請求との関係では、被告商品の販売行為を直接の侵害行為と同視し、その行為者を「著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」と同視することができるから、著作権法112条1項を類推して、その者に対し、その行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。
 要するに,直接の主体ではなく,幇助者ではあるのだが,幇助行為にも112条1項を類推適用して,差止め可能,ということです。

イ 大阪高裁H19.6.14,H17(ネ)3528号 侵害
現実の複製,公衆送信・送信可能化行為をしない者であっても,その過程を管理・支配し,かつ,これによって利益を受けている等の場合には,その者も,複製行為,公衆送信・送信可能化行為を直接に行う者と同視することができ,その結果,複製行為,公衆送信・送信可能化行為の主体と評価し得るものと解される。
 今度は,原審とは異なり,直接の主体だよ,としたのです。いわゆるカラオケ法理ですな。

3 録画ネット事件
(1)サービスの概要
 これは海外在住の方向けに,日本でテレビ番組を録画しておいて,ネットで配信するというものです。
 システムは,テレビチューナーのついたパソコンを顧客の数だけ事業者の元に用意し(専用ソフトあり。),あとは,顧客がネット経由で予約や視聴をするというタイプになります。

(2)判決など
ア 東京地裁決定H16.10.7,平成16年(ヨ)第22093号 侵害
本件において、著作物の複製の主体を評価、認定するに当たっては、これらを前提として、上記の具体的事実を検討し、本件サービスにおける複製にかかる債務者の管理・支配の程度と利用者の管理・支配の程度などを比較衡量した上で、複製行為の主体を認定すべきである。 」「以上のとおり、本件サービスにおける複製は、債務者の強い管理・支配下において行われており、利用者が管理・支配する程度は極めて弱いものである。
 要するに,主体は,事業者になるので,録画してはならん,とされたのです。

イ 東京地裁決定H17.5.31,平成16年(モ)第15793号 侵害
これは,アの決定の取消しを求めた仮処分異議申立事件です。
本件放送の複製行為は、利用者と債務者が共同して行っているものと認めるべきであり、本件サービスにおける利用者の行為をもって、「その使用する者が複製する」(著作権法102条1項、30条1項柱書)との要件を満たすものと認めることはできない。
 要するに,主体は,事業者と顧客の共同となるけれども,だからと言ってOKとはならない,とされたわけです。

ウ 知財高裁決定H17.11.15,平成17年(ラ)第10007号 侵害
これは,上記の抗告審です。
上記各事情を総合すれば、抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を行っているものというべきであり、
 要するに,これも主体は,事業者だとしたわけです。

 なお,この事件に関しては,本案はないようですね。仮処分で,事業者はあっさりギブアップしてしまったということですね。

4 ロクラク事件
(1)サービスの概要
 これも,海外在住の方向けに,日本でテレビ番組を録画しておいて,ネットで配信するというものです。
 システムは,テレビチューナーつきのHDDレコーダー(専用品)親機を顧客の数だけ事業者の元に用意し,あとは,顧客の元にも,同様のHDDレコーダー(専用品)子機を置き,事業者のサーバーを介し(ただし,親機と子機の1対1対応はあり。),ネット経由で視聴や操作をするというタイプになります。

(2)判決など
ア 東京地裁決定H19.3.30,平成18年(ヨ)第22046号 侵害
 まずは,仮処分からですね。
 決定は,カラオケ法理で判断する旨を判示したあと,「債務者が、本件サービスにおいて、大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを管理している場合は、別紙サービス目録記載の内容のサービス、すなわち、本件 対象サービスを提供しているものということができ、この場合、債務者が、本件著作物及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を管理し、それによる利益を得 ていると認められる。 」と判示しました。
 要するに,管理要件も利益要件も満たすので,事業者が主体だ,とされたのですね。

イ 東京地裁H20.5.28,平成19年(ワ)第17279号 侵害
 舞台は,本案訴訟に移りました。
 判決は,やはり,カラオケ法理で判断する旨を判示したあと,「すなわち、本件対象サービスを提供しているものということができ、本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を管理支配していると認めることができるとともに、それによる利益を得ているものと認められる」と判示しました。
 要するに,仮処分の決定と同じというわけですね。

