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知財,特に特許を中心とした事件を扱っている理系の弁護土の雑記帳です。知財の判決やトピックについてコメントしたいと思っております。
1 本件は,総合格闘技競技である「Ultimate Fighting Championship」(UFC)の大会及び試合を撮影・編集した映像作品である別紙一覧表「作品名」欄記載の作品(本件各作品)の著作権を有する原告(ズッファ)が,被告は,本件各作品をウェブサイト「ニコニコ動画」にアップロードし,原告の公衆送信権を侵害したと主張し,上記著作権侵害の不法行為により原告が被った損害(ライセンス料相当額の逸失利益〔著作権法114条3項〕合計4681万9740円,信用毀損による無形損害1000万円及び弁護士費用600万円)のうち,別紙一覧表11番の作品(作品11番)の掲載による逸失利益395万1600円,同26番の作品(作品26番)の掲載による逸失利益419万9700円及び同68番の作品(作品68番)の掲載による逸失利益205万1100円の一部である184万8700円(合計1000万円)並びにこれらに対する訴状送達日の翌日である平成25年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事29部(大須賀さんの合議体ですね。)は,請求を全部認容しました。

 ま,知財だけではなく,格闘技の話ですから,こりゃこのブログにまさに相応しい話というわけです。

 と言っても,知財の話からいきましょ。

2 問題点
 問題点は,被告が本人訴訟なので,損害に関することしか顕在化しておりませんが,これは要するにスポーツ中継ですので,本来著作物性を争うべき事案でしょう。

 だって,著作権法2条1項1号は,「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されていますからね。そうすると,普通のスポーツ中継は,思想又は感情の表現ではなく,単なる事実の報道に過ぎませんから,著作物性はないはずです。

 もっとも,それなりの演出や台本等がある,格闘技とは似てるけど,正反対のプロレスだと,逆に著作物性は優に認められるでしょうね(生だと10条1項3号,テレビ中継だと10条1項7号でしょうかね。)。

 ですが,UFCはガチンコということになっております。そうすると,単に勝ち負けを中継しているだけと思えますので,どこに人の思想ないし感情が表現されてんじゃ!と思われても不思議じゃない筈です。

 ということで,普通はスポーツ中継の海賊版って著作隣接権でやるのですね。放送事業者の権利として,著作権法の98条以下にあります。ところが,これは,当事者がWOWOWではなく(昨日5/26も生中継やってましたね。),大元のズッファなのですね。つまり,何らかの権利は持っているけど,放送事業者ではなく,この著作隣接権は使えないわけです。
 そうすると,多少弱くても著作権で行くしかないのです。

 ということで,ズッファとしては,色々演出しているんですよ,と言うしかありません。でも,上記のとおり,あまり演出のことを言うと,そんなに演出していて本当にガチンコなの?と痛くない腹を探られかねません(私が被告側代理人だったら,そういう底意地の悪いことをやりますね。)。

 ですので,原告ズッファの主張としても,「①単に定点から機械的に試合を撮影したものではなく,構図,カメラアングルなどに工夫を凝らすことで総合格闘技の有する迫力をより迫真的に伝えている点及び②単に撮影した映像をそのまま使用するのではなく,複数のカメラで撮影した映像をつなぎ,また,試合に関する情報を写真や文字で付加し,音声で解説を加えることで,試合の情報をより分かりやすく伝える点で,思想又は感情を創作的に表現したものに当たる。」という,底意地悪い弁護士からすると,そんなのありきたりのもので,誰がやっても大体同じ程度にしかならず,創作性も糞もない,と反論を許す程度のものしかありません。

 では,裁判所はどう判断したのでしょうかね。

3 判旨
 「作品11番,26番及び68番は,いずれも,総合格闘技であるUFCの大会における試合を撮影した動画映像であり,各場面に応じて被写体(選手,観客,審判等)を選び,被写体を撮影する角度や被写体の大きさ等の構図を選択して撮影・編集され,映像に,選手等に関する情報等を文字や写真により付加する等の加工を加えたものである(甲16の1ないし3)。このように,作品11番,26番及び68番は,試合の臨場感等を伝えるものとするべく,被写体の選択,被写体の撮影方法に工夫がこらされ,また,その編集や加工により,試合を見る者にとって分かりやすい構成が工夫されているものということができるのであって,思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから,映画の著作物に該当する。」

4 検討
 判旨だけ見ると,ええーって感じですね。というか,この著作物性に関して,被告の方は認めてしまっているのですね。なので,ここは原告主張を追認しただけで,ほぼスルーになっております。いやあ残念。
 唯一の主戦場を早々に放棄しちゃったわけで,こういうのを見ると,やはりちゃんとした代理人が就くべきだったと思いますね。ま,ただ,代理人でどうにかなる事件の割合は少ないとは思いますけどね。

 ちなみに,昨日上記のとおり,5/26,UFC160がありました。メインは,ヘビー級王座のケイン・ヴェラスケスとデカブツ,アントニオ・シウバのタイトル戦でした。これは軽く一蹴って感じですね。
 私が注目していたのは,その前の試合,ジュニオール・ドス・サントスとマーク・ハント(元K-1王者のあのハントです。)の一戦ですね。ハントは,長い戦歴がありますが,ここのところ,UFCでいい成績を納めており,前王者のジュニオール・ドス・サントスを破れば,タイトルマッチが見えていた試合です。

