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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 夕刊には間に合わなかったようですが,本日の夕方前,結構な勢いで,知財系,企業法務系ではこの話題でもちきりだったのではないでしょうか。

 まあ判決のアップが全くないので,あーだこーだ言ってもしょうがないのですが,問題点を指摘しておきましょう。

 基本は,JASRACと同業他社のイーライセンスとの間のいざこざです。
 JASRACは,テレビラジオの放送のため,一定金額さえ払えば,基本どの曲でも何回でも追加料金なしという包括徴収方式を取っているのですね。これが審決でいう本件包括徴収です(「包括徴収は,当該年度の前年度の放送事業収入に一定率を乗ずる等の方法で放送等使用料の額を算定するものであって,いずれも,放送等使用料の算定に当たり放送等利用割合(放送事業者が放送番組において利用した音楽著作物の総数に占める被審人の管理楽曲の割合をいう。)を反映させていない。」)。

 こうすると,テレビ・ラジオの放送局が,イーライセンスのような他社の楽曲を使いたいなあという場合はどうなるでしょう??
 直感的に考えると,その分の追加の料金をイーライセンスに払わないといけなくなりそうです。そうすると,テレビラジオの放送局としては,えー追加の料金払わないといけないの~嫌だなあ,おたくのレコード会社も新興のイーライセンスなんか使わないで,JASRACと契約していれば,追加の料金払わないで済むのに~♫と思ってしまうのも自然ですよね。
 そうすると,レコード会社等としても,そうか~,イーライセンスって契約条件がいいからと思って契約したんだけど,そう言われるとそうかな~,ってなり,じゃあやっぱJASRACにしよう,と思いますよね。

 もし,仮に,上記のとおりだとすると,JASRACのこの包括徴収方式のせいで,同業他社は実質的に参入できなくなってしまいます。とんでもねえこっちゃ,排除型の私的独占(独禁法3条)!ここに極まれり,まさに下衆の極み~♡かな。

 実は,この論理が,今回の判決の前の審決の,さらにその前の審査官による排除措置命令に使われたものだったのです。

2 じゃあ,審決はというと,審決は,この排除措置命令を取り消したので,この論理ではないのです。

 よく上記の論理を見てください。上記のは,JASRACの包括徴収によって,同業他社の利用が回避されたのだ,とするのですから,それ以外の理由によって,同業他社の利用が回避されたのだったら,JASRACの包括徴収は関係ないことになります。

 これが審決の理由です。例えば,主要な放送局について,「①そもそもイーライセンス管理楽曲の利用を回避する旨の意思決定があったことを認めるに足りる証拠はないか(3社),②イーライセンス管理楽曲の利用回避の意思決定があったとの供述はあるが,それを具体的に指示したことについて客観的な社内通知文書等による裏付けがなく,実際には相当程度イーライセンス管理楽曲が利用されていたか(9社),③実際にイーライセンス管理楽曲の利用回避があったかどうかについての客観的なデータがないか(2社),のいずれかであって,これらの放送事業者において,イーライセンス管理楽曲について何らかの利用回避の動きがあった可能性はあるものの,具体的に利用回避があったことを認めるには足りない。」と認定されております。
 さらに,「①放送事業者全体についてみると,大塚愛の「恋愛写真」は,同時期にCDが発売された他の楽曲や大塚愛自身の他の楽曲と比較して,遜色のない形で放送事業者に利用され,それ以外の楽曲を含むイーライセンス管理楽曲も放送事業者に相当程度利用されており,放送事業者に対する無料化措置の通知の前後において,その利用状況に格別の変化はなかったものと認められ,②15社の個別の放送事業者についてみても,実際にイーライセンス管理楽曲の利用を回避したことが認められるのは経営者間の感情的軋轢も一因となったNACK5だけであり,その他の放送事業者については,具体的に利用回避があったことを認めることはできず,③エイベックス・グループのプロモーター等からの伝聞や放送事業者の編成部門担当者等の供述によれば,放送事業者の間に,イーライセンス管理楽曲について何らかの利用回避の動きがあったことは窺われるものの,実際にどの程度利用が回避されたのかは明らかではない。
 そうすると,放送事業者が一般的にイーライセンス管理楽曲の利用を回避したことを認めることはできず,放送事業者がイーライセンス管理楽曲の利用について慎重な態度をとったことが認められるにとどまる。」とまで認定されているのです。
 つまり,そもそも利用は回避されていない,単に,慎重な態度をとっただけだとの認定です。うーん何のこっちゃ!?

 ほんで,放送局が,そのような慎重な態度をとったのも,「被審人と放送事業者との間の包括徴収を内容とする利用許諾契約による追加負担の発生にあったと認めることはできず,むしろ,イーライセンスが準備不足の状態のまま放送等利用に係る管理事業に参入したため,放送事業者の間にイーライセンス管理楽曲の利用に関し,相当程度の困惑や混乱があったことがその主たる原因であったと認めるのが相当である。」とされました。

 つまり,ド素人の団体がノコノコ出て,準備不足で放送局に迷惑をかけてるのに,それもわからず,JASRACのせいにすんな!このバカタレが,と怒られてるわけですね。あーこりゃこりゃ~♫

 ということで,審査官の上記の論理をある程度認めたものの,結局,クソド素人のド素人具合が酷かったので,そっちのせいじゃ!としたのが審決なわけです。

 独禁法の審決なんか難しい~,普通の人にはわからん,独禁法やらんから弁護士でもわからん,と思っている方は多いと思いますが,この審決で言っているのは私が説明したとおりです。

 別に難しくないですよ。難しいのを難しく説明するなら,学者なんか不要ですよ。学者の本当の意義は,この私の説明よりも尚更わかりやく,この件を普通の人に説明できないといけない!のです。わかったか,この税金どろぼうどもの穀潰しどもめ。ムフフフ。

3 で,今回の判決は,その審決を取り消しました。正確なその理由はわかりません。報道によると,上記1で述べた審査官の排除措置命令の論理に同じような気がします。ただ,審決もそういうことが全くないと言っているわけではないので,どういうさじ加減か,これが問題となるわけです。