ウ 知財高裁H21.1.27,平成20年(ネ)第10055号 非侵害
そうすると、控訴人が親機ロクラクとその付属機器類を一体として設置・管理することは、結局、控訴人が、本件サービスにより利用者に提供すべき親機ロクラ クの機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境、条件等を、主として技術的・経済的理由により、利用者自身に代わって整備するものにすぎず、そ のことをもって、控訴人が本件複製を実質的に管理・支配しているものとみることはできない。
以上からすると、控訴人が上記〈1〉ないし〈3〉の各金員を受領しているとの事実をもって、控訴人が本件複製ないしそれにより作成された複製情報の対価を得ているものということはできない。
そして、利用者が親子ロクラクを設置・管理し、これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し、これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行 為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり、かかる適法行為を基本的な視点としながら、被控訴人らの前記主張を検討してきた結果、 前記認定判断のとおり、本件サービスにおける録画行為の実施主体は、利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず、控訴人が提供する本件 サービスは、利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件等を提供しているにすぎないものというべきである。

 要するに,管理要件も利益要件も満たさない,という原審とは全く逆の判断をしたということになります。
 判決が出た当時,かなりの話題となりました。私の使っているデータベースでは上訴したかどうかわかりません。おそらく上訴しているのだと思いますが。

5 まねきTV事件
ようやく本件です。
(1)サービスの概要
 これも,主として海外在住の方向けに,日本からのテレビ番組を,ネットで配信するというものです。ただ,以下のように若干システムが上記までの例と異なります。
 システムは,ソニーの汎用品である「ロケーションフリー」を使うものです。このベースステーションを顧客の数だけ事業者の元に用意し,あとは,顧客の方ではインターネットに接続できる機器(パソコンなど)を用意し,インターネットを介して送られてくるテレビ番組を視聴するということになります。ですので,事業者の元では,録画等はしないのですね。

(2)判決など
ア 東京地裁決定H18.8.4,平成18年(ヨ)第22022号 非侵害
まずは,仮処分からです。
利用者による放送の視聴を管理することはしていないことに照らせば、債務者は、物理的にみても、実質的にみても、送信可能化行為の主体とはいい難い。
利用者がソニー製のロケーションフリーテレビのNetAV機能を利用することが債権者の送信可能化権を侵害するものでない以上、ベースステーションの寄託 を受け、これを設置保管してその利用を容易にしているにすぎない債務者の行為をもって、送信可能化権の侵害と評価することは困難である。
 要するに,債務者のこの程度の関与では,主体とすることはできない,ということですね。

イ 知財高裁決定H18.12.22,平成18年(ラ)第10012号など 非侵害
なお,ここから債権者(原告)は,著作権の公衆送信権侵害の主張もしておりますが,メインは,著作隣接権の送信可能化権ですので,そこだけ。
ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能のみを有するものであって、「自動公衆送信装置」に該当するものではないから、被抗告人がベースステー ションにアンテナを接続したり、ベースステーションをインターネット回線に接続したりしても、その行為が送信可能化行為に該当しないことは明らかである。
要するに,原決定と同様ということですね。

ウ 東京地裁H20.6.20 平成19年(ワ)第5765号 非侵害
これも舞台は本案訴訟に移ります。
要するに、本件サービスにおいて、本件放送をベースステーションにおいて受信し、ベースステーションから各利用者の専用モニター又はパソコンに向けて送信している主体は、各利用者であるというべきであって、被告であるとは認められない。
要するに,これも原決定と同様ということですね。

エ 知財高裁H20.12.15,平成20年(ネ)第10059号 非侵害
本件サービスにおいて、被控訴人が本件放送の送信可能化行為を行っているということはできない。
やはり,これも原決定と同様ですね。

オ 最高裁H23?? 侵害?
本件がここになります。どんな結果が来ますやら~。

PR
147  146  145  144  143  142  141  140  139  138  137 
カレンダー
05 2017/06 07
S M T W T F S
1 3
4 5 6 10
11 16 17
19 20 23 24
25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
iwanagalaw
HP:
性別:
男性
職業:
弁護士
趣味:
サーフィン&スノーボード
自己紹介:
理論物理学者を志望したのはもう30年近く前のこと。某メーカーエンジニアを経て,弁理士に。今は,弁護士です。
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Admin / Write
忍者ブログ [PR]