 試合は結構一進一退の攻防となり,ハントもいいところまで攻めたのですが,2Rの終盤,グランドで削られたこともあり,最後は残念な結果でした。

 ということで,これで,ケイン・ベラスケスとジュニオール・ドス・サントスの試合が早々に組まれそうですね。ケイン・ベラスケスにしても,唯一のKO負けがジュニオールですから,この前ジュニオールに勝ったと言っても,KOで退け返り討ちにしたいところです。

 いやあ日本の格闘技もこれくらい盛り上がって欲しいなあ。
 ただ,昨日一昨日の大相撲は,久々面白かったですよ。あとは,ヒョードル並のナチュナルファイターの隠岐の海の覚醒を待って,稀勢の里(13日目は北の湖理事長のようでしたね。)と切磋琢磨して欲しいところです。
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1 ネットでは色んな意味で話題になっていたユーチューブの動画のです。まずは,その動画の内容が,次に,それがユーチューブから削除されたことが,です。これはj-castニュースですが,メジャーなところではこの話配信していないのですね~変なの。
 
 私も両方に興味があり,ちょうどいいネタということで,取り上げました。
 
 動画の内容は,中山議員が衆議院の予算委員会の質問で,日銀等の話に始まり,最後に歴史の話をすると言って,旧植民地の経営状況や所謂従軍慰安婦などの歴史問題に関して,それを報道した朝日新聞の記事に何か変なところがありまっせ~とか,昔の朝日新聞にはこういう記事が載ってまっせ~とか知る人にはよく知られた話をしただけのものです。
 
 ところが,それ(NHKの放送の録画)が,ユーチューブにアップされた所,すぐに削除されたということで,また話題となったわけです。
 
2 まずは著作権の話から行きましょうか。この上記j-castニュースはちょっと違うなあと思います(上野先生のコメントも含めて)。まあ上野先生が間違えるとは思いませんが,何なんでしょうね。
 正確には,著作隣接権の問題です。むー著作隣接権って何じゃ?と思うかもしれません。その言葉は,一般にはそんな馴染みはないかもしれませんが,芸能人が印税と呼んでいるものはこれに由来する,実は馴染みのあるものです。これは実演家の権利ってやつですね。
 著作隣接権には,この他,レコード製作者の権利(レコード会社の所謂原盤権ってやつです。),放送事業者の権利(今回問題となったのは,これ!98〜100条),有線放送事業者の権利とあります。
 
 なんでこんな権利があるかというと,創作者ではないのだけど,著作物の伝達や流通に一定程度寄与する者を守れば,一層著作物が流行るよね〜♪ということで認められたものです。
 
 ということで,著作権ではないのです。
 
 ですので,ある意味不思議なことが起こります。例えば,今回問題となっている放送事業者の権利については,その放送の中身は問われません。つまり,放送自体が著作物でなくてもいいのです!どういうこと〜?と思いますよね。
 
 では,放送局の放送しているものを分析してみましょう。①まず,その放送局に著作権のある著作物です。今やっている連ドラ「純と愛」(もう佳境ですね。),大河ドラマ「八重の桜」などが代表です。②次に,その放送局に著作権のない著作物です。ロードショーの映画の放送が典型ですね。他局の再放送ドラマやアニメもこの範疇でしょう。最後が,③著作物ではないため,誰の著作権もないものです。例えば,スポーツの中継です。え,スポーツ中継って何の著作権もないの?って思うでしょうが,そうですよ。だって,思想等の表現じゃないじゃないですか。
 なので,WBCの模様を東京ドームの自席でストリーム中継しても著作権違反なんかなりません。ただ,主催者との契約違反の可能性はありますけどね。だけど,まさに,この③のために,著作隣接権っていうのが設けられたわけです(色々費用を出して中継の機材を置くわ,放映権料を払うわしたのに,それが著作物じゃないとして,コピーし放題ばらまかれ放題だと,ちょっと可哀想)。
 
 今回の中山議員の質問は,上記③ではなく,②に該当しそうですね。質問は,中山議員の思想などを創作的に表現したものだからです。演説みたいなことを考えるとわかりやすいですよね。ですので,今回の動画の中身の著作権者は,中山議員であり,少なくともNHKじゃありません。
 でも,上記のとおり,放送事業者たるNHKは放送事業者の著作隣接権として,複製権(98条),送信可能化権(99条の2)を持っているので,これに基づいて,著作隣接権違反だとして,ユーチューブに削除を請求し,ユーチューブはこれに従ったというわけですね。
 
 実は結構複雑な話なのです。放送局が原告となり,零細中小のTV番組転送業者をいじめた事例が沢山ありましたよね。まねきTV事件とかロクラク事件とか,です。おかげさまで根絶やしになってしまいましたが,あのときも,著作権とともに,著作隣接権での請求も行っているのです。嫌やねえ,本当。
 