 どうですか。問題点までは何とか辿り着いたのではないでしょうか。で,それで良いのです。
 問題点が何かわかる,これが一番大事なことです。結論は,審査官と審判官で変わったとおり,勝負のアヤ,まさに今やっている日本シリーズみたいなもんですので。

 ところで,裁判長が知財高裁の飯村所長だったので,知財村の人はびっくりしたのではないでしょうかね。

 いや勿論,知財高裁は,東京高裁の特別支部ですので,東京高裁の裁判官であることは確かなのですが,それにしても,と思ったかもしれません。

 今回,判決が出ていないので,わからないのですが,独禁法の事件は,基本東京高裁の専属管轄で(独禁法85条),特許の審決取消訴訟と同じです。そして,東京高裁の裁判官の配置上,特別部で行うのだと思います。

 今年の高裁の配置は連絡されていないので,正確な所はわかりませんが,昨年の特別部だと,独禁法関係は第三特別部で行うようです。
 そして,その第三特別部の裁判官の配置は・・・ものすごいです。最高裁の大法廷以上の人数です。東京高裁のほぼ全員の裁判官が名を連ねているのではないでしょうか(民事も刑事も知財高裁も)。

 そして,裁判長は,部長クラスのうち,期が上の裁判官がなるようです。そうするとたまたま,東京高裁の長官が赴任したばかりということもあり,飯村さんになったのではないかと思います。

 ま,でも審査官の出した排除措置命令を数十年ぶりに取り消した所謂無罪の審決を更に取り消したなんて,まさに飯村節!と感じるのは私だけでしょうか。

 早く判決がアップされないかなぁ。

4 さて,今日は移動日でお休みですが,何だか私の予想とおりに進んでいる日本シリーズ。

 強がりもたいがいにせえよって感じでしょうが,2勝3敗で,大いに盛り上がっている敵地の仙台,しかも最強のマー君にぶつかるわけです。いいっすね~。恐らく,ほとんどの人がこれで楽天の日本一と思っていることでしょう。

 しかし,勝負は下駄を履くまでわかりません。マー君が倒れれば戦力的には後のない楽天,本当にそう有利なのですかね~,ま,いっちょ期待しましょ。
 
 


 

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1 本件は,小説家・漫画家・漫画原作者である原告らが,法人被告らは,電子ファイル化の依頼があった書籍について,権利者の許諾を受けることなく,スキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し,その電子ファイルを依頼者に納品しているから,注文を受けた書籍には,原告らが著作権を有する別紙作品目録1~7記載の作品(原告作品)が多数含まれている蓋然性が高く,今後注文を受ける書籍にも含まれている蓋然性が高いとして,原告らの著作権(複製権)が侵害されるおそれがあるなどと主張し,①著作権法112条1項に基づく差止請求として,法人被告らそれぞれに対し,第三者から委託を受けて原告作品が印刷された書籍を電子的方法により複製することの禁止を求めるとともに,②不法行為に基づく損害賠償として,㋐被告サンドリームらに対し,弁護士費用相当額として原告1名につき21万円の連帯支払,㋑被告ドライバレッジらに対し,同様に原告1名につき21万円の連帯支払を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事第29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,原告らの請求の一部(差止については全部)を認めました。

 ま,要するに,巷で話題の自炊代行業者に対する訴訟の判決ってわけです。

 ほんで,上記のとおり,ほぼ原告ら(クリエイター)の意図とおりの判決だったため,結構な話題になったわけです。

 勿論,予想できた結果ではあるのですが,ちっとも面白くねえなあって感がします。

2 問題点
 問題点は,端的に言えば,1つで,著作権法30条1項の私的使用のための複製にあたるかどうかです。
 著作権法30条1項はこんな条文です。
 「著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」
 
 つまり,私的使用ならば複製がOK,そうでなければNGというわけです。そして,ポイントは,条文に下線を引きましたが,あくまで,自分で使用する人が複製をする場合に限られるというわけです。

 ですので,本人と同視できる場合,例えば,中山先生の「著作権法」には,子供,身体障害者が例として載っておりますが,それ以外で業者に頼んでコピーしてもらうというのは,ダメとなるわけです。

 で,いわゆる自炊代行ってどうやっているかというと,判決を見ると「①利用者が法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,法人被告らに書籍を送付する,③法人被告らは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領する」もののようです。そして,被告の業者の一部は,裁断した書籍を廃棄していたようですね。

 そうすると,ま,この条文に形式的に当てはめると,複製しているのは,現に業者,ですから,私的使用には当たらなそうですね。ですので,侵害!オシマイとなりそうです。

 でも,ちょっと待って下さい。このまま何の悩みもなく,侵害!でいいのでしょうか。
 何で,この自炊代行が結構流行っているかというと,自炊の処理は結構面倒くさいわけです。紙の本を紙で数枚コピーする場合(まさに私的使用)とは手間が違い過ぎます。
 通常,まずは,背の部分を切り落としバラバラにします。つぎに,それをスキャナーに取り込み,pdf等に変換するわけです。

 このバラバラにする作業というのは大変です。ハサミと腕力でやろうとすると,まあ,数枚以上は,スキャンできないグチャグチャのお釈迦になってしまいます。そうすると,裁断機が必要になるのですが,自分で買うと結構高いです。一冊二冊のためにそんなバカ高い機械を買うよりも業者に頼んだ方がいいって感じがしますね。

 そして,スキャナーの作業も結構手間です。よくあるインクジェットプリンタに付属のやつでスキャンしようとすると,エラい時間がかかります。というのは,オートフィードなどないし,スキャン自体もエラい遅いですからね。そうすると,やはり,スキャナーも買いたくなりますね。スキャンスナップが有名です。ただ,上と同様に,一冊二冊のためにそんなバカ高い機械を買うよりも業者に頼んだ方がいいって感じがしますね。