 まあでも今回の削除は適法な権利に則りやっているだけなので,致し方ないところだと思います。しかしながら,上記の報道によると,著作権者の中山議員は別に動画を削除する必要はないと思っているのですね(ついには自分のところでアップまでしたようです。中身に興味の有る方はこちらを。)。つまり,媒体と創作者の利益が相反しているのです。
 
 ここまで書くと何かピンと来ませんかね?近時,出版社が,独自の隣接権をクレクレと喧しいです。他方,漫画家や作家の方は,別に要らないし〜♪という感じのようです。
 実際に出版社の隣接権が実現すると,今回の中山議員のような事がアチコチで起きるでしょうね。勿論,出版社に言わせると,レイアウト等に結構汗かいているんだから,他社に持っていかれたり,自身でやられたりすると,それが水の泡だとなるのでしょうが,そんなのは契約で何とかすりゃあいいじゃんということも言えます。
 私は隣接権反対ですね。著作権も特許権もそうですが,基本自由にやっていいのです。やりたいことをやり,言いたいことを言うのが基本です。でも例外的にできないこともある,その一例が著作権や特許権で守られたものです。しかーし,これらは例外なんですよ!弁理士とかこの発想が逆だから面倒臭いんだよねえ。ということは,例外は小さければ小さいほどよいのです。
 
3 で,ネトウヨ弁護士としては,削除された中身にも言及しないといけないでしょう。
 
 従軍慰安婦問題というのは,そんなに古くから問題となったわけではありません。あるときにボッと燃え上がったのです。
 それが,中山議員が指摘した平成4年頃からの一連の朝日新聞の記事などです。いや,私も弁護士のはしくれですから,朝日新聞が当時伝えたかったようなことが本当だとしたら大変なことだと思いました(当時は弁護士じゃ無いけれど〜。それに最近は強制性が問題じゃないとか言い出しておりますけどね。)。

 ところが,従軍慰安婦問題の元ネタは,実はまったく信憑性のない供述に過ぎず(弁護士ならわかりますよね。),後で,作話師と呼ばれた人たちの言わば捏造だったということが明らかになりました。その上,今般,中山議員の指摘した朝日新聞の記事が典型なのですが,強制性とは全く関係ない書面(悪徳人買いに注意とか,性病に気をつけようとかの内容に過ぎず,そんなこと言ったら,東京都がエイズに気をつけようと言ったら,吉原のお姉ちゃん達も東京都の強制でやらされているのか,くらいのとんでもない話です。)をこれぞとばかりに大きく取り上げたり,検証を経ない言ったもん勝ちの供述をそのまま垂れ流すなどの破廉恥さだったのです。

 そりゃあ,売春なんて好き好んでやる人なんていますかいな。
 今でもそうだし,昔ならもっとそうです。なので,聞かれりゃ,実の親に売られたなんて言えないし,悪い日本の軍人が来たんだよね,そうだよね,辛かったよね,よしよしとなりますわな。
 
 まあ私は,いつもここで言ってますが,正義とか真実とかそういうのには別に興味はありません(興味があるのは金と女だけ~)。朝日とか日経とかスノッブでインテリぶってはおりますが,内実は東スポと同じレベルです。いや別に責めているわけじゃないですよ。つーか東スポを貶してるわけでもありません。東スポ大好きですもん。
 だって,新聞なんて所詮エンターテイメントなんだから,多少面白可笑しく,針小棒大に書いたっていいじゃないですか〜。UFOでも村山セックス電話でも,官邸に宇宙人でも,iPSで世界初でも,ついに発見最初の従軍慰安婦?!でもいいじゃないですか〜。面白いもん,売れたもんの勝ちですよ。
 
 まあでも世の中にはプロレスが真剣勝負だと思ってしまう,純粋くんというか野暮天がいるのですね。従軍慰安婦の問題もまさにそういうことです。
 某国では,像を建てたり,ロビー活動したり,何かの度に歴史を直視せよとか言ってみたりなどと大変なことですが,何ちゅうか,第二回IWGP決勝戦,蔵前国技館で暴動〜みたいなもんですね〜。

 とは言いつつもあまりにマジなので,朝日新聞も,今更,スミマセン〜これプロレスなんで〜とは言えないのでしょう。バツが悪いのはわかりますが,遅くなればなるほど言い出しづらくなりますので,早い所言っちまいなよってところですね。あ,上記の中山議員質問の最後には,朝日新聞にも来てもらおうかなあという話も出てましたので,是非国会で色んな話をして欲しいですね,ムフフ。
1 本件は,被告会社(株式会社てらぺいあ)が出版する別紙書籍目録記載1の書籍(本冊,「基幹物理学―こつこつと学ぶ人のためのテキスト」)及びその分冊である同目録記載2及び3の各書籍(分冊Ⅰ:「基幹物理学 分冊Ⅰ力学-こつこつと学ぶ人のためのテキスト-」及び分冊Ⅱ:「基幹物理学 分冊Ⅱ熱学・数学の復習-こつこつと学ぶ人のためのテキスト-」)に関して,
(1) 亡W(京大の名誉教授で核物理学者の故星崎憲夫先生です。)の相続人である原告X1,原告X3及び原告X2(原告X′)並びに原告X4(町田茂先生)が,本件著作物(本冊の本文部分)が亡W及び原告X4の共同著作物又は亡Wの原稿を原著作物とする原告X4の二次的著作物であるにもかかわらず,被告らが著作者名を被告Y3と表示して分冊Ⅰを出版したことが,亡W及び原告X4の氏名表示権を侵害し,これを理由に本件著作物に係る出版契約を解除したなどと主張して,
① 原告らが被告会社に対して,原告らの著作権に基づき(分冊Ⅰについては,予備的に,原告X1による亡Wの死後における人格的利益保護措置請求権に基づく請求及び原告X4による氏名表示権に基づく請求として),本件各書籍の出版等の差止め並びに本件各書籍及びその印刷用原版の廃棄を求めるとともに,被告会社の本件著作物に係る出版権原の不存在の確認を求め,
② 原告X1が亡Wの死後における人格的利益保護措置請求権に基づき,原告X4が氏名表示権に基づき,それぞれ被告らに対して,分冊Ⅰの著作者名表示に係る謝罪広告の掲載を求め,
③ 原告らが被告らに対して,分冊Ⅰの著作者名表示に係る共同不法行為に基づく慰謝料及びこれらに関連する弁護士費用並びにこれに対する平成22年11月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求め,
(2) 原告らが被告会社に対し,本件各書籍の出版契約に基づく印税及びこれに対する平成22年11月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの商事法定利率による遅延損害金の支払を求め,
(3) 原告X1が被告会社に対し,被告会社との間で締結した出版助成金提供契約が錯誤により無効であると主張して,不当利得返還請求権に基づき,提供した出版助成金の返還及びこれに対する平成20年7月1日(出版助成金の最後の提供日の翌日)から支払済みまでの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案です。

 これに対して,東京地裁民事40部(東海林さんの合議体です。)は,原告らの請求を一部認めました。

 ニュースにもなったので,ご存知かもしれませんが,著作者としての表示が問題となった事件です。

2 問題点
 著作者としての表示ですから,著作者人格権の氏名表示権が問題となることは明白ですね。あ,こんなことわざわざ説明する必要もないかもしれませんが,著作権法には,所謂著作権の他に著作者人格権と著作隣接権の規定もあります。

 氏名表示権の19条を見ましょう。
(氏名表示権)
第十九条  著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
 3項も結構重要です。
3  著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。
です。

 良い本の著作者が亡くなった後,その本の改訂版が,何故か出版されることがあります。法曹に一番有名なものと言えば,芦部先生の「憲法」でしょうね。今アマゾンで見たら,2011年の改訂で第5版になっております。芦部先生亡き後は,高橋和之先生が補訂を担当しております。しかし,著作者と大きく載っているのは,芦部先生ですね。
 他方,知財関係者に一番有名なものは,吉藤先生の「特許法概説」でしょうね。1998年の13版以来改訂されておりませんが,ご存知のとおり,吉藤先生が亡くなられたのは,そのちょっと前です。ですので,しばらくは,熊谷健一先生が補訂を担当されておりましたね。しかし,やはり,著作者と大きく載っているのは,吉藤先生ですね。

 ということは,何かもう結論が出たような話ではありますが,一応見てみましょうか。

3 判旨
「前記第2,2(2)イ及び同(9)によれば,被告Y3は,本冊の第Ⅰ部・第1章「力学」の部分を分冊とする趣旨で,その記述をできるだけ尊重しつつ,そこに若干の修正を加えて,分冊Ⅰの原稿を執筆したものであり,分冊Ⅰには,上記部分に加えて,「付録A」として,本冊の「付録A 数学の復習」の一部とほぼ同じ内容が含まれており,それ以外には,「付録B」として,被告Y3が新たに作成した章末練習問題の解答が付されていることが認められる。これらの事実に,証拠(略)及び弁論の全趣旨を併せ考慮すれば,分冊Ⅰは,本件著作物の該当部分を複製ないし翻案したものであることは明らかというべきである。
 そして,本件著作物のうち,分冊Ⅰに相当する部分については,少なくとも亡Wの著作権が存することは,当事者間に争いがなく,かつ,本件著作物は,本冊において,その著作者として亡W及び原告X4の氏名が表示されていたのであるから,分冊Ⅰにも,本来,少なくとも亡Wの氏名がその著作者名として表示されなければならなかったことになる(法19条1項)。しかし,前記第2,2(2)イのとおり,分冊Ⅰの表紙及び奥付には,著作者名として被告Y3の氏名が記載されており,亡Wの氏名は記載されていない
 そうすると,かかる分冊Ⅰの著作者名表示は,亡Wの氏名表示権の侵害となるべきものであったということができる。」