 というわけで,紙の本を紙でコピーする場合に,そんな簡単に自分でできるんだから,業者なんかに頼むな,バカタレが~というのはわかります。でも,紙の本を電子データにするには結構な手間なわけです。
 しかも,こういう場合によく出る従前のメディアが売れなくなるという議論も当てはまりません。だって,通常業者に頼むのは,自分で使いたい人ですからね。そりゃ,電子データ化したものはコピーしやすく行き渡りやすいですが,そんなのどっかにアップロードした段階で捕捉可能ですので,そもそもが電子データである音楽ソフト,ゲームソフト,プログラム,映像ソフトとはちょっと違うのではないかと思います。

 というわけで,私的使用の範囲は,この自炊に限ってはちょっとは膨らませてもいいんじゃないのかあという価値判断がある程度あったと思うのですね。ですので,条文上は,杓子定規に決着がつきそうなのに,議論があったわけです。

 で,今回の判決は?というと・・・。

3 判旨
「著作権法2条1項15号は,「複製」について,「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義している。
    この有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。
     この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁参照,(注 ロクラクⅡ事件の方です。))。
     本件における複製は,上記(1)ア及びイで認定したとおり,①利用者が法人被告らに書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,法人被告らに書籍を送付する,③法人被告らは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④法人被告らは,裁断した書籍を法人被告らが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過によって実現される。
     この一連の経過において,複製の対象は利用者が保有する書籍であり,複製の方法は,書籍に印刷された文字,図画を法人被告らが管理するスキャナーで読み込んで電子ファイル化するというものである。電子ファイル化により有形的再製が完成するまでの利用者と法人被告らの関与の内容,程度等をみると,複製の対象となる書籍を法人被告らに送付するのは利用者であるが,その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら法人被告らであり,利用者は同作業には全く関与していない。
    以上のとおり,本件における複製は,書籍を電子ファイル化するという点に特色があり,電子ファイル化の作業が複製における枢要な行為というべきであるところ,その枢要な行為をしているのは,法人被告らであって,利用者ではない。
    したがって,法人被告らを複製の主体と認めるのが相当である。」

4 検討
 上記判旨は論点に直接答えている部分ではないのですが,ここに尽きると思いますので,この判旨を取り上げました。
 つまり,裁判所は,まず,今回,誰が複製の主体か?ということを決めたわけです(そのとき,ロクラクⅡの規範によりました。)。
 で,その結果,業者が複製の主体だと判断したわけです(上記判旨)。

 そうすると,あとは簡単です。私的使用でOKになるのは,複製の主体=利用の主体の場合だけなので,→私的使用の要件に該当しない!となります。

 ほんで,業者が補助してるだけだと反論しても,そもそも補助じゃなく,メイン!だって言っているでしょ,複・製・の・主・体♫なんだから~このイケズーとなったわけです。

 まあ原則とおりというか条文とおりというか,判決を書くのは結構簡単だったろうなあと思わせる,あんま悩みのない判決ですね。ちなみに,この程度の判決なら,私のスピードなら2日あればできますね,そんなもんです。

 ま,裁判所をdisってもしょうがない所です。ただ,裁判所がまず主体論で来るというのは,裁判中わかっていたかというと,若干怪しい所があります。主体論に関し,原告被告お互いのやり取りはありますが,その主体論は被告の抗弁として現れて,それに原告らが反論する形になっております。しかも若干メインの争点とは離れた所でです。

 とすると,結構不意打ちくさいのですね。となると,もうちょっと,この主体論に的を絞って(違う観点でもよいのですが。),議論を見てみたいというところでありますね。
1 概要
 本件は,債権者(造園家の吉村元男さん)が,大阪市北区に所在する複合施設である「新梅田シティ」内の庭園を設計した著作者であると主張して,著作者人格権(同一性保持権)に基づき,同庭園内に「希望の壁」と称する工作物を設置しようとする債務者(積水ハウス株式会社)に対し,その設置工事の続行の禁止を求める仮の地位を定める仮処分を申し立てた事案です。

 報道でも少し話題になりました。要するに,「新梅田シティ」内の庭園を,安藤忠雄さん発案のものでリニューアルしようとした所,著作者人格権(著作権ではありません。契約上の問題があったのでしょうかね。)で,しかも民事保全で,ちょっと待った~とされたわけですね。

 これに対して,大阪地裁民事21部(谷さんの合議体です。)は,本件の申立を却下しました(本案訴訟でいう請求棄却です。)。

 色々珍しいのですが,やはり,何と言っても,庭園の著作物性?これが争われたのは初めてくらいじゃないでしょうか。

2 問題点
 ということで,問題点は,まずは,庭園の著作物性です。
 法律上は,定義がきちんとあります。著作権法2条1項1号です。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」

 さらに,著作物の例示としては,著作権法10条1項があります。そして,庭園が該当しそうな4号5号がこんな感じです。
 四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
 五  建築の著作物」

 こう書くと,まあ造園も,思想又は感情を創作的に表現したものと言えそうだから,何はともあれ,著作物ってことでいいんじゃな~い~と思いますよね。

 ただ,この上の例示が単なる例示ならばいいのですが,実は単なる例示じゃない場合があるのですね。そう,法的効果が違う場合があるのです。

 特に,本件の場合,著作者人格権,特にリニューアルということで,同一性保持権の侵害だ!と主張しているわけですね。まずは,同一性保持権の20条1項です。
「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」
 つまり,意に反する変更したら,それは同一性保持権の侵害にあたりそうなわけです。民事保全法に基づく,仮地位仮処分までしてるってことは,プンプン,つまりは意に反するのは当然ってわけです。で,ところが,この同一性保持権には例外があります。同条2項2号です。
「前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
 二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」

 わかりますかね。つまり,造園が著作物だとしても,建築の著作物だったら,リニューアルによる改変はOKなわけです。他方,美術の著作物だったら,リニューアルによる改築でもNGなのです。
 面白いでしょ。ま,要するに,美術と建築では,実用性がかなり違う!というところなのだと思います。建築物って,実際人がそこに住んだり,仕事をしたり,その他いろんな使い方をするので,何かあるたびに,分からず屋の著作者から,やめろとか何だかんだ言われるのはうっとおしいたりゃありゃしません。うちの田舎ではしゃあしいやっちゃのう,という感じになると思います。