「この点に関し被告らは,分冊Ⅰの前付に,「底本」として,本冊が表示され,そこに「著者 W・X4」との記載がされており,また,被告Y3の「まえき」,原告X4の「『基幹物理学』序文」及び被告Y2の「『基幹物理学』はじめに」に書誌が掲載されていることから,分冊Ⅰが本冊を改訂した著作物であることが明らかにされているとして,法19条3項により,原著作者である亡Wの名を省略することができると主張する。
 しかし,書籍の著作者名は,その表紙及び奥付等に「著者」又は「著作者」などとして記載する方法によって表示されるのが一般的であるところ,法14条が,著作物に著作者名として通常の方法により表示されている者を当該著作物の著作者と推定すると規定していることにも鑑みると,通常,読者は,そこに表示された者を当該書籍の著作者として認識するものと解される。そうすると,分冊Ⅰについても,その読者は,その著作者名表示から,著作者が被告Y3であると理解するものと解される。
 この点,確かに,分冊Ⅰの前付の底本の表示や「まえがき」等の文章を参照すれば,分冊Ⅰが,本冊を分冊化したものであり,本冊を一部改訂したにすぎないものであることは容易に認識し得るが,この前付は,分冊Ⅰの表紙をめくった書籍の内側に記載されているにすぎず,分冊Ⅰを外側から観察しただけでは,それを読み取ることができない。また,本件において,分冊Ⅰの表紙や奥付に亡Wの名を著作者名として表示することが困難又は不適当であったと解すべき事情は認められない。そうすると,上記のように,前付の記載によって本件著作物の著作者が亡Wであり,分冊Ⅰがそれを分冊化したものであることが認識できるとしても,それを理由に,分冊Ⅰの表紙及び奥付に,亡Wの氏名が著作者名として表示されず,被告Y3が単独著作者として表示されることによって,亡Wがその「創作者であることを主張する利益を害するおそれがない」(法19条3項)と認めることはできない。」

4 検討
 分冊に星崎先生の表示はあるにはあったけど,非常に見難い場所にあっただけなのですね。やっぱり,元になった本の著作者なんだから,きちんとそれなりの礼儀を示す必要がある,というわけです。何つっても,著作者人格権を英語で言うと,moral right in copyright lawですからね。

 さてさて,今日は3.11。先週の金土日と,もはや初夏の暖かさ,というか暑さだったのですが,今日はまた冬に逆戻りです。と言っても大したことはありませんでしたけどね。明日の日中はまた暖かくなるらしいです。早く糞暑くなってほしいなあと思いますね。

1 本件は,別紙目録1ないし12記載の漫画各話(本件漫画各話)の作画(本件各作画)を制作した原告が,本件漫画各話を掲載したコミックの初版,さらには増刷を発行した被告に対し,被告が上記コミックを増刷して発行した行為が本件各作画について原告が保有する著作権(複製権)の侵害行為に当たる旨主張して,被告に対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。

 これに対して,東京地裁民事46部(大鷹さんの合議体ですね。)は,原告の請求を棄却しました。

 昨日に続いて判決の紹介ですが,昨日以上に柔らかい話です。通常知財というと,事実関係が複雑ですが,昨日は事実関係ではなく法律関係が問題となったものです。そして,今日は,契約の解釈が問題となったものです。

2 問題点
 出版社のお客さんも居たりするので,あまり大っぴらなことは言えないのですが,出版業界では,契約書を作らず,作家に執筆を依頼するということは結構多いようですね。この辺,「エンタテインメント契約法」内藤篤著(商事法務)にも詳しいです(今見たら,第3版になっていた~,ガーン。)。

 これはIT業界でも多いのですが,やはり,動くお金が大きくならないと,いちいち契約書を巻くのが面倒というのがあるのでしょうね。この件もそうですが,数十万円単位で契約書を作るというのは,どの業界でも,本当例外ですね。でも,契約書は作った方がいいですよ,ただし,きちんとしたものをです。

 そうしないと,何を依頼され,何を譲り渡したかがわかりません。つまり,IT系コンテンツでも,こういう従来系のコンテンツでも,お金と引き換えに譲り渡すのは何か?ということです。

 ユーザーや出版社は,著作権そのものを買った,としたいわけです。そりゃそうです。大工に家を建ててもらって金まで払ったところで,これを俺の家だからな,俺が住むぜ~なんて大工に言われないわけです。頼んだものの権利は全部こっちのものじゃないと,どうしてそれに金払うかよ,ということになります。

 他方,ベンダーや作者は,いやいや使わせてやる権利のみ売っただけ,全部の権利だったら,そんな端金で済むわけないだろ,それに,こっちが複製したら,著作権法違反になるっていうのかい,一昨日きやがれ,ということになります。

 ですので,契約書が重要になるのですが,ただ,契約時に想定しなかったことが起こったりすると厄介です。その事例が,HEAT WAVE事件だったりします。これはご存知のとおり,契約時に思いもかけない支分権がそのうちに流行り始めたため,その権利の扱いを巡って紛争になったものです。

 他方,今回は,少なくとも詳細な契約書はないようです。そのため,原稿一枚当り幾ら払うという条件での合意があっただけで,増刷時の条件づめなどはやっていなかったようです。

 ところが,被告の方が,増刷してしまった。他方,原告の漫画家はいやいや,増刷まで認めていないよ,その分のお代はいただかないといかんでしょ,となったわけですね。

3 判旨
「そこで検討するに,前記(2)ア及びイの認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。
 そして,前記(2)アないしウの認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,①本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,②被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったことが認められる。
 上記①及び②の事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。」

4 検討
 判決は,返品もありうるが,他方売れ行きによって増刷もありうること,そういうようなことについて,原告は無頓着だった等の判断から,今回の利用許諾については,増刷分まで及び,複製権の侵害には当たらないとしたのですね。