 他方,美術の著作物だと,まあそんなに実用目的で使われることはないかなあという所です。ただ,カレンダーとかには複製が使われたりしますので,それを切ったり落書きしたら,どうなるんだ?!と考えると夜も眠れなくなってしまいます。

 ですので,造園が何かの著作物に当たるとしても,じゃあそのまま権利行使を認めてもよいか?特に,本件のような実用的なものの場合,どうすりゃいいんだ(勿論,著作物性あり→美術の著作物→担保を多く積ませて仮処分決定でもいいとは思いますけどね。)という所もあるわけです。

 で,判旨というか決定要旨かな,行ってみましょ。

3 決定要旨
「前記1で述べたところによれば,本件庭園は,新梅田シティ全体を一つの都市ととらえ,野生の自然の積極的な再現,あるいは水の循環といった施設全体の環境面の構想(コンセプト)を設定した上で,上記構想を,旧花野,中自然の森,南端の渦巻き噴水,東側道路沿いのカナル,花渦といった具体的施設の配置とそのデザインにより現実化したものであって,設計者の思想,感情が表現されたものといえるから,その著作物性を認めるのが相当である。 」

「本件工作物の設置態様は,前提となる事実(5)記載のとおりであり,カナル西側の通路上に,カナルにほぼ接する形で,かつ花渦を跨ぐように設置される。
    上記設置場所である通路は,カナルから花渦に至る水の循環を鑑賞し,あるいは散策,休息等をする人が訪れる範囲であるから,庭園及び庭園関連施設と密接に関連するものということができ,著作物としての本件庭園の範囲内にあるというべきである。
    本件工作物の設置態様は,カナル及び花渦に直接物理的な変更を加えるものではないが,本件工作物が設置されることにより,カナルと新里山とが空間的に遮断される形になり,開放されていた花渦の上方が塞がれることになるのであるから,中自然の森からカナルを通った水が花渦で吸い込まれ,そこから旧花野(新里山)へ循環するという本件庭園の基本構想は,本件工作物の設置場所付近では感得しにくい状態となる。また,本件工作物は,高さ9メートル以上,長さ78メートルの巨大な構造物であり,これを設置することによって,カナル,花渦付近を利用する者のみならず,新里山付近を利用する者にとっても,本件庭園の景観,印象,美的感覚等に相当の変化が生じるものと思われる。
    そうすると,本件工作物の設置は,本件庭園に対する改変に該当するものというべきである。これが改変に当たらない,あるいは軽微であって同一性保持権の侵害となる改変には当たらないとする債務者の主張は,上記説示に照らし,採用できない。 」

「 既に述べたとおり,本件庭園は,自然の再現,あるいは水の循環といったコンセプトを取り入れることで,美的要素を有していると認められる。
    しかしながら,本件庭園は,来客がその中に立ち入って散策や休憩に利用することが予定されており,その設置の本来の目的は,都心にそのような一角を設けることで,複合商業施設である新梅田シティの美観,魅力度あるいは好感度を高め,最終的には集客につなげる点にあると解されるから,美術としての鑑賞のみを目的とするものではなく,むしろ,実際に利用するものとしての側面が強いということができる。
    また,本件庭園は,債務者ほかが所有する本件土地上に存在するものであるが,本件庭園が著作物であることを理由に,その所有者が,将来にわたって,本件土地を本件庭園以外の用途に使用することができないとすれば,土地所有権は重大な制約を受けることになるし,本件庭園は,複合商業施設である新梅田シティの一部をなすものとして,梅田スカイビル等の建物と一体的に運用されているが,老朽化,市場の動向,経済情勢等の変化に応じ,その改修等を行うことは当然予定されているというべきであり,この場合に本件庭園を改変することができないとすれば,本件土地所有権の行使,あるいは新梅田シティの事業の遂行に対する重大な制約となる。
    以上のとおり,本件庭園を著作物と認める場合には,本件土地所有者の権利行使の自由との調整が必要となるが,土地の定着物であるという面,また著作物性が認められる場合があると同時に実用目的での利用が予定される面があるという点で,問題の所在は,建築物における著作者の権利と建築物所有者の利用権を調整する場合に類似するということができるから,その点を定める著作権法20条2項2号の規定を,本件の場合に類推適用することは,合理的と解される。・・・・・
 本件への適用を考えるに,著作権法20条は,1項において,著作者が,その著作物について,意に反して変更,切除その他の改変を受けず,同一性を保持することができる旨を定めた上で,2項2号において,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変については,前項の規定を適用しない旨を定めている。
    著作権法は,建築物について同一性保持権が成立する場合であっても,その所有者の経済的利用権との調整の見地から,建築物の増築,改築,修繕又は模様替えによる改変について,特段の条件を付することなく,同一性保持権の侵害とはならない旨を定めているのであり,これが本件庭園の著作者と本件土地所有者の関係に類推されると解する以上,本件工作物の設置によって,本件庭園を改変する行為は,債権者の同一性保持権を侵害するものではないといわざるをえない。 」

4 検討
 造園は,何らかの著作物には該当し,建築の著作物とは言えないけども,ま似ているところもあるから,著作権法20条2項2号を類推適用できるとしたわけですね。

 ただ,この決定は,造園を建築じゃないとしましたが,建築自体の定義は著作権法にはありません。ですので,私としては,造園も建築の一種だ~としても別にいいんないかと思うのですね。恐らく,建築には,構造物という要素が必要なのでしょうが,そんなの規範的に考えりゃあ何とでもなるんじゃないかなあという気がするのです。

 つーか,何でそんな所に拘るかというと,やっぱ類推適用って気持ち悪いのですよ。明文にないものを使うのは,はっきり言って,法律家としては敗北ですわ。
 民法1条3項の権利濫用とか,今回のような類推適用とか,きっちりした規定の適用ができなかったなんて,裏口入学みたいなもんですよ。
 ですので,そんな類推適用でお茶を濁すなら,造園は建築の著作物に該当する→著作権法20条2項2号の直接適用で終わり!の方が座りがいいんじゃないですかね。

 ま,兎も角も,大分が誇る世界の土建派弁護士としては,結構使えそうな先例ができたなあって所です。あ,でもこれ本案訴訟じゃなかったなあ。じゃあ本案が出るまで今しばらく大人しく待ちますかね。
 

 

1 これは,昨日のニュースですが,まあよろしいでしょう。例の出版社が著作隣接権をクレクレ煩かった件について,漸く決着を見たということです。

 最初は,またクソみたいな権利が新設されるのではないかと心配しておりましたが,今年になって経団連から謂わば横槍のような形で,著作隣接権ではなく,出版権の方で行こうじゃないのという提言が出て,一気に形勢がこっちに傾きましたね。

 偶にはいいことやるじゃん,経団連って所です。勿論,著作隣接権なんか出来たら,自分たちの商売(特に電機メーカー)の邪魔になるっていうことが分かってやっただけだと思いますけどね。

 そうそう,結構面白いですよね。電機メーカー系とコンテンツ系の対立って,そのまま理系と文系の対立だし,弁理士対弁護士(特に文系)の対立だし,オタクVSクリエーターの対立だし,例えば,訴訟にまで至った東芝対SARVHなんて,まさに,この対立が先鋭化したものと言って良いでしょうね。
 機器とコンテンツなんて,切っても切れないものなのですが,意外と利害関係は相反するわけです。だって,電機メーカーから言わせれば,著作権なんてものは無い方がいいわけですからね。

 更に,この対立には,放送会社の利益も絡んできて更に更に面白いことになっております。ちょっと前に話題になったパナソニックVS民放各局のやつです。

 今回の中間まとめに出版関係のマーケットが出てましたが,今,1.7兆円くらいらしいですね。レコードのマーケットが0.3兆円くらいです。映画のマーケットもこれと同程度ですから,結局,コンテンツのマーケットって2兆円少ししかないわけです。
 他方,経団連の電機,自動車,精密機器等のマーケットは?というと,桁が二つくらい違うんじゃないでしょうかね。つまりは,経団連を怒らせるととんでもないことになる!ってわけです。

 ですので,著作隣接権が欲しいよ~,おかあちゃーんとぐだを巻いていた出版社の人達も,マジでヤバイと思い,あ,もうそれでいいです,となったことは想像に難くないわけです。ムフフフ。

2 と,相変わらずの妄想を加味した長い前置きはこれくらいにして中身に行きましょう。
 といっても,まだ中間まとめの段階ですので,あまりあれやこれや言っても仕方がありません。

 ただ,電子出版権って何じゃらほい,という向きのために少しだけです。

 まず,この権利の元になる出版権がわからないといけません。著作権法79条以下ですが,79条1項は,こんな条文です。

第二十一条に規定する権利を有する者(以下この章において「複製権者」という。)は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。

 ポイントは,複製権者(著作権の支分権ですね。)が,ある一定の条件の下,設定するということです。ま,ここのブログを良く見ている人は,特許系の人が多いと思いますので,その方々にわかりやすく言うと,専用実施権みたいなものです。物権的な権利だということが重要です。
 他方,特許の専用実施権との違いもあります。それは,出版権者には,出版の義務があるのです(著作権法81条)。特許の場合,専用実施権をもらっても,実施しなきゃいけないなんてありません。これは結構キツイ話です。
 
 あとのポイントとしては,「文書又は図画として」とあることです。そもそも,他の形態の許諾は債権的なのに(著作権法63条),この出版権だけ物権的なのは,多少変な感じもあります。中山先生の「著作権法」には,「著作物利用の典型的な形態であるので」とありますが,最近のコンテンツの様々な利用法からすると,何か遅れているなあと思っちゃいますね~。

 ということで,経団連とコンテンツ系との争いの話を抜きにしても,電子出版権というのは,時代の要請という気がします。

 ま,ですので,細かい違いや何が電子出版なのかという今後揉めそうな所もありますが,基本,今ある出版権とパラレルに考えて良いのだと思います。つーか,それ以上に何か付加しようとすると,また経団連のチェックが入ると思いますので,文化庁もおちおち付けられないとは思いますけどね~。

 ところで,今回の中間まとめを出した小委員会の委員も載っておりましたが,やはりきちんとクリエーターの代表がメンバーに入っております。実名は挙げませんが,上から,絵本作家,(日本画家),マンガ家,写真家,マンガ家,と26名中4名の割合です。

 ところが,ここでしつこくdisっている職務発明のクソ委員会に現役の発明者は一人もいません。いやあ,例えば京大の山中教授か,アメリカに行っちゃった中村修二さんなんか是非メンバーに入れて欲しいと思いますけどね。ま,中村修二さんを入れる器量はないか~アメリカ人のbig dickが好きなクセに,どいつもこいつもケツの穴が小せえからなあ。

3 恒例の散歩シリースです。
 本日は15号(第一京浜)から見た品川駅です。

 その昔,ソニーの知財部に居たころ,時々,この辺の本社圏に厚木からわざわざ来ておりました。
 というのは,知財部の本部があるのは,当然本社圏であり,あと,部長以上のお偉いさんも都会が好きなので,会議というと,全部本社圏でやるわけですね。そうすると,私のような下っ端知財部員は,結構な時間をかけて厚木から上京しないといけなかったわけです。

 それでも時間のあるときは,厚木↔本社のバスがありますので(今でも時々五反田の街で見かけます。ユタカ観光でしたかね。),ゆっくり昼寝して行ったのですが,時間のないときや遅れたらやばいときには,相鉄で横浜まで出て,そこからJRか京急で品川に行き,品川駅からは歩くというのがデフォ―でした。
 昔,こうして,15号沿いを,八ツ山通り(ソニー通り)沿いを歩いて行ったわい,という所ですね。
 今のソニーの知財部の本部は,品川駅を挟んで反対側(海側)の新本社に移りましたので,駅から歩く距離はきっと少ないでしょう。