 ただ,これは事実認定の問題ですので,違う裁判官では,違う結論もあり得るところです。個人的には,この結論で良いとは思いますけどね。

 ともかくも,契約書を巻けば,すべてのトラブルが防げるというわけではありませんが,少なくとも今回のトラブルは避けられたのではないかと思います。HEAT WAVE事件は契約時には思いもよらないことが問題になったのに比べて,漫画の増刷をどうするかなんて,そりゃ思い当たるのが普通ですからね。と,若干我仕事の宣伝もやっておきます。

 ところで,今日は成人の日並の大雪の予報ですが,少なくとも城南地区には何の積雪もありませんでした。朝方はチェーンを巻いた宅配便のトラックを見ましたが,骨折り損のくたびれ儲けってやつですかね。

 ま,気象予報士なんちゅうのが商売になっているくらいですから,天気予報ができるものだと勘違いしている人は多いと思いますが,そんなの無理ですよ。

 例えば,精密なサイコロを一回振って,その出た目を予想できますかね~。できないでしょ。いや,どの目も1/6の確率だと言われるかもしれませんが,予想しろと言っているのですよ。誰が確率のことを聞きましたか。
 つまり,ここで,現に振るサイコロの目,単純なそのことすら,人には予想できないのです。予見できるのは,大体1/6の確率でどの目も出るようだ,という程度です。その程度も重要なことには違いありませんが,そのことと,予想できるということには雲泥の差があるわけです。

 逆に言えば,このようなことに,詐欺師の漬け込む隙があると言えなくもありませんね,オホホ。
1 首記は,明日1月31日(木)から,来週の2月6日(水)まで,大分のトキハ本店7F画廊で開かれる日本画の個展です。
 
 大分のトキハ本店というと,恐らく,現在大分に住んでいる人,また過去大分に住んだことのある人で知らない人はないと思います。もう,ひまわりの包装紙を見れば,泣く子も黙るという,唯一無二のトップブランドのデパートですね。

 折からの不況もあり,お隣の大都市福岡の老舗デパートである岩田屋とか井筒屋とかが軒並み総崩れになったのに比べ,トキハは相変わらずのようですね。最近は,パルコも撤退したようですが,全く変わりありません。

 で,トキハの話はこれくらいでいいですかね。

 本題に移りますか~。 ま,私と苗字が同じということで,これは妹ですね。

2 現在,朝の連続テレビ小説では,純と愛をやっております。前回の梅ちゃん先生は,大事になったといっても,その週のうちに解決され,なんだ大したことなかったアハハ,という感じでしたが,本作は違いますね。

 大事になったと言えば,本当に大事で,解決されないまま,物事が進んで行きます。例えば,純の勤めていたホテルが外資に買収されそうになり,解決を模索しますが,結局買収されます。また,純の実家が売り飛ばされそうになり,やはり解決を模索しますが,買収され,実家のホテルも解体されます。

 いやあ朝っぱらからこんな辛気臭いの見たくねえやと思っている朝ドラファンも多いのではないでしょうかね。でも,私は結構好きです。

 相変わらず前置きが長く,何故こんなドラマを紹介しているかというと,純の家族構成です。純のお兄さん役は速水もこみちなのですが,このお兄さん,女にだらしなく,ピンチになるとすぐに逃げようとするくらい頼りなく,情けないのですね。他方,純は妹ですが,しっかりはっきりしています。

 この純ともこみちのやりとりを見ていると,うちそっくりだなあと思って見ております。
 勿論,私は,もこみち程格好良くはありませんが,女にだらしなく,ピンチになったら即逃げる所なんか,まさにあんな感じ~♪てなところです。別に,自慢にはなりませんが。。

3 ということで,私と違い,妹は,大学や大学院を出てから,この道一本で,種々の賞や何やらかんやらを頂いており,しっかりきちんとやっております。

 今までも個展は何回も開いたようですが,地元の大分でやるのは初めてとのことです。やはり,東京や,今の教鞭をとっている名古屋とは,マーケットの大きさが違いますからね。

 ですので,トキハで1週間ほどやっていますから,お時間がある方は見に行って,ついでに絵もお買い求め頂くと,妹もトキハも大喜びなので,よろしくお願いします。
1 以前このブログで,「特許権など知的財産権侵害リスクに対応する保険を中小企業向けに販売」する保険のことを書きました。これは,他者の知財権(特許権,著作権など)を侵害した場合のリスクを保険でヘッジしようというものです。

 ただ,当時上限が1000万円までということで,今後の成り行きを見守りましょうという結論にしました。というのは,ちょっと上限が低過ぎると思ったからです。ちなみに,保険会社は,AIUでしたね。

 今回は,上限が10億円です。記事によると,スマートフォン向けアプリに限るような趣旨が見受けられますので,AIUに比べれば,その点に限定があるのでしょうが,日本で10億円というと,これを越える訴訟はほぼないと言っていいと思いますので,額は十分だと思います。ちなみに,保険会社は,東京海上日動火災保険です。

2 さて,今回話題になったスマートフォン向けアプリに限らず,今のいろんなソフトウェアって,その名義人が直接作成している場合って,ほぼないと思います。

 私の古巣のソニーでも,組み込み系のソフトについては,殆ど外注,しかも海外(その方が安いようですよ。)に発注しているようですから,それ相応の企業でないところでは推して知るべし,というところではないでしょうか。

 こういう外注すると何が問題かって,そりゃ動かないときは問題ですが,もっと問題なのは,著作権等の知財権の問題ですね。いやこんなこと書くと,そうそう誰しも自分が得意なことが問題だって言いたがるんだよね~,司法書士はいつも登記が問題だって言い,税理士は税務が問題だって言い,弁理士は御社の知財が問題だって言うんだよね~,まだ正直に仕事が欲しいって言った方が可愛げがあるっちゅうのに,と思う人も多いと思います~♪

 私もその点は否定しません。でも,アプリの外注で問題になるって言う時の問題って,アプリそのものがプログラムという無体なものなので,占有できず,知財権しか問題にしようがなく,あとは作成者の労働問題くらいしか問題にはならないのも事実だと思います~。

 つまりは,内部者ならわかると思いますが,SEをやっていると,結局サスライの人生ではないですが,中小零細を渡り歩くということになりがちです。また,転職も頻繁です。そうすると,この今コーディング等しているモジュールは,自分に著作権があるのか,この今勤めている会社にあるのか,それとも,前の会社だったか,いやオープンソースか,それとも,それ以外か,というのをまあどれだけ気にしているか,ということになるわけです。

 昨今,結構零細同士でもある程度きちんとした契約書を結ぶことも多くはなっていますが,じゃあ,違反したとき,つまりは,外注したモジュール等をぶっこんだソフトを客先に納入した後で,これって似ている,またはホニャララってクレームが客先から来た場合に,どれほど外注先を締め上げられますかね~。

 外注先としたら,いやそのコーディングした奴は,もう辞めていないんだよね~,となるのが落ちで,それが気に入らなきゃ訴訟するしかないのでしょうけど,自分と同じその日銭暮らしの同業者を訴えたところで,どれ程回収できるかは疑問ですわな。そんな話だとすると,弁護士に相談したとしても,回収できない,又は弁護士費用が出ない,でチャンチャンという結末です。

 ですので,そういう悲惨な話が少しでも上向き,私のような貧乏弁護士にも少しは実入りのある話になればいいなあということで取り上げたわけです。

 どうですか,契約書作成でのインデムの攻防なんていう不毛な闘いをするよりも,よっぽど建設的な話だと思いませんか。今後は,インデムより,付保対応が,ソフトウェア制作契約書のデフォー条項になるかもしれませんね。
1 概要
 本件は,第一審原告であるグリー㈱,が,第一審被告である㈱ディー・エヌ・エーらに対し,被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト 「釣りゲータウン2」(被告作品)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(原告作品)と,魚を引き 寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択 及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権 (同一性保持権)を侵害する,などと主張して,著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消などと,不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の控訴審です。

 第一審では,「上記(2)ア(エ)のような具体的表現を採用したものであり,特に,水中に三重の同心円を大きく描き,釣り針に掛かった魚を黒い魚影として水中全体 を動き回らせ,魚を引き寄せるタイミングを,魚影が同心円の所定の位置に来たときに引き寄せやすくすることによって表した点は,原告作品以前に配信された 他の釣りゲームには全くみられなかったものであり」と,被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係るグリーの著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとして,グリーの勝訴でした。

 ところが,本控訴審では,知財高裁4部(高部さんの合議体です。)は,「第1審原告の請求はいずれも理由がなく,これを全部棄却すべきものである。これを一部認容した原判決は一部失当であり,第1審被告らの控訴は理由があるから,原判決中第1審被告ら敗訴部分を取り消した上,同部分に係る第1審原告の請求を棄却することとし,また,第1審原告の控訴及び当審における請求の拡張部分は理由がないから,これを棄却することとして」と,要するに,第一審原告グリーの逆転全面敗訴としたわけです。

 判決は先週でしたので,報道も先週でした。報道から見たい方は,こちらなどが残っています。出張と夏休みがありましたので,若干遅れてこの時期になってしまいました。でもポイントはわかりますね。
 一審のときにもこのブログで書きましたが,どうやらそのとおりになった模様です。

2 問題点
 問題点は,基本1つだと思います。デッドコピーじゃない,翻案の場合,具体的に翻案権侵害となるのはどういう場合?ってやつです。

 そして,その規範は,江差追分事件(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)で,「【要旨1】 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),【要旨2】既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。」です。

 ただし,具体的にどうか,というのは非常に難しいと思います。この江差追分事件でも原審の侵害認定を取り消して,非侵害としております。

 特に本件のような,ゲーム(しかも容量の小さい携帯電話用ゲーム)の画面で,表現上の本質的な特徴を直接感得できるような場合って非常に限られると思います。ですので,一審が出たとき,私は,上級審でひっくり返される可能性は大あり,と書きましたが,それは変わっておりません。
 実質的にもこの程度で著作権侵害となるなら,創作に冷や水を浴びせることにもなりますしね。
 しかも,著作権に関しては,一家言も二家言も持っている高部さんの合議体に係属したからには,うーん,結果も予想できますね。