4 追伸
 今週末に,2020年のオリンピックの開催都市が決まりますね。

 是非東京になって欲しいですね。色々あるけれど,腰が重く,飛行機嫌いの私にとって,直でオリンピックを見れるには,この近くでやってもらうしかないからですね。

 まあ,私は,九州人で,理系で,弁護士で,オタクではあるのですが,中学高校大学と,ずっと陸上部だったという体育会系でもあるという,実に鵺のような属性ですので,オリンピックが大好きなのですね。

 と言っても,ブックメーカーで大本命という,実に危うい,しかも色々足を引っ張る理由もここに来て頻出しておりますので,やばいなあと思っていますが,落選を覚悟しつつ,楽しみに待ちたいと思いますね。
1 本件は,フォントベンダーである原告が,テレビ放送等で使用することを目的としたディスプレイフォントを製作し,番組等に使用するには個別の番組ごとの使用許諾及び使用料の支払が必要である旨を示してこれを販売していたところ,原告が使用を許諾した事実がないのに,前記フォントを画面上のテロップに使用した番組が多数制作,放送,配給され,さらにその内容を収録したDVDが販売されたとして,番組の制作,放送,配給及びDVDの販売を行った被告テレビ朝日並びに番組の編集を行った被告I M A G I C Aに対し,被告らは,故意又は過失により,フォントという原告の財産権上の利益又はライセンスビジネス上の利益を侵害したものであり,あるいは原告の損失において,法律上の原因に基づかずにフォントの使用利益を取得したものであると主張して,主位的には不法行為に基づき,予備的に不当利得の返還として,原告の定めた使用料相当額の金員の支払を求めた事案です。

 これに対して,大阪地裁第21民事部(谷さんの合議体です。)は,原告の請求をいずれも棄却しました。要するに,不法行為の損害賠償も不当利得も認めなかったわけです。

 いやあ実に面白い事件です。事件番号をご覧ください。知財で今時珍しい3年ものです。ただ,これだけの時間がかかったのもしょうがないですね,くらいの事件です。

2 問題点
 問題点としては,上記のとおり,原告が汗をかいて作ったフォントソフトを使用したと思われる番組テロップについて,それが著作権法ないしその他の法律に照らして違法と言えるかという問題です。

 で,何故私が面白いと思ったかというと,実に現代的だからです。

 つまり,タイプフェイスが法上保護されるか?つまり,著作権法とか意匠法とか,不正競争防止法で保護されるか?というのは昔からあります。でも,今回はそれだけでなく,それを生み出すのがコンピュータプログラムであるという一捻りが加わっているのです。

 どういうことかというと,タイプフェイス自体は,著作権法上保護されないということで一応の決着はついているのですね(最高裁平成12年09月07日判決,平成10(受)332,民集54巻7号2481頁)。ほんで,他の知財法も,基本消極的です。

 そうすると,次には,そうだとしても何らの不法行為が成立するかも・・ということですが,これも北朝鮮映画事件(最高裁平成23年12月8日第一小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照)で否定されております。

 とすると,タイプフェイス自体の使用を不法行為で追及するのはなかなか難しいわけです(知財権のような第三者にまで追及できる物権的な飛び道具がないわけです。)。
 
 ところが,本件の場合,単にタイプフェイスを使ったのではなく,タイプフェイスソフトを使ったかということが問題になっておりますので,そこのところをうまく法的構成できないかというところにポイントがあると思います。

 ですが,今回事実認定で被告らは直接原告のソフトを使っていなかった,こういう事実認定になっておりますので,結論も上記のとおりにならざるを得なかったのでしょうね。

3 判旨
 「本件タイプフェイスの具体的形態は,前記第2の1(4) のとおりであって,著作権法2条1項1号の著作物に該当するものとは認められず(最高裁平成12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁参照),原告も,著作権法に基づく保護を求めているものではないが,本件フォントをテレビ放送等に使用することは,上記法律上保護された利益を侵害するものとして,不法行為に当たると主張する。
 しかしながら,著作権法による保護の対象とはならないものの利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解されるが(最高裁平成23年12月8日第一小法廷判決・民集65巻9号3275頁参照),本件フォントを使用すれば,原告の法律上保護される利益を侵害するものとして直ちに不法行為が成立するとした場合,本件タイプフェイスについて排他的権利を認めるに等しいこととなり,このような主張は採用できない。
 原告は,前記アの主張とは別に,本件フォントに係るライセンスビジネスという営業上の利益が侵害された旨の主張もするところ,本件フォントをテロップに使用したテレビ番組が放送されたのは,被告らが,本件フォントソフトを使用してテロップを製作し,あるいは本件フォント成果物をテロップに使用したことにより,故意又は過失による不法行為が成立し,これによって,原告の営業上の利益が侵害された,あるいは,本件フォントに係る使用許諾契約上の地位が侵害された旨を主張すると趣旨と解される。そこで,次項以下では,前記認定事実に照らし,原告のかかる利益を侵害する不法行為が成立するか否かにつき,検討することとする。」

 「・・・・被告らが,本件フォントソフト又は本件フォント自体を使用してテロップを製作したことを前提とする原告の主張は,その余の点について検討するまでもなく理由がない。」

 「前記認定のとおり,被告らの行為は,本件フォントソフト又は本件フォント自体を使用してテロップを製作したわけではなく,テロップ製作業者等の第三者が本件フォントを使用し,フォント成果物として出力したテロップ画像を取得し,これを使用したに過ぎないものである。
 そして,前記(1)のとおり,本件タイプフェイスあるいは本件フォントに著作物性,排他性を認めることはできないから,フォント成果物を取得する際に,本件フォントに由来する文字であることを認識していたとしても,当然に原告に対する故意の不法行為が成立するものではない。」