3 判旨
「イ しかしながら,そもそも,釣りゲームにおいて,まず,水中のみを描くことや,水中の画像に魚影,釣り糸及び岩陰を描くこと,水中の画像の配色が全体的に青色であることは,前記(2)ウのとおり,他の釣りゲームにも存在するものである上,実際の水中の影像と比較しても,ありふれた表現といわざるを得ない。次に,水中を真横から水平方向に描き,魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは,原告作品の特徴の1つでもあるが,このような手法で水中の様子を描くこと自体は,アイデアというべきものである。
 また,三重の同心円を採用することは,従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが,弓道,射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって,釣りゲームに同心円を採用すること自体は,アイデアの範疇に属するものである。そして,同心円の態様は,いずれも画面のほぼ中央に描かれ,中心からほぼ等間隔の三重の同心円であるという点においては,共通するものの,両者の画面における水中の影像が占める部分が,原告作品では全体の約5分の3にすぎない横長の長方形で,そのために同心円が上下両端にややはみ出して接しており,大きさ等も変化がないのに対し,被告作品においては,水中の影像が画面全体のほぼ全部を占める略正方形で,大きさが変化する同心円が最大になった場合であっても両端に接することはなく,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,配色及び中央の円の部分の画像が変化するといった具体的表現において,相違する。
しかも,原告作品における同心円の配色が,最も外側のドーナツ形状部分及び中心の円の部分には,水中を表現する青色よりも薄い色を用い,上記ドーナツ形状部分と中心の円部分の間の部分には,背景の水中画面がそのまま表示されているために,同心円が強調されているものではないのに対し,被告作品においては,放射状に仕切られた11個のパネルの,中心の円を除いた部分に,緑色と紫色が配色され,同心円の存在が強調されている点,同心円のパネルの配色部分の数及び場所も,魚の引き寄せ画面ごとに異なり,同一画面内でも変化する点,また,同心円の中心の円の部分は,コインが回転するような動きをし,緑色無地,銀色の背景に金色の釣り針,鮮やかな緑の背景に黄色の星マーク,金色の背景に銀色の銛,黒色の背景に赤字の×印の5種類に変化する点等において,相違する。そのため,原告作品及び被告作品ともに,「三重の同心円」が表示されるといっても,具体的表現が異なることから,これに接する者の印象は必ずしも同一のものとはいえない。
 さらに,黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても,釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き,釣り糸も描いているゲームは,前記(2)ウのとおり,従前から存在していたものであり,ありふれた表現というべきである。しかも,その具体的表現も,原告作品の魚影は魚を側面からみたものであるのに対し,被告作品の魚影は前面からみたものである点等において,異なる。
ウ 以上のとおり,抽象的にいえば,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは,水面より上の様子が画面から捨象され,水中のみが真横から水平方向に描かれている点,水中の画像には,画面のほぼ中央に,中心からほぼ等間隔である三重の同心円と,黒色の魚影及び釣り糸が描かれ,水中の画像の背景は,水の色を含め全体的に青色で,下方に岩陰が描かれている点,釣り針にかかった魚影は,水中全体を動き回るが,背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの,上記共通する部分は,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分にすぎず,また,その具体的表現においても異なるものである。
 そして,原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面の全体について,同心円が表示された以降の画面をみても,被告作品においては,まず,水中が描かれる部分が,画面下の細い部分を除くほぼ全体を占める略正方形であって,横長の長方形である原告作品の水中が描かれた部分とは輪郭が異なり,そのため,同心円が占める大きさや位置関係が異なる。また,被告作品においては,同心円が両端に接することはない上,魚影が動き回っている間の同心円の大きさ,パネルの配色及び中心の円の部分の図柄が変化するため,同心円が画面の上下端に接して大きさ等が変わることもない原告作品のものとは異なる。さらに,被告作品において,引き寄せメーターの位置及び態様,魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係や,中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと,円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され,その後の表示も異なってくるなどの点において,原告作品と相違するものである。その他,後記エ(カ)のとおり,同心円と魚影の位置関係に応じて決定キーを押した際の具体的表現においても相違する。なお,被告作品においては,同心円が表示される前に,水中の画面を魚影が移動する場面が存在する。
 以上のような原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑みると,被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が,その全体から受ける印象を異にし,原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはできない。」

4 検討
 共通する部分はあるけれど,それは,ありふれた表現やアイデアに過ぎず,細々見ていくと違うところは多く,印象は違うよね~ってところじゃないでしょうか。

 まあ高部さんが,自身の著作(「実務詳説 著作権訴訟」の第4章は,ほぼこの論点ばかりです。恐らく,得意の論点の事件の配点があり,キャー嬉しい,これでまた論文が書ける~うって所じゃないでしょうか。)や論文で書いている,まさにそのとおりの判決ですね。
 ですので,原告の代理人としては,知財高裁4部係属?!もしかして・・と思ったと思いますね。そう思わなきゃ弁護過誤的とも言える程のものです。

 結論としても,理由としても,このとおりでよろしいのではないでしょうか。久々,特段文句のつけようのない判決でしたね。
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