 「しかし,原告が,本件フォントを販売するにあたりその使用に制限を課したとしても,それに拘束されるのは,その制限のあることを了解して原告と本件使用許諾契約を締結した本件フォントの購入者に限られる。つまり,仮にテロップ製作業者等が原告と本件使用許諾契約を締結した場合であっても,別の法主体である被告テレビ朝日がこれに拘束されるべき理由はなく,不法行為の成否を考えるに当たっても,テロップ製作業者等と被告テレビ朝日との間で法的地位に違いがあることは明らかである。
 そうすると,仮に,第三者であるテロップ製作業者等に本件使用許諾契約違反があれば,原告は,その者に対し,債務不履行責任等を追及しうるが,その後,フォント成果物を取得し,これを使用するに過ぎない被告テレビ朝日との関係においては,テロップ製作業者らとの間に長年にわたる取引関係などがあったとしても,テロップ製作業者等の故意を,被告テレビ朝日の故意と同視すべきとは認められず,両者の責任を同一視することはできない。」

 「多数のフォントベンダーによる多数のフォントが流通しているが,無償で使用し得るもの,有償で正当に取得すれば使用に特段の制限のないもの,使用態様に制限があるもの,使用態様の制限はないが,期間制限があり更新が必要なものなど,その使用制限の有無,態様は様々であり,契約の当事者でない者が,これを区別することは極めて困難であるから,仮に,フォント成果物としてテロップを取得した者が,それを使用するにあたり,テロップの製作者におけるフォントの使用に正当な権限があるかを確認しなければならないとすれば,非常な困難を強いられるおそれがある。」

 「平成21年に前記通知を受けた後においては,前記1(5) のとおり,同年12月3日放送分を最後に,当時放送継続中であった番組における本件フォントの使用が中止されている。すなわち,被告らは,上記通知を受け,本件フォントが原告の許諾なく使用されている可能性を認識した後は,本件使用許諾契約に基づく原告の利益を損なうことがないよう速やかな対応をとったものといえる。」

4 検討
 上記のとおり,物権的な権利で追及するのは厳しい。とすると,債務不履行で追及するしかないけど,原告-被告間には契約がないので,それも厳しい。じゃあさらに,契約違反をした契約当事者(原告のフォントソフトを使用していたテレビ番組の下請業者など)と同視できるような事情を探しても,それもない。さらにさらに,そうはいうものの,放っといて使い倒して俺は知らん,みたいなこともない(被告らはまずいと思った時点で,すぐに原告ソフトの成果物の使用をやめたようですからね。)。

 そうすると,被告らとしては,やるべきことをやっており,これで損害賠償等までしなきゃいけないとなるとそれは酷という価値判断なのでしょうね。

 ただ,原告としては,何でライセンスもしてないところが勝手に使ってんだという所は非常にあったと思います。

 ですが,上に述べたとおり,確実に著作権が存在すると思われるソフトの不正使用については,被告らはしておらず,その時点である意味勝負あったという感じがしますね。

 ですので,あまり好きではないのですが,これは本格的に立法論を考えた方がよいのかもしれませんね。タイプフェイスに知財権が発生するとすれば,ソフトの成果物(これがタイプフェイス)の不正使用ということで,端的に追及できるわけですから。

 まあでも,そうは書きましたが,個人的には,新たな知財権については,長期的に本当にイノベーションに寄与するのかいなあという思いがあります。ですので,慎重に,でしょうね。
1 首記は,本日の日経の1面です。ポチ政府のアメリカ追随は止まることを知らない~♪ってところでしょうか。

 70年に延長も,非親告罪化も日本には全くメリットがありません。この辺は,福井先生のに詳しいのですが,TPPの縮図がここに明白に~という感が非常に強いです。

 というのは,TPP自体もはや推進派が大勢と思いますが,何故TPP参加が日本にとって良いことか,それを説得力を持って主張している人を見たことがありません。
 大体こう言うんですよね,成長戦略に必要不可欠,今までの農業ではダメ攻めの農業に転じるべきだ,輸出が増えるぞ,商売しやすくなるぞ~,で,本当にそうなるんですかね~。

 成長戦略は重要と思いますが別にTPPとは関係ないはずです。また,農業についても,色んな規制等をどうにかしないといけないとは思いますが,やはり別にTPPとは関係なくできるものです。輸出が増えるとか商売しやすくなるとかは,売るものがあって初めて成り立つ話で,他方,逆に単に日本市場を開放しただけ,の話にならないとは限りません。

 何か視点がオカシイのですよ。日本のモノに付加価値を与え,世界で売れるようなモノを生み出すにはどうすればよいかという根本的な話を蔑ろにして,何でもかんでもTPPで解決できるかのような誤解を与えているのですね。ですので,TPPなんか参加しなくても,日本にいいモノ,売れるモノがあれば,解決する話ですし,そうなると本当TPPとは関係ないのです。

 ま,そのうち,TPP参加で腰痛が治ったとか,寝たきりの老人も立ち上がったとか,色んな奇蹟が起きるのかもしれませんね~,あなありがたやTPP♥

2 ただ,改正すべきというか,どうにかならんのかというのはあります。救済の実効性確保です。今回の記事には詳細には書いておりませんが,法定損害賠償については賛成ですね,できれば懲罰的損害賠償をも導入して欲しいと思います。やはり金権弁護士としては,事件後の報酬がタンマリあるに越したことはありませんからね。

3 追伸
 著作権ついでに,例のwinny開発者の金子さんが,亡くなられたという報道がありました。最高裁の決定が出たのが,一昨年の12月ですから,漸く身の潔白が確定して,1年半しか経っておりません。全く残念の極みというしかありません。本当に深く追悼の意を表したいと思います。

 上記の最高裁の決定が出たときにも書いたのですが,著作権侵害罪は,所謂自然犯(殺人,窃盗強盗,強姦)ではありません。ある一定の謂わばデッチ上げをそのまま犯罪として構成しただけのものです(特許侵害罪も同じです。)。

 だって,無体な情報なって,原則誰がどう使おうが自由な筈です。発明だろうが,著作物だろうが,使われてナンボの世界です。ただ,なかなかそうすると,逆に発明とか著作物の保護だとか流通とかを阻害することもあるだろうから(本当にそうかは,論証できていないと思いますがね。),例外的に質の悪いものだけを,本当に例外的に,取り締まろうとするのが,知財の制度なわけです。

 この辺,特許権とか著作権とかあるのが原則だと勘違いしている弁理士などいますが,全然違いますからね。ですので,例外的に取り締まるだけなので,謙抑的にやるのが当然です。怪しいものは見過ごしていいのです!

 それが,幇助だなんて,例外の例外じゃねえかって所でした。しかも,逮捕!ですからね~。バカのやることにつける薬はありませんし,本当に死ぬべきは警察とか検察とか裁判所のやつらの方だったのに,全く残念ですね。
 今後は,取り締まろうとする方も,ちったあ勉強してもらうといいと思いますよ。

 ですので,TPPでアメリカに追従すると,金子さんの件よりもっと酷いことがたくさん起こると思います。本当よく考えた方がいいですね。

4 さらに追伸
 先程,裁判所に行ってきたのですが,すごい暑さです。確かに,去年の2012年とか3年前の2010年とか,夏はこれくらい暑い日がありました。でも,あれは8月の後半になってからだったと思いますよ。何か,梅雨明けと同時にフルスロットルって感じですね~。タクシーを使えるようなブル弁じゃありませんので,汗だくです。

 ただ,その行き帰りの道,日比谷公園を通ったのですが,セミ(ニイニイゼミですね。)が鳴いておりました。一昨日サーフィンに行ったときには,辻堂海浜公園ではまだセミが鳴いてなかったので,今年の初蝉ですね。

 さらに,その道すがら,イソ弁時代にお世話になった事務所での同僚弁護士に久々会うこともあり,更に,裁判所の待合室で,その事務所での弟弁にも出くわすなど,滅多に裁判所に行かない割には(仕事が無いので),何だか収穫の多い日でしたね。
1 私は第一東京弁護士会の所属ですので,本来首記の部会とは何ら関係はありません。
 ところが昨日,首記の部会にお邪魔してきたのですね。昨年の10月に続いて2回めです。
 講演者は,元知財高裁判事の高部さんでした。題目は,著作権法の守備範囲ということでした。

 ということで,会場は,単位会の定例部会にも関わらず,すごい人でした。前回の大須賀部長のときも人が多かったのですが,それ以上でしたね。

 あと,前回,東弁のこの部会は,若手が少なく,パートナークラスのビッグネームばかりで,ジジババのサロン状態と書いた所,I先生から,ちょっと~♪inagawaraw先生,失礼しちゃうわ~と苦言をいただきましたので,ちょっと言い方を変えて,平均年齢が凄い高い状態,としておきます。
 変わらない?そんなことはないですよ,つーか,本当に年寄りが多いですもん,しょうがないっすな。

2 さて,内容ですが,基本単独著作の,「実務詳細 著作権訴訟」を元にした内容です。ですので,その著作を読んだことがあれば,特段新鮮な話はありません。

 ただ,講義と本の違いっていうのもありまして,実際裁判官がどのように考えているか,よくわかるのですね。本の場合は,のっぺりしていて,どこが重要かなんてその濃淡がわかりません(受験の参考書はその点,よくできています。)。これを講義で聞くとよくその濃淡がわかります。

 やはり,敵ではないですが(味方でもありませんが。),裁判官の思考を学び,研究するというのは重要ですからね。ま,ということで,具体的な中身は,受講した人の特権ということで。

3 ところで,高部さんは,現在横浜地裁の川崎支部の支部長ということで,法服も着ていないそうです(支部によっては,支部長も裁判を担当することはあると思うのですが,川崎支部では支部長はもはや実務の担当なし,というわけでしょうね。)。知財のかなりのキャリアがありながら,辞令一つで,全く関係ないところに行くというのは,公務員の性ですね。ま,別に,知財ばかりが裁判官の仕事ではないでしょうしね。

 他方,高部さんと言えば,実は妹さんも結構な有名人です。ま,両者とも公務員ですから,いいですかな。妹さんの方は,確か数年前の特許庁の特許の審査基準室長でした。ですので,知財をやっていれば,皆知っている有名な姉妹だったのですね。
 ということで,姉は,司法のキャリア,妹は行政のキャリアというわけです。凄いですね~。というか,ちょっと調べればわかるのですが,高部さんのご実家は出雲で**家と言えば知らない人はいない程の名家のご出身で,さもありなんという所です。

 こういうのって,やはり江戸時代からの体制の影響が大きいのでしょうね。出雲と言えば,松江藩ですので,比較的大きな藩で,代々或る殿様が治めてきたという経緯の所です。うちの田舎の近くだと,鹿児島県がこんな感じです。

 他方,うちの田舎の大分は,もう小藩分立で,江戸時代の豊後の国(一部豊前の国)がどうなっているかなんて見ると悲惨なくらいの分立状態です。うちの田舎なんて,島原藩の飛び地ですからね~,飛び地って何じゃそれ!って感じです。

 となると,やはり,そこに住んでいる人の感性もやはり,違ってきますよね。そして,それが一番現れるのが,教育関連ですね。大分と同様,小藩分立で有名なのは,長野県です。長野県と言えば教育県で有名です。我が田舎もやはり同様ですね。
 これはやはり,どんとした殿様がおらず,あっちやこっちやの影響を様々に受けてきたという歴史的経緯がそうさせるのでしょうね。つまりはユダヤ人と同じです。依るべきものは基本無いため,もう各人が取り敢えず,教育に力を入れて,各人毎生き残っていくしかない,っちゅうわけです。

 他方,雄藩の所はそうではないのでしょう。恐らくエリートの方々に頑張ってもらい,各人はそれなりでも良いわけです。だって,こっちは雄藩,小藩分立の所なんて目じゃないですからね~。

 どっちがいいかなんて私にはわかりませんが,名家出身とかそういう依ってたつものなんて何もない,デラシネの私には,雄藩よりも小藩分立の所の方が良かったのでしょうね。
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理論物理学者を目指したのはもう30年以上前のこと。某メーカーでの液晶ディスプレイのエンジニアを経て,弁理土に。今は,弁護土です。次は何かな。